最低ひと口5回噛むことで食べすぎを予防
繊細な舌を手に入れると同時に、食べ過ぎを防ぐことが脂質の過剰摂取や肥満の予防につながります。特に早食いは食べすぎてしまう習慣の1つです。満腹中枢が満腹の信号を出し始めるのは食事を始めてから約20分後のため、20分以内に食事を済ませてしまうと満腹感を得にくいのだと岡部さんは言います。
「裏を返せば、今より少しだけゆっくり食事をすれば、食べすぎを抑えることができるのです。私のクリニックでは『ひと口10回噛むこと』を推奨しています。それでも億劫ならば、ひと口5回でいいので、ゆっくりと噛んで味わってみてください」
腹八分目で適正な満腹感を
早食いを続けていると、満腹感が麻痺しやすくなり、食べすぎの原因になります。麻痺してしまった満腹感の改善には、腹八分目の習慣が効果的なのだそう。
「麻痺した満腹感を回復させるには、まずは10日、腹八分目を守ってみましょう。適正な食事量で脳を再教育すると、脳は徐々に正しい満腹感を思い出してきます」
どうしても甘いものが食べたいなら和菓子を
普段の食事の改善を頑張ることができても、甘いものだけはやめられない、という人もいるのではないでしょうか。特に洋菓子は、脂肪分が追加されていることでまろやかな甘みとなっているため、おいしく感じやすく、ついつい手が伸びてしまうのだそうです。そこで、甘いものを食べたいときは、洋菓子ではなく脂質の少ない和菓子を選ぶようにしましょう。
「大福、ようかん、お団子、もなか……。これらの和菓子は炭水化物と砂糖が多く使われているので糖分は高めですが、コレステロールを上げるような脂質はほとんど含まれていません。体重管理の必要がなければ、洋菓子よりも和菓子を選ぶようにしましょう。
おのずと、砂糖+脂質の複合中毒になるリスクは下がります。ただし、和菓子であっても、かりんとうのように油を使っているものや、カステラのように卵をたっぷり使っているものはNGです」
◆教えてくれたのは:医学博士・岡部正さん
おかべ・ただし。岡部クリニック院長。慶應義塾大学医学部卒業。カナダ、カルガリー大学留学。亀田総合病院副院長を務めたのち、オーダーメイド医療を理想に、東京・銀座に岡部クリニックを設立。専門医として生活習慣病の予防と治療に長年携わる。日本病態栄養学会評議員、日本糖尿病学会認定専門医・指導医、日本肥満学会会員。著書に『脂質中毒 脳は「油」を欲するようにできている』(アスコム)など。
構成/新藤まつり