
「国内旅行に行くなら、今のおすすめは熊本」というのは、全国各地を旅する旅行ジャーナリストの村田和子さん。ご自身の夏休みも九州を夫婦で旅したという村田さんが、現地で感じた熊本の魅力や最新スポット、震災復興が進行中の熊本城の様子などをお届けします。
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今年は九州に多く訪れていますが、特に「熊本」が面白く注目しています。熊本県には、大自然を五感で楽しめる阿蘇エリア、キリシタン関連遺産やイルカウォッチングなどの天草エリアを始め、人気観光地や温泉地が多くあります。
クルーズで熊本県八代港に寄港した際には、全長6メートルの“ビッグくまモン”が出迎えてくれてびっくり。コロナ禍の真っただ中にオープンした「くまモンポート八代」は、知らない人も多い新しいスポットです。

そんな魅力あふれる「熊本県」ですが、今回はあえて「熊本市中心部」にフォーカス。復興が進む中、天守閣を整備し公開している熊本城、九州初上陸のホテルのオープン、泊まったからこそわかる街の魅力などを紹介します。温泉や豊かな自然を楽しんだ前後にもう1泊、熊本市内へ泊まれば、新たな楽しみに出会えること間違いなしです。
復活!熊本城~天守閣は内部も観覧OK!時間をたっぷりかけて見学を
2016年の熊本地震で被害を受けた熊本城。テレビ等でその姿を見て記憶されているかたも多いのでは? 熊本城が完全に復興するのは2052年と、30年ほどの歳月が必要ですが、現在は天守閣と長塀の復旧が完了。2021年6月から、天守閣内部は最上階まで見学OKになっています。


しかも天守閣内部は、デジタルも駆使した楽しみながら歴史を深堀できる展示が満載。私は時間の関係でざっと見ただけでしたが、時間をたっぷりとればよかったと後悔したほど。


また、石垣の修復のために番号を振られた石が並べられ、復興の様子が見られるのも貴重な体験です。

桜の馬場 城彩苑にある「熊本城ミュージアム わくわく座 」は、熊本城の被災・復旧を伝えるプロジェクションマッピングなど、熊本城の歴史や歩みを体感できるスポット。熊本城との共通観覧券もあるので、ぜひ訪れてから熊本城の見学にいくといいですよ。
■【公式】熊本城 kumamoto-guide.jp
■熊本城ミュージアム わくわく座 https://www.sakuranobaba-johsaien.jp/waku-index/
九州初上陸のホテルブランド「OMO」が熊本に開業!住むように街を楽しむ
今年4月には、「下通・上通商店街」があり、熊本市内で最も賑わう一等地に、九州初となるホテルブランドの「OMO」が開業。OMOは、テンションあがる新感覚の「街ナカ」ホテルブランドで全国に15施設があります(2023年9月現在)。「OMO5熊本 by 星野リゾート」は、「わさもん(新しいもの好きな人)」が集うという意図から、「わさラッシュ!城下マチ」をコンセプトに街全体をリゾートと捉えた楽しみ方を教えてくれます。

近所を“OMOレンジャー”が案内をしてくれるアクティビティ「城下マチさるく(参加無料・宿泊者限定)」では、新旧の魅力あふれる熊本市の中心地を1時間ほどで散策します。

印象的だったのが、商店街にある個性的な書店の数々。創業100年以上という「まるぶん書店」には、店頭に河童の像があり、熊本では知らない人がいない有名な書店とのこと。レトロな外観の「舒文堂(じょぶんどう)」は、九州の郷土にまつわるものを中心に書籍や書簡、絵葉書などを扱う古書店。

本好きな夫は、「本のいい匂いがする」といいながら、お宝の山とばかりに目を輝かせ、私はレトロな建物の壁面に、フクロウやヤモリの装飾があるのを教えてもらい、写真を撮る手が止まりませんでした。

さらに進むと、熊本の銘菓「朝鮮飴」のお店が。熊本なのに「朝鮮飴??」と不思議に思っていると、もともとは「長生飴」だったそう。それがなぜ現在のようになったかは、ぜひOMOレンジャーに直接聞いてみてくださいね。風格ある佇まいの老舗ですが、現当主は漫画やアニメを手掛けるクリエイターとして活躍をされた方。コラボ商品やグッズなどもあり、それを目当てにファンの方が訪れることもあるのだとか。

「OMO5熊本」の隣は、わさモンが集う「鶴屋百貨店」。地下の食料品売り場を眺めると、お土産にぴったりな熊本の県産品が揃うのはもちろん、全国各地から人気スイーツや知る人ぞ知る店があり、気持ちが高まります。都内百貨店を見慣れている私も、その品ぞろえやセンスには脱帽。街中で琴線に触れるものを探しながら、住むように楽しむ旅もよさそうです。
■OMO5熊本 by 星野リゾート https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/omo5kumamoto/
行きつけにしたい!美食におもてなし&記念日に訪れたいBAR
熊本に滞在した日は、偶然にも私の誕生日。ホテルスタッフに相談をしたところ、食事は和食の「草喰・常(そうしょく つね)」を、記念日ならBARは「Ladybird(レディーバード)」がおススメとのこと。「OMO」はガイドブックにも載っていない、スタッフが足で稼いだ情報が満載。他のOMOでもリピートしたくなるお店を紹介してもらった経験があり、期待が高まります。

早速うかがうと……、熊本の新しい人を受け入れる懐の広さを感じ、なんといっても、いずれのお店もホスピタリティが素晴らしい! 記憶に残る誕生日となりました。「このお店に訪れるために、また熊本に滞在しよう」と思えるほどのクオリティです。
例えば「草喰・常」へ夕食に訪れると、カウンター席が用意され、おかみさんからのお祝いのメッセージが。

今回頂いた「ミニ懐石(5500円:税込)」は、一汁五采で、お野菜を中心に、お刺身やお寿司を頂けます。目でも楽しめて美味なうえ、お野菜がたくさんとれてヘルシー。健康が気になる年齢というのもあって、本当に私にぴったりのお店です。

なんといっても女将さんの気遣い、大将の柔和な雰囲気、丁寧な職人さんの手さばきなど、お店の居心地がとにかくよいのです。

お腹も気持ちも満たされて、食後は「Bar Ladybird」へ。重い扉を開けたその向こうは……「ここはどこ?」という世界観が広がります。

我が家はお酒をあまり飲みませんが、マスターの宮本幸明さん曰く「飲めないお客様もバーは楽しめますよ。」と。
お客の2割ほどはノンアルコール派という話にびっくり。

決まったメニューはなく、お客の好みを聞き、何気ない会話を手掛かりに、ひとりひとりにあったカクテルを作ってくれます。もちろんノンアルコールカクテルも。

プレゼンテーションも素晴らしく、魔法の国に迷い込んだように、わくわく感が止まりません。詳細は訪れたときのお楽しみということで、ここでは明かしませんが、気が付けば飲めない2人が2時間半もBARに滞在していました。記念日や大事な人と訪れたいお店です。

■草喰 常(つね) 四季の懐石・精進料理 tsu-ne.net
■Bar Ladybird(レディーバード)https://www.instagram.com/barladybird/
実は熊本市内はバーが多く、地元のかたは、目的に応じて行きつけのBARが複数あるといいます。「OMO5熊本」の館内では、「くまもとGo-KINJO BAR」を開催し、気分にあったBARを紹介。おすすめカクテルの試飲もできちゃいます。

館内カフェでも、夕方からご近所のおすすめのBAR直伝のカクテルが販売されているので、熊本城を望む屋外のテラス席で楽しむのもよさそうです。


いかがでしたか? 熊本県の豊かな自然や温泉地巡りに加えて、もう一泊は熊本市内でぜひ過ごしてみてはいかが?
◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年より7年間、NHKラジオ『Nらじ』月一レギュラーを