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【飛鳥女史に出会う「はじまりの奈良」旅】バイオリニスト・川井郁子と花音が親子で「日本国創成の謎に迫る」前編

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いまから約1400年前の飛鳥時代、日本の中心はここ奈良県明日香村にあった。国の礎が築かれたこの地は謎と神秘に包まれながら、いまもなお“日本人の心のふるさと”として訪れた人を魅了している。明日香村を歩く旅はすなわち、日本をつくった3人の女性天皇の軌跡を追うことでもある。時を超えて、母娘で歴史に触れ、新たな風を感じる旅に出よう。

パワフルでしなやかな飛鳥女史を追う

「奈良の思い出は、東大寺、法隆寺、薬師寺で和楽器奏者のかたがたと演奏したこと。寺社では荘厳な空気に包まれ、不思議と心地よい演奏ができました。明日香村も“見る”というより“味わう”場所。日本の原風景が残っていて、空気が違いますね。古代の人の息吹を感じるようです」と、川井郁子さんは飛鳥宮跡に立ち、明日香村をぐるりと見渡した。花音さんは修学旅行で訪れたことがあるというが、郁子さんとの飛鳥旅は初めて。「歴史をより深く知ると、昔の人と同じ場所を歩いているような感覚があります。母と一緒にそれを感じることができてうれしいです」(花音さん)。
2人が訪れた飛鳥宮跡付近は、後の「大化の改新」へと繋がっていく「乙巳の変」(645年)の舞台でもある。それまでの豪族中心の時代に終止符が打たれ、天皇中心の国造りが始まった。まさにここは時代を変えた日本創成の地なのだ。郁子さんは「私の学生時代は、大化の改新と教わりましたが、いまは乙巳の変と学ぶんですね」と、刻々と更新される史実に驚いた様子。

飛鳥時代に活躍した3名の女性天皇

飛鳥時代には日本初の女帝である推古天皇をはじめ、斉明天皇、持統天皇など、才気とエネルギーに溢れた女帝たちが次々と登場した。彼女たちは新たな都の造営、大国・中国との外交、大宝律令をはじめとする法制度の整備など、パワフルかつしなやかに新しい時代を切り拓いた。飛鳥に詳しい奈良大学教授の相原嘉之さんは、「明日香村はのどかな田園風景が広がっていますが、地面から1m下にはまだまだ発掘されていない真実が山ほど眠っています。だから飛鳥はいつだって新しい。いまも現在進行形です」と話す。明日香村には以下に紹介する遺跡のほかにも、謎の巨大石造物「酒船石」や、飛鳥美人を鮮やかに描いた「高松塚古墳」、世界太古の本格的天文図が発見された「キトラ古墳」など、「はじまりの謎」が数多くある。

推古天皇
554〜628年。東アジア初の女帝。頭脳明晰な厩戸皇子(聖徳太子)と豪族の蘇我馬子と政治を行い、国家の礎を造る。

斉明天皇
594〜667年。皇極天皇、斉明天皇の名で日本初、2度天皇に即位。強力な国家を目指して土木事業に力を注いだ。

持統天皇
645〜702年。夫の天武天皇の崩御後、女帝となり藤原京に遷都を果たす。日本初の法典である大宝律令を制定。

飛鳥時代の宮跡が重なる時代が大きく変わった地

飛鳥宮跡は飛鳥板蓋宮(皇極天皇)、飛鳥岡本宮(舒明天皇)、飛鳥浄御原宮(天武・持統天皇)など、複数の宮跡が重なるように発掘された。蘇我入鹿が暗殺された「乙巳の変」は、この近辺で起こったという。

「乙巳の変」は飛鳥宮跡のすぐ近くで起こったとされる。
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歴代天皇に思いを馳せ、宮跡を歩く川井さんと花音さん。
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DATA
奈良県高市郡明日香村岡