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「まぁいいか」で心身の負担を減らし免疫力もアップ? 歌手・加藤登紀子も実践する「くよくよせず楽に生きる」ススメ

歌手の加藤登紀子
歌手の加藤登紀子もくよくよしないことを心がけているという
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人生には3つの坂がある。上り坂、下り坂、予期せぬまさか──そのどれに当たっても人の心は揺れ動く。特に下り坂やまさかに遭遇すると「どうして私が」と考えてしまう。だがそこで「まぁいいか」と構えられることが、人生後半戦をより生きやすくしてくれる。

年齢を重ねるとともに「不安」や「後悔の念」に襲われる人も多い

50才を過ぎ、60才の還暦を迎えて、暮らしも環境も大きく変わった先に、70才が見えてくる。人生のゴールに思いをはせるとともに、「いつまで生きられるだろうか」「病気になったらどうしよう」「老後資金が底をつかないか」「友達がどんどん減っていく」といった不安が押し寄せる人は多いだろう。

外で手を上に上げているシニア女性
50才を過ぎ、60才の還暦を迎えて、暮らしも環境も大きく変化する(写真/PIXTA)
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もしくは、「あのとき違う仕事を選んでいたら」「結婚相手を間違ったかも」「短気を起こして離婚しなければ」といった後悔の念に襲われている人もいるかもしれない。

はたまた、「よい死に方をしなくては」「病気にならない生き方をしたい」という使命感に駆られて焦燥感を覚えている人も少なくないはずだ。しかし、思い詰めることや理想を追い求めすぎることは、かえって人生に影を落とす。

免疫力が低下して健康リスクが増

高齢者医療に詳しい精神科医の和田秀樹さんは、シニアを襲うさまざまな悩みを鑑みたうえで、「年齢を重ねることでいちばん恐ろしいのは、免疫力の低下です」と断言する。

体内に侵入したウイルスや細菌から体を守る免疫力は、生まれた直後から成長するにつれて高くなり、思春期から20才頃にピークを迎えると、そこから少しずつ低下し始める。40代でピーク時の50%、70代ではピーク時の20~30%に低下する人もいるとされるが、和田さんは、高齢者の免疫力が必要以上に落ちることは、「死」に直結すると訴える。

免疫力は年令とともに低下することを表すグラフ
免疫力は年令とともに低下(出典/『からだと免疫のしくみ』(日本実業出版社)
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「日本はがんで死ぬ人がもっとも多く、年を取ると肺炎やインフルエンザ、風邪をこじらせるなどで亡くなる人も多い。高齢になって免疫力が低下するとさまざまな健康リスクが増えるので、年齢を重ねたらとにかく免疫力を高めることが重要です」(和田さん)

高齢者の大敵である免疫力低下を防ぐには、どんなことにも鷹揚かつポジティブに構え、「まぁいいか」と受け流す姿勢が大切だと和田さんは言う。これまでにも「完璧じゃなくても『ま、いいか』を口癖に」などと提唱してきた。

鼻をティッシュでおさえて目をつぶる女性
免疫力が低下すると健康リスクが高まる(写真/PIXTA)
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「免疫力を高めるために大切なのは、生活のストレスを減らすこと。嫌だなあと思うことや我慢しなければならないことを避け、何についても“まぁいいか”と受け止めることが心身の負担を減らし、免疫力を高めて長生きすることにつながります」(和田さん)

転んでもタダでは起きない

このたび『「さ・か・さ」の学校 マイナスをプラスに変える20のヒント』を上梓した歌手の加藤登紀子も、「私が心がけているのは、くよくよしないことです」と語る。

「人生において失敗や後悔は避けられません。でも、くよくよして引きずるのではなく、失敗や後悔を次のステップを踏み出すためのフックにしています。だから昔から、『転んでもタダでは起きない人だね』ってよく言われるんです(笑い)」

若い頃から女優、歌手、作曲家、作詞家などとマルチに活躍する過程では多くの挫折や後悔があったはずだが、それでも加藤が“転んでもタダでは起きない人”になったのは、夫である藤本敏夫さんの死も大きかったという。

「2002年に夫が他界してひとりぼっちになったとき、無力感や虚脱感、寂しさを感じました。でも同時に悔やむばかりでなく、逆境から頑張って奮起しようという気持ちもつかんだような気がします」(加藤・以下同)

80代になった加藤はいま、「81才もひっくり返せば18才よ」と笑顔を見せ、いくつになっても明るく人生を送る極意をこう明かす。

「くよくよせず楽に生きるには、自分が好きなように生きることが何より大切です。私は若い頃は大人数で演劇をやっていたけど、誰にも支配されず生きるためにひとりで活動できる歌手になりました。

何事も人に言われて無理にやるより、自分で好きなように決めて生きる方が幸せになれます。たとえ恋人と別れたり離婚したりする場合だって、自分で決めたことならその後の人生をさわやかに生きられるはずです」

不安や後悔を抱いていてもくよくよせず前に進む。そんな人生を送る彼女がひとつの理想像としてイメージするのは、「フィギュアスケートの選手」だ。

「フィギュアの選手は演技中に転倒しても、それにめげないでまた颯爽と滑り始めるでしょう。もちろん悔しいだろうけど、諦めたり落ち込んだりすることなく再びリンクを滑りだす姿に観客は心を動かされ、大きな拍手を送ります。自分もそうした姿をめざしたいと思っています」

◆加藤登紀子

1943年ハルビン生まれ。1965年、東京大学在学中に第2回日本アマチュアシャンソンコンクールに優勝し歌手デビュー。1966年に『赤い風船』で日本レコード大賞新人賞を受賞し、『ひとり寝の子守唄』『知床旅情』はミリオンセラーに。女優、声優としても活動し、50年以上重ねている年末恒例の「加藤登紀子ほろ酔いコンサート2024」(12月20日 埼玉・大宮ソニックシティ大ホールほか)も大好評公演中。

※女性セブン2025年1月2・9日号

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