夏の旅行予定がある人も、これから計画する人も、「ふるさと納税」の制度を利用すれば、ぐんとお得に行けるかも? 今回はスマホから寄付ができ、即時で返礼品として、旅先の宿や体験などの支払いに利用可能な電子商品券(e街ギフト)が付与される「旅先納税※」にフォーカス。旅行ジャーナリストの村田和子さんが、自身も大好きという香川県のアートスポットを実際に旅しながら、利用方法や利用シーンを紹介します。
* * *
ふるさと納税で得た電子商品券を旅先で利用できる「旅先納税」をご存知ですか? スマホからも簡単に寄付ができ、返礼品として旅先で宿泊や飲食、体験などの支払いに利用できる電子商品券が即時で付与されるとあって、とても便利。今回は香川県のアートを巡る旅を通じて、利用方法やどれくらいお得になるかを紹介します。
旅先納税とは? そのメリットは?
ふるさと納税の新しい形「旅先納税」は、寄付額に応じて、旅先での宿泊や体験・飲食などに利用できる電子商品券(e街ギフト)がもらえる仕組み。ふるさと納税の一環なので、⾃⼰負担額2000円を除いた全額が控除の対象となり(※適用される寄付上限金額は収入などの条件により異なります)、返礼品は寄付額の30%までというのは同じです。
電子商品券(e街ギフト)は、寄付と同時に付与されるので、旅先で思い立ったら、すぐに利用できます。1000円(電子商品券300円分付与)や5000円(電子商品券1500円分付与)など少額からできる自治体もあり、電子商品券(e街ギフト)は1円単位で利用OK。電子商品券の有効期限も半年前後など長いので、使いやすいのがメリットです。
2024年7月25日現在、札幌市(北海道)や軽井沢町(長野県)、京都市(京都府)など人気観光地を含む、全国72の自治体で利用できるので、この夏旅の予定がある人は、対象地域かを、まずはチェックしてみましょう。
※旅先納税は株式会社ギフティの登録商標です
操作は簡単!5分で寄付して電子商品券ゲット
時間のあるときに、旅先納税にアクセスしてIDを作っておきましょう。この時点で寄付をする必要はありません。寄付は、旅先などで利用したいタイミングが決まってからでOK。IDさえ登録しておけば、寄付をして電子商品券(e街ギフト)を受け取るまで5分とかからず簡単です。
電子商品券を利用する際に知っておくべき3か条
最初は少し戸惑うこともありそうな点を3つ確認しておきましょう。
【1】寄付ならびに電子商品券の利用は、基本は自治体ごと(※一部除く)
寄付した自治体でのみ利用できる電子商品券が付与されます。旅をしているときに市町村の境目は通常は気にしませんが、旅先納税では重要になります。なお近隣の市町村が連携し、相互的に電子商品券が利用できる地域、例えば札幌市とその周辺(11市町村)、奄美大島(12自治体)、海の京都(7自治体)などもあります。
【2】寄付額の30%が付与される電子商品券の名称が、各自治体で異なる
自治体ごとに電子商品券(総称はe街ギフト)の名称が異なります。例えば今回訪れた高松市では「SETOCO(セトコ)」、小豆島の土庄町では「とのしょうe街ギフト」という名の電子商品券が付与され、使える加盟店には、その名称のポスターや案内が目印として貼ってあります。
また物販については、「ふるさと納税」という性質上、地元の産品のみが対象などの事情もあり、意外にも加盟店は少ない印象。返礼として受け取った電子商品券は、お土産で使うよりも、宿泊・飲食・体験での利用をメインにするのがおすすめです。
【3】電子商品券を利用する際には、二次元コード読み込みとスタンプ形式がある
寄付をして送られてきたメールのリンク先に、電子商品券の利用画面があります。実際に利用をするときには、「お店の二次元コードを読み取って、利用額を記入し決済するケース」と、「額を入力しお店が電子スタンプで決済するケース」の2種類があります。頭の片隅に入れておくとスムーズです。
では、実際に今回訪れた1泊2日香川のアート巡りの様子を紹介しながら、どんなところで使えるか見てみましょう。
香川県で検証!旅先納税、どこで使える?どれだけお得?
3年に一度、次回は2025年に予定されている瀬戸内国際芸術祭。舞台となる香川県高松市や瀬戸内海の島々には、アートなスポットが多く、会期外でも見られる作品も増えています。今回はそんな香川県で旅先納税の電子商品券の利用をしつつ、高松市、そして土庄町(小豆島)へアート巡りの旅をしてきました。
香川のアート旅:1日目~高松市内でアートと美食を巡る
―――――高松市の旅先納税―――――
・寄付は1000円(電子商品券300円分付与)から
・付与される電子商品券の名称は「SETOCO(セトコ)」
・決済はQRコード、あるいは電子スタンプ(加盟店により異なる)
―――――――――――――――――――
高松に到着しまず向かったのは、以前から訪れたかった「イサム・ノグチ庭園美術館」。20世紀を代表する彫刻家イサム・ノグチがアトリエを構えた地に、約150点の作品が公開されています。
五剣山の麓にあり屋島を望む地は、鳥のさえずりが美しく、作品と自然の織りなす空間は、五感に訴えかける力を感じます。施設内の写真撮影は不可というのも、作品や自分自身とじっくり向き合う貴重な時間となります。
【DATA】イサム・ノグチ庭園美術館 入館料:大人2200円(税込)※SETOCO決済OK
※開館は、火・木・土 事前予約必須。※2024年12月より料金改定。開館詳細など最新情報はWEBで確認
続いて高松市美術館へ。高松はアートの文化度が高く美術館のレベルも高いと感じます。高松市美術館では膨大な美術館の所蔵品を季節ごとに入れ替えて展示するコレクション展(常設展)を見学。現代アートから伝統工芸「讃岐漆芸」まで見ごたえある内容で大満足。また美術館内には子ども向けアートスペースや無料スペースにもアートの展示があり、高松に訪れたら一度は足を運びたいスポットです。
【DATA】高松市美術館 入館料:常設展大人200円 ※SETOCO決済OK
気が付けばお昼の時間。香川といえば「うどん」は外せないと、美術館近くの「さぬき麺業 兵庫町店」へ。「天ぷらぶっかけうどん」を注文したら、なんと天ぷらもアートな盛り付け! さすが高松。
【DATA】さぬき麺業 兵庫町店 天ぷらぶっかけ950円(税込)※SETOCO決済OK
午後からは、2022年に屋島山上にオープンした高松市屋島山上交流拠点施設「やしまーる」へ。10年ぶり以上で訪れた屋島は素敵なスポットに進化し、中心となる「やしまーる」はガラス張りの回廊型の建物がオシャレ。自然と一体化するように設計され、瓦は地元の庵治石を利用。展望台やカフェもあり入館は、なんと無料です!
そして「やしまーる」でぜひ見たいのが、前回2022年の瀬戸内国際芸術祭で公開された作品「屋島での夜の夢」。絵画とジオラマを組み合わせたパノラマ館は、明治時代初期には娯楽として日本各地にあったそう。映画などにとってかわられ姿を消したパノラマ館を、保科豊巳氏が源平合戦屋島の戦いをモチーフに復活。
高さ5m、横40mと圧巻で、見る人により、感じ方や発見が異なるのもユニークな作品です。
【DATA】やしまーる 入館:無料 パノラマ展示室観覧料:大人1000円 ※SETOCO決済OK
夕食は、屋島のふもと海に面する住宅街の片隅に隠れ家的に佇むオーベルジュ・ドゥ・オオイシで絶品フレンチを頂くことに。ディナーは1万1000円と1万3200円の2種類のコース。見た目にも美しい前菜は、品数が多くワクワク感がとまりません。
メインの料理は瀬戸内の海の幸や、オリーブ牛や鹿肉などから好みをセレクト。
食後はフロマージュ、そしてワゴンサービスで頂けるデザートも。ロケーションも含めて身も心も満たされるレストランは、高松市駅から少し離れているのでタクシーが便利。わざわざ足を運ぶ価値のあるプライスレスな時間が過ごせます。
【DATA】オーベルジュ・ドゥ・オオイシ ディナー:1万1000円、1万3200円(税込・サ別)。※SETOCO決済OK
※月・火休み
初日に訪れた施設や食費を合計すると、かかったのは約1万5000円。旅先納税の寄付を5万円すれば、ちょうど上記の体験や食事をSETOCOで賄えることになります。
香川のアート旅:ホテル~現地決済で予約すれば使える!
宿泊でSETOCOを利用する際は、SETOCO加盟店であることに加えて「予約窓口は直接でも宿泊予約サイト経由でも問わないが、必ず現地決済であること」が条件となります。オーベルジュ・ドゥ・オオイシも加盟店なので、電話予約なら宿泊でもSETOCOの利用ができます。
部屋にテレビはなく鳥のさえずりや波音を聞きながら、自然の中でのんびりと寛ぐ、そしておいしいものを頂く大人の旅にぴったり。用意されている本のセレクトも好みでリピートしたくなる心地よさです
香川でアート旅:2日目~足をのばして小豆島の土庄港へ
高松港から小豆島の土庄まではフェリーで約1時間、15往復していて気軽に足をのばせます(片道大人700円)。小豆島は2つの自治体からなり、土庄町では旅先納税の利用が可能です。
―――――土庄町(小豆島)の旅先納税―――――
・寄付は5000円(1500円分付与)から
・付与される電子商品券の名称は「とのしょうe街ギフト」
・決済は電子スタンプ形式のみ
―――――――――――――――――――――――
小豆島は、瀬戸内国際芸術の作品が会期外でもみられる作品が多いのが特徴。小豆島は比較的大きな島で、移動の交通機関が必要となりますが、貸切タクシーやバスツアー、レンタカーなど交通機関でも「とのしょうe街ギフト」が利用できる加盟店があるのが特徴です。
小豆島ではフェリーが到着する土庄港近隣にあるアート作品を見学し、干潮時を狙ってエンジェルロードへ。潮がひいて現れた道を渡ったら、売店で証明書を購入しエンジェルポストから投函。
ランチは「うまいもん屋 庄八」でオリーブラーメンを頂き、お土産も購入。船まで時間があったので、ステキなカフェ「BASILICO CAFÉ」でケーキセットのティータイム、高松へと戻りました。どのお店も「とのしょうe街ギフト」の利用ができます。
まとめ:寄付の上限金額の確認もお忘れなく
旅先納税を導入する自治体が増えているので、もしかしたら行ってみたら対象だったということもあるかもしれません。まずは旅先納税のIDを作り、すぐに寄付ができるようにしておくのがよいでしょう。また自己負担2000円で寄付できる上限金額は、年収や家族構成で変わりますから、確認しておくのもお忘れなく。
旅先納税公式Instagram(https://www.instagram.com/tabisakinouzei/)では、「こんなところでも使えるんだ」という素敵なスポットの紹介も。上手にふるさと納税の仕組みをつかってお得に旅を楽しみ、地域を応援してみては?
■旅先納税:https://portal.tabisaki.gift/
■高松市公式観光サイト https://www.art-takamatsu.com/jp/
■小豆島観光ガイド https://www.town.tonosho.kagawa.jp/kanko/index.html
◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん
旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年より7年間、NHKラジオ『Nらじ』月一レギュラーを
●《五反田ではグルメと夜景を堪能》オーバーツーリズムに負けない!東京・大阪・京都の人気観光地をゆったり楽しめる穴場スポット