
アサイー、キヌア、チアシード…最近はやりの「スーパーフード」というと、「美容や健康にいいけれど、オシャレで食べ慣れないものばかり」というイメージで、なんだかとっつきにくい…。だが、いまこそ注目したいのは、日本人が古くから当たり前に食べている「あずき」。実は、冬の寒さから体のあらゆる不調にまで効く、最強の食品だったのだ。
抗酸化作用が高く、老化や病気の予防に役立つあずき
穏やかな秋の気候は一瞬で去りゆき、急激に寒さが深まってきた。東北地方を中心に初雪も観測され始める中、厳しさを増す寒さに、手足の冷えに悩んだり、かぜをひいたという人も多いだろう。この冬を不調知らずで乗り切るためにぜひ取り入れたいのが、“冬のスーパーフード”である「あずき」だ。
あずきの効能について、イシハラクリニック副院長の石原新菜さんが解説する。
「あずきは、その健康効果の高さから、漢方では煮汁が解毒剤として使われていました。中国から日本に伝わってきた当初は、食べ物ではなく薬という位置づけだったほど。現代でも、血圧を下げたり悪玉コレステロール値を下げたりするほか、冷えや便秘、むくみの解消、更年期障害や骨粗しょう症の予防、美肌・アンチエイジング効果、がん予防など、さまざまな効果が期待できるとされています」
特に注目すべきは、抗酸化作用の高さ。ポリフェノールやサポニンといった抗酸化成分を多く含んでおり、活性酸素を抑えて老化や病気の予防に役立つ。
「あずきには、赤ワインと同じ『アントシアニン』などのポリフェノールが含まれ、その量は赤ワインの1・5~2倍にもなるといわれています。ポリフェノールは血管を広げて血液をサラサラにし、冷えを改善する作用があるので、これからの寒い時期にぴったり。美肌効果やアンチエイジング効果のほか、生活習慣病の予防・改善、眼精疲労の緩和などにも役立ちます。
サポニンも血流の改善や冷えの予防が期待できるほか、余分な脂質を洗い流して悪玉コレステロールや過酸化脂質を減らしたり、血糖値のコントロール、肥満予防などの効果があります」(石原さん・以下同)
もう1つ見逃せない栄養素が「食物繊維」。石原さんによれば、あずきはごぼうの2倍、さつまいもの3倍もの不溶性食物繊維が含まれており、便秘の解消のほか、血糖値の上昇をゆるやかにする効果もある。
さらに、難消化性でんぷんの「レジスタントスターチ」も豊富。これは糖質でありながら血糖値を上げにくく、小腸では消化されずに大腸まで届く。大腸では水溶性食物繊維と同じように善玉菌のえさになりながら、不溶性食物繊維のように便のかさ増しをして便通を整える役割を果たす、“腸活界の隠れたスーパースター”なのだ。
「レジスタントスターチは、冷やご飯などの冷たい炭水化物や麦、豆類に多く含まれていますが、あずきはその中でも群を抜いている。いんげん豆の10倍以上、大豆の80倍近い含有量です」
加えて、“若返りのビタミン”ともいわれるビタミンEや、疲労回復に役立つビタミンB群、貧血や骨粗しょう症の予防に欠かせない鉄分も豊富。まさに、健康にも美容にも効果を発揮するスーパー食材なのだ。
和菓子を食べるだけでも健康効果に期待
一方で、「あずきといえばあんこのイメージしかない」と、食生活に取り入れるのが難しいという声も少なくない。確かに、大福やようかんなどの「和菓子」が代表的だが、管理栄養士の望月理恵子さんは、ただ和菓子を食べるだけでも健康効果は期待できると話す。
「市販のあんこ菓子でも、あずきの持つ効果を得ることはできるでしょう。アイスクリームが食べたいときもあずきの使われたものを選べば、ほかのものよりも血糖値が上がりにくいといえます」
あんこを食べる際には可能なら、こしあんよりつぶあんを選ぶといい。サポニンや食物繊維といった栄養が多いのは、あずきの「皮」の部分だからだ。
「皮を取り除いているこしあんは、つぶあんと比べて栄養価が低くなります。また、皮を除いてから加工することで、ポリフェノールやビタミンといった水溶性の栄養素も流れ出てしまいます」(望月さん・以下同)
市販品では砂糖の摂りすぎも気になる。WHOは砂糖の量は1日の摂取カロリーの5%未満と設定しており、平均的な成人で約25g。大福1個あたりには約10g近い砂糖が使われており、そのほかの食事を加味すると明らかに過多だろう。
炊飯器で作る「簡単ゆであずき」
そこでおすすめなのが、自宅で「ゆであずき」をつくること。自分でつくれば砂糖や塩の量を調節できるうえ、アレンジも無限大。

渋抜き(あく抜き)をするとせっかくの栄養素が逃げてしまうので、あえて下ゆではせず、炊飯器を使ってつくるのがポイントだ。
「一般的なゆであずきは、洗ったあずきをたっぷりの水で煮て、一度煮汁を捨ててから、砂糖を入れたり、さつまいもやかぼちゃと一緒に煮ます。ところが、これでは煮汁にあずきの水溶性の栄養素が溶け出し、ムダになってしまう。苦みに敏感な人は『あく抜き不要』の乾燥あずきを選ぶといいでしょう」
作り方は簡単。乾燥あずきと水を1:9の割合で炊飯器に入れて、おかゆモードで炊くだけだ。
「味をつけずにつくることで、アレンジの幅が広がります。冷蔵で3~4日、冷凍なら約1~2か月保存できます。ハンバーグやカレー、オムライス、サラダに入れたり、かぼちゃやじゃがいも、にんじんなどと一緒につぶしてコロッケにするほか、肉豆腐などの煮物に加えたり、さつまいもと小松菜の白和えに混ぜてもおいしいですよ」(石原さん)
もちろん、おなじみの赤飯やあずきがゆにしてもいい。実は、日本人に古くからなじんでいる「あずきと米」という組み合わせは、栄養バランス的にも理にかなっているという。
「あずきに含まれる『リジン』というアミノ酸は体内で合成できず、食事で摂る必要がある必須アミノ酸。不足すると肝機能が衰えたり、血中コレステロールや飽和脂肪酸が増加したり、貧血や集中力の低下などの不調が現れます。米はエネルギーは豊富ですがリジンは少ないため、あずきと一緒に食べることで、これを補うことができるのです」(望月さん)
栄養素が溶け出したゆであずきの煮汁も活用
炊飯器でつくったゆであずきの煮汁には抗酸化作用の高い水溶性の栄養素がたっぷり溶け出しているため、「あずき茶」として飲むことをおすすめする。
「冷やしても、温めてもOK。もちろんノンカフェインなので、妊娠中のかたでも安心して飲めます」(石原さん・以下同)
渋抜きをしていないことによる苦みが気になるようならアレンジを。
「鍋であずき茶を温め、そこに紅茶のティーバッグとしょうがのすりおろしを入れると、飲みやすい『あずきしょうが紅茶』に。また、バナナと一緒にミキサーにかけてスムージーにすると、甘くて飲みやすい上に腸活効果もアップします」

さらに石原さんがすすめるのは、炊飯器でつくったゆであずきにもうひと手間加えてグレードアップさせた「発酵あずき」だ。
できあがったゆであずきが冷めてきたら米麹を加えて釜に布巾をかけ、そのまま保温しておくだけ。
「麹の力で発酵させることで栄養素の吸収がよくなり、特に腸内環境の改善や免疫力向上に期待できる。かぜ予防はもちろん、あずきの持つ抗がん作用、抗アレルギー作用をパワーアップさせることができます」
発酵によって甘酒のような甘みが出るので、「砂糖を入れないゆであずきでは物足りない」という人にもおすすめ。自然な甘みを生かした「発酵つぶあん」としてスイーツに使うのはもちろん、荒くつぶしてバターと混ぜて「発酵小倉トースト」としてパンにぬってもおいしい。
「ほんのりとした甘みがあるので、みそやみりん、しょうゆ、ごまと合わせてごまみそだれにするのもいいでしょう。蒸した野菜や鶏肉にかけてもいいですね。
特におすすめは、ねぎやにんにくと合わせて刻んで中華風ソースにしたり、炒めた玉ねぎ、牛乳を合わせて煮込んだ後にミキサーにかけてポタージュにすること。ねぎやにんにくに豊富な『アリシン』という栄養素が、あずきのビタミンB群の吸収力を高めてくれます」
一方、望月さんがすすめるのは「ほったらかし」でできる超簡単あずきスープ。
「ステンレスなどの保温ポットにあずきと熱湯、固形コンソメを入れ、半日ほど置いて待つだけ。あずきにはビタミンB群やミネラルといった水溶性の栄養素が多いので、煮汁ごと食べられるスープにして、栄養素を余すことなく摂ってほしい。温かいスープにすれば、あずきの持つ冷え予防効果が一層高まるはずです。
野菜や果物は旬の時期に栄養価がもっとも高くなるとされており、あずきの旬は10~2月。いまの時期は、まさにあずきの効果もおいしさも、100%味わい尽くせる季節です」(望月さん・以下同)
あずきに含まれるカリウムには余分な塩分を排出する効果があるので、スープの味つけにはお好みで塩を少し加えてもいいだろう。
「とはいえ、砂糖や塩を加えたアレンジの場合、食べすぎには要注意。あくまでも、普段の食生活にあずきをプラスすると考えてください。スープなら1日100gくらいが理想的です」
年末の寒さも忙しさも、あずきパワーで乗り越えられそう。
基本の「ゆであずき」「発酵あずき」のレシピ
アレンジ自在な「ゆであずき」と「発酵あずき」、「あずきスープ」のレシピを紹介。
「ゆであずき」のレシピ
《材料》
乾燥あずき…150g 水…1350ml(あずき:水は1:9)
《作り方》
【1】あずきは水でさっと洗ってから水気を切る。
【2】【1】と水を炊飯器に入れ、おかゆモードで炊く。ゆであがりが硬ければもう一度おかゆモードで炊く。
【3】煮汁は「あずき茶」に。耐熱性の保存容器に取っておく。
「発酵あずき」のレシピ
《材料》
上記のゆであずき…全量 米麹(乾燥)…200g
《作り方》
【1】ゆであずきが60℃前後になるまで冷ます。
【2】【1】に米麹をほぐしながら加え、ゴムべらでよく混ぜ合わせる。
【3】炊飯器のふたは開けたまま、釜に布巾をかぶせて保温モードにする。
【4】2~3時間おきに混ぜ合わせながら、8~12時間発酵させる
超お手軽「あずきスープ」レシピ
和風だしや鶏がらでも!
《作り方》
【1】あずきは水でさっと洗ってから水気を切る。
【2】【1】をステンレス製の保温ポットに入れ、熱湯を注ぎ、固形コンソメ1個を入れる。
【3】そのまま半日ほど置いておき、あずきがやわらかくなるのを待つ。
出典/石原新菜『メタボ&むくみを撃退! 血圧、血糖値を下げたいなら発酵あずきとあずき茶をとりなさい』
※女性セブン2024年12月12日号