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66歳オバ記者、「元気以上の財産はない」と実感した“乗り鉄”旅 「湧き水のある遠野の神社」から「大谷翔平の母校」まで

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久しぶりに大好きな乗り鉄旅へ。向かった先は…
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ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子(66歳)。昨年10月、「卵巣がんの疑い」で手術を経験。その後、境界悪性腫瘍と診断された。体力の衰えを実感する日々だが、最近「元気以上の財産はない」と実感した出来事があったという。

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空や緑を楽しむ余裕ができてきた

ときどき国会見学の案内のアルバイトをしている私だけど、これから記念撮影をする小学生に「写真隊列に並んでくださ~い。マスクを取ってね~」と声をかけながら、ふと振り返ったら青と緑が目に飛び込んできたの。

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東京じゃないみたいな景色
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ここが東京のど真ん中で、日本の政治の中心地なの?と思ったらついスマホのカメラで撮っていたの。すぐそばに皇居の森があるけれど、国会議事堂の前庭も樹木の種類がかなり豊富。

つい先日、それをインスタにアップしたら、「緑と空が美しいですね。野原さんと全く同時期に、卵巣境界悪性の手術をしました。記事にいつも励まされていましたよ。やっと体力もほぼ前に戻りました。お互いにがんばりましょう!」というメッセージを寄せてくださった人がいたの。Mさんという女性だ。

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昨年、卵巣がんの疑いで手術を受けたオバ記者
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「緑と空が美しい」という何気ないフレーズに、目が釘付けになった私。去年の今頃はお腹の異様なふくらみが気になって、空を見上げたり緑を愛でたりするような気持ちになれなかったなぁとあらためて思ったのよ。

卵巣境界悪性は手術前につく病名ではなくて、最終的に卵巣を摘出して腫瘍を顕微鏡で見て初めて判明するやっかいな病気だ。私もそうだけどMさんもずい分、気をもんだに違いないのよね。いつかお会いすることがあったらハグしてお互いの無事を称えたいな。

読者からの“励まし”に感謝

「手術成功、退院おめでとうございます。別記事でずっと読ませていただいていたので旅行が出来るまで快復されて、ファンのひとりとして本当によかったと思っています! これからも楽しい投稿を待っています」

これは昨年の暮れにTさんという女性が寄せてくれたメッセ―ジだ。長崎旅行をしたことをFacebookの『ひとり旅を楽しむ』というプライベートグループに投稿したのを読んでくれたみたい。別記事とはまぎれもなくこの連載のことよね。

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読者からのメッセージは心から嬉しい
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さらに先日、「大人の休日倶楽部パス」で岩手県遠野に行ったことを、『ひとり旅を楽しむ』に投稿したら、下記のメッセージをくれた人がいたの。

「以前も書きましたが広子さんのファンです(文章が大好き)。お元気で旅をされているようでよかった~」

私のような低空飛行のライターにこんなことを書いてくれるなんて、ありがたいなんて言葉じゃ言い足りないわよ。

「大人の休日倶楽部パス」で“乗り鉄”旅

実はMさんのいう通り、ここのところ私も身体の調子が前にもどってきているんだよね。その証のひとつが「大人の休日倶楽部パス」よ。ご存じかどうか、このパスは50歳以上で「大人の休日倶楽部」の会員になると年に3回購入できるんだけど、丸4日間、JR東日本の新幹線を含むすべての電車に乗り降り自由で1万5270円という”ど素晴らしい”ものなの。

50代半ばで会員になった乗り鉄の私は、”東京駅ー新青森駅”を日帰りした翌日に、新潟駅へ向かい、そこから日本海を北上して秋田駅へ。夜、帰京して翌日は山形県かみのやま温泉の共同浴場の二階でごろ寝、なんてことをしていたわけ。東北新幹線や上越新幹線を路面電車みたいに乗り降りできるのが楽しくて仕方がなかったの。

頻度が下がっていた乗り鉄旅だけど、急にスイッチが入って岩手県へ!
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それが手術をする数年前から、”東京駅―新青森駅”の日帰りがひどくくたびれるようになったのよ。行っても翌日は身体が起こせなくて自宅で寝ていたりしてね。それを「たまたま今回は疲れていたから」と自分に言い訳して深く考えなかったけれど、卵巣境界悪性の前兆だったのかもしれないね。

それが今回は、遠野市まで旅をしたの。刑務所で管理栄養士をしているK.Kさん(54歳)から、ある人の講演会が岩手県遠野市で開かれると聞いて、スイッチが入っちゃったんだわ。夕方、「よし、行こう」と決めて駅に急いで「大人の休日倶楽部パス」を買い、翌朝6時4分東京駅発のやまびこに乗って、10時過ぎには遠野着。講演会は午後からだからまだ時間に余裕がある。

心臓の不安を抱えながら湧き水のある場所へ

「レンタカーを借りたんでどこでもお連れしますよ」とK.Kさんに言われて、「じゃあ、湧き水の湧くところへ」とオーダーしたら「オッケ~」と軽く請け負って、すぐにスマホで調べてくれたの。

湧き水は現地に行かないと手に入らないし、お金では買えない。重いから持ち帰るのにも限度があるけれど、そのつもりでペットボトルとキャリーつきのリュックを用意している。多少の苦労をしても湧き水で炊くご飯の美味しさを思うと頑張りがいがあるんだわ。そんな話を彼女にしたら、連れていってくれたのが程洞稲荷という山の中の神社。

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ペットボトルを持って程洞稲荷神社に向かうオバ記者
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で、ここに来る途中には「熊出没注意」の立て看板が! それも怖いけれど、彼女は私が大手術をしたことも心房細動に高血圧という持病があることも知らない。スカートをひるがえして、山道をずんずんと登っていく。登れるのか、私。途中で心臓発作を起こして大迷惑をかけたりしないか、私。

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最後までたどり着けるか心配だった山道
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熊用心に空のペットボトルふたつをバンバン打ち付けながら、ゆっくりゆっくり休みながら登りながら、自分の身体が不安で仕方がない。とはいえ、乗りかかった船だ。チクショー、ひと回り年下の酉年女に負けてたまるかと奮起して足を前に進めたら、ちゃんと水汲み場にたどり着いた! その喜びも味のうちよね。山の水は手が切れるほど冷たくて、口に含むと清々しさでいっぱいになったっけ。

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無事湧水をゲット
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大谷翔平の母校へ行ってみた

目的の講演会が終わったのは午後4時過ぎ。「どうする? 私は花巻温泉に泊まるけど」とK.Kさんに聞かれ、いったんは「帰る」と言ったものの、「明日、大谷翔平選手の母校の花巻東高校に行ってみようと思うんだけど」と言われたら、もうダメ。

メジャーリーガーになった彼が高校の3年間、汗を流したグランドでは後輩たちが声をあげていてね。それだけでおばちゃんは大感激。いいものを見せてもらったと寿命が延びたような気がしたわよ。

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大谷翔平選手も練習してたグラウンドと一緒に記念撮影
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そこで勢いをつけたか、花巻温泉に1泊して帰るつもりがなぜか青森へ。そこで1泊して市場で新鮮な魚を買ったら、弟に食べさせたくなって茨城へ。そこでまたまた1泊して早朝やっと帰宅。着替えもそこそこに再び東京駅へ向かい、10時53分発の特急ひたちに乗っていたの。

さすがにここまで行き当たりばったりをしたら翌日は使い物にならなかったけれど、充実感、ハンパなくてね。夜はぐっすり朝まで一度も目を覚まさず眠れたわよ。

66歳。元気以上の財産はないね。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

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