健康・医療

夏は肩こりや腰痛になりやすい? 対策のカギは「股関節」、冷房の効かせすぎにも注意

肩こり
暑い時期の「肩こり、腰痛」。夏ならではの原因があった(Ph/photoAC)
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夏になると疲れやすい、体がだるい、肩がこる、腰が痛くなるなど、さまざまな体調不良が現れることがあります。それには、夏ならではの理由がありました。今回は「肩こり、腰痛」に焦点を当てて、その原因と対策を医学博士の高尾美穂さんに聞きました。

肩こりや腰痛は国民病

厚生労働省が実施している2019年国民生活基礎調査によると、健康状況についての自覚症状で「肩こり」は女性1位、男性2位。「腰痛」は女性2位、男性1位となっており、どちらも国民病ともいえる症状です。

腰痛
今や国民病になりつつある肩こりと腰痛(Ph/photoAC)
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「肩こりも腰痛も季節を問わず女性に多い悩みです。原因は人によってさまざまなのですが、夏にその自覚症状がある人は、冷房の効いた部屋にこもっている時間が長いのではないでしょうか」(高尾さん・以下同)

肩こりは文字通り肩がこり固まることで、痛みを生じたり、ひどくなると頭痛や吐き気を伴ったりします。

「肩のまわりの筋肉にはたくさんの血管が通っているのですが、体が冷えると血行が悪くなり、乳酸などの疲労物質が蓄積して、神経を刺激することで肩のこわばりや痛みなどの症状を引き起こします。

外は暑いからと室内で動かずに、猫背で何時間もスマートフォンを見ているとしたら最悪の状態です。頭の重さは成人で4~6kgほどあり、うつむくだけで首に頭の重さの数倍の負荷がかかります。小さな画面を長時間見ていると眼精疲労となり、こちらも肩こりの要因です。

スマホを見ている女性
長時間猫背の状態でスマホを見ていませんか?(Ph/photoAC)
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何日も動かないでいると筋力が落ち、肩こりや腰痛の原因になります。特に腰痛を防ぐには背骨を支える胴回りの筋肉量を増やすことが大切です」

体幹筋量が少ないほど腰痛が悪化

大阪市立大学の研究グループが2019年に発表した調査結果により、体幹筋量が少ないほど腰痛などが悪化することが明らかになりました。体幹は肩回りやお尻などを含めた胴体全体を指します。

筋肉量を増やしてしっかりと動かすことで、こりと決別

肩こりや腰痛は、体を動かしたり温めたりすることで、個人で対策できそうです。

「暑い夏でも日差しの強い時間帯を避けて、外に出てウォーキングなどをして体を動かすことがベストですが、室内でストレッチをするだけでも筋肉をほぐして血行を促すことができます。デスクワークなどで座っている時間が長い場合も、できれば1時間ほどで立ち上がって肩や首を回すと、1日に蓄積される筋肉の疲労が変わります。その際に窓から遠くの景色を眺めると、目の疲れも軽減できますよ」

ストレッチイメージ
デスクワーク中でも1時間に1回は立ち上がって軽くストレッチを(Ph/photoAC)
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股関節の可動域の維持を

一般的に、筋肉量は20代半ばにピークを迎え、加齢により減少していきます。40代以降は意識して筋肉を動かさなければさらに急激に減少してしまいます。

「筋力が落ちて肩関節がスムーズに動かなくなると痛みの原因となり、四十肩とよばれます。四十肩は肩回りの軟骨が減ったり、肩関節周囲の筋肉の動きが悪くなったりして、こりとなって痛みを感じることが原因です。腕の上げ下ろしなど、肩関節を使う動作が少ないと症状が起きやすくなります。医学的には肩関節周囲炎といって、40代に起これば四十肩、50代に起これば五十肩と呼ばれます。

肩が痛そうな女性
肩関節を使う動作が少ないと四十肩、五十肩のリスクが上がる(Ph/photoAC)
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ひどい肩こりは四十肩の症状のひとつ。四十肩を予防するためにも、肩関節の可動域の維持は大切です。同じ姿勢を続けているなと自覚した際には、肩回しをしてみましょう。意識していないと背中は丸まりがちなので、胸を広げるようにして肩を後ろに回す動きをするのがおすすめです」

股関節の動きが悪い人は腰痛になりやすい傾向にあるので、腰痛には股関節のストレッチが有効とのこと。ただし、肩こりも腰痛も痛みが強い場合は整形外科などで専門医に相談してください。

お風呂イメージ
冷房で冷えた体をお風呂でしっかり温めてあげよう(Ph/イメージマート)
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「そのほか、個人で簡単にできる対策としては、冷房の温度を下げすぎないこと。寒い環境ではからだの色々な部位に力が入りやすくなり、肩こりにもなりやすくなります。オフィスなどでエアコンの温度調整ができないときには、一枚羽織れるように上着を用意する。体を冷やしすぎたなと思ったら、シャワーで済ませずに湯船に浸かって体を芯まで温める。そんな工夫をするだけでも、体のこりや疲労が変わってきます」

◆教えてくれたのは:医学博士・高尾美穂さん

医学博士・高尾美穂さん
医学博士・高尾美穂さん
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愛知県出身。イーク表参道副院長。産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。ヨガ指導者としても女性の健康を支えている。著書に『更年期に効く 美女ヂカラ』(リベラル社)、『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社)など多数。https://www.mihotakao.jp/

取材・文/小山内麗香

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