ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子(66歳)は一昨年10月、「卵巣がんの疑い」で手術を経験。その後、境界悪性腫瘍と診断された。体調の不安とともに、年を重ねたことを感じる日々。そんな中、原付きバイクを走らせたときに見た、東京の「再開発」の光景にある思いを抱いたという。
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“原チャ”で東京のあちこちへ
北向きの部屋に住んでいる私は朝、目が覚めても天気がわからない。スマホを開いて「さて、本日の天気と気温は?」と調べるのが日課なんだけどね。少し前から「よし、今日はイケる!」という日が続いているのよ。何がイケるかというと、原チャに乗れるということ。
完全防寒服を着ても、冬の原チャの寒さといったら、もう、正気を失って笑い出しそうになるからね。あと1か月で67歳になる身にとって「寒い」は体にすごいダメージで、半日起き上がれなかったりする。いや、自分が寒いかどうかというだけじゃない。私の住む秋葉原には若い娘っ子がミニスカ、生足で歩いていたりするのよ。うっすら青紫になった脚が目に入ると、それで体感温度が3℃くらい下がる気がするんだって。
でも、まあ、東京は寒さの大きな峠は越えた感じ。それで原チャであちこち走り回りだしたんだけど、そうするといつの間にこんなことに? という光景にぶち当たるんだわ。てか、18歳で茨城から出てきてこのかた見たことがない東京が目の前に広がっている感じ、というのが今回の本題。
バブル期の規模じゃない!? 東京の「再開発」
30年前のバブル期も、あっちこち、ビルが建ったり壊されたりしていたけれど、今回はそんな規模じゃないんだって。渋谷、芝、東京、神田、新宿、品川。東京の繁華街という繁華街は、「再開発」という名の大工事中で、ビル何棟分かがゴソッと消えてドッカンドッカン。複合商業施設ができあがっているか、その途中だったりなのよ。
1月末に大学病院で「これからは半年に一度、膵臓にできたのう胞を経過観察しましょう」と言われたからかしら。いきなり現れた更地とか、新しいビルがなんだか違う景色に見えてきた。ふと、新しい東京がすっかり完成したのを私は見られるのかな、なんて思ったりしてね。変化といえばそういう自分の気持ちの動きを前は悲観と思ったけど、今は「アリだろうなぁ」と半分くらい承知している感じ。
と、同時に、「おいおい、まだまだ私はここにいるぞぉ」と叫びたい気持ちもあって、日によってはなんとしても新しい場所になじみたくなるんだわ。それには、ノマドがいちばんでね。どこに行くにもタブレットを持ち歩いているから、さっそく虎ノ門ヒルズの広場でもパチパチと仕事を始めちゃった。
それだけじゃない。先日は、ライターのコバ記者こと、氏家裕子さんの大手建設会社に務める彼女の夫が虎ノ門ヒルズを案内してくれたもんだから、柱ひとつ、エスカレーターひとつが生き生きと目に迫ってきて、まぁ、面白いこと。