筋肉量を増やしてしっかりと動かすことで、こりと決別
肩こりや腰痛は、体を動かしたり温めたりすることで、個人で対策できそうです。
「暑い夏でも日差しの強い時間帯を避けて、外に出てウォーキングなどをして体を動かすことがベストですが、室内でストレッチをするだけでも筋肉をほぐして血行を促すことができます。デスクワークなどで座っている時間が長い場合も、できれば1時間ほどで立ち上がって肩や首を回すと、1日に蓄積される筋肉の疲労が変わります。その際に窓から遠くの景色を眺めると、目の疲れも軽減できますよ」
股関節の可動域の維持を
一般的に、筋肉量は20代半ばにピークを迎え、加齢により減少していきます。40代以降は意識して筋肉を動かさなければさらに急激に減少してしまいます。
「筋力が落ちて肩関節がスムーズに動かなくなると痛みの原因となり、四十肩とよばれます。四十肩は肩回りの軟骨が減ったり、肩関節周囲の筋肉の動きが悪くなったりして、こりとなって痛みを感じることが原因です。腕の上げ下ろしなど、肩関節を使う動作が少ないと症状が起きやすくなります。医学的には肩関節周囲炎といって、40代に起これば四十肩、50代に起これば五十肩と呼ばれます。
ひどい肩こりは四十肩の症状のひとつ。四十肩を予防するためにも、肩関節の可動域の維持は大切です。同じ姿勢を続けているなと自覚した際には、肩回しをしてみましょう。意識していないと背中は丸まりがちなので、胸を広げるようにして肩を後ろに回す動きをするのがおすすめです」
股関節の動きが悪い人は腰痛になりやすい傾向にあるので、腰痛には股関節のストレッチが有効とのこと。ただし、肩こりも腰痛も痛みが強い場合は整形外科などで専門医に相談してください。
「そのほか、個人で簡単にできる対策としては、冷房の温度を下げすぎないこと。寒い環境ではからだの色々な部位に力が入りやすくなり、肩こりにもなりやすくなります。オフィスなどでエアコンの温度調整ができないときには、一枚羽織れるように上着を用意する。体を冷やしすぎたなと思ったら、シャワーで済ませずに湯船に浸かって体を芯まで温める。そんな工夫をするだけでも、体のこりや疲労が変わってきます」
◆教えてくれたのは:医学博士・高尾美穂さん
愛知県出身。イーク表参道副院長。産婦人科専門医。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。ヨガ指導者としても女性の健康を支えている。著書に『更年期に効く 美女ヂカラ』(リベラル社)、『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社)など多数。https://www.mihotakao.jp/
取材・文/小山内麗香