女優・大塚寧々さんが、日々の暮らしの中で感じたことを気ままにゆるっと綴る連載エッセイ「ネネノクラシ」。第60回は、秋に旬を迎えた「さつまいも」について。
* * *
山の家で、庭にいたらお隣のMさんが縁側で枝豆を茎から切っていた。私もやらせてほしいと思い、お邪魔する。秋になり暑さも和らぎ、青空の下、縁側に座っていると、ほのぼのして幸せだなあ~と心から思う。Mさんとおしゃべりしていたら、ふとご主人のYさんの姿がみえない事に気がついた。聞いてみると、畑にさつまいもを掘りに行っているという。
その瞬間、私も掘りたい!と思った。そんな私の気持ちを察してくださったのか、Mさんはニヤリとして「行く?」と言ってくださった。間髪いれず「行きたい!」と立ち上がる私。さつまいもの畑は車で数分の場所にあるので、Mさんの運転でさっそく向かう。いきなり現れた私達に、Yさんはびっくりした顔をしていたがすぐに笑顔で迎えてくださった。
さっそくさつまいもを掘らせてもらう。まずは、大きなスコップでさつまいもを傷つけないように掘る。そこからは手でそっと掘っていく。「大きい~!」。たくさん連なっている。さつまいもを茎から切ると、白い液体が出てくる。
なんだろう?と思ったがあまり気にしていなかった。しばらくして、Mさんが洋服に付くと落ちないから気をつけて~と教えてくれたが、遅かった。白い液体だったのに、洋服につくと黒く変わっている。何事も勉強になり、面白いなあ~と思う。幾つになっても、知らない事を知るのは楽しい!
ここにもさつまいもが隠れているかも!と言いながら手探りで掘っていると、すごく大きいのを見つけたり、小さなベビーサイズのさつまいもが出てきたりして宝探しのようだ。
母と夫も参加もしてワイワイ言いながら
午前は終わりにして、後は午後にしましょうという事になりいったん家に戻る。さつまいもを掘って来たと母に話すと、目を輝かせて行きたそうな顔をしている。親子だなあと笑ってしまった。
午後は夫と母も参加させてもらう。母も夫も土を触りながらさつまいもを掘って楽しそうだ。五人でワイワイ言いながら無事に全部掘った。焼き芋とかスイートポテトとかお味噌汁に入れたり、さつまいもご飯にしたり、大学芋にしたり……想像するだけでお腹がへってくる。
Mさんが、さつまいもはすぐに食べるんじゃなくて、しばらく干すのよと教えてくださった。何でも採れたてが良いと思っていたがそうではないらしい。
それからしばらくして、山の家に行くとMさんの縁側で、何かが干してある。おお~さつまいもだ! さつまいもは蒸してから干すのだと言う。スティック状になっていて輝いている。その場でさっそく頂いた。おお~甘くて美味しい、最高のおやつだった。
◆文・大塚寧々(おおつか・ねね)
1968年6月14日生まれ。東京都出身。日本大学藝術学部写真学科卒業。『HERO』、『Dr.コトー診療所』、『おっさんずラブ』など数々の話題作に出演。2002年、映画『笑う蛙』などで第24回ヨコハマ映画祭助演女優賞、第57回毎日映画コンクール主演女優賞受賞。写真、陶芸、書道などにも造詣が深い。夫は俳優の田辺誠一。一児の母。