
人生100年といわれる時代。まだまだ長い第二の人生、せっかくなら好きなこと、一生懸命になれることを見つけて生きていきたい。自分を夢中にさせる「趣味」や「人とのつながり」は生きる活力となり、健康寿命を大きく延ばしてくれるはずだ。キルト作家・タレントのキャシー中島(73才)に、いま夢中になっている「生きがい」について聞いた。
2枚の布に綿を挟んで縫い合わせる──キルトという美しい手芸にキャシーが出会ったのは、20才のときに撮影で訪れたアメリカ・ロサンゼルスだった。以来、キルトは中島にとって「つらいときも悲しいときも自分を再生してくれる趣味」になったと話す。
「仕事や家庭にストレスを感じたとき、布の端切れを縫い始めると“無”になれるんです。端切れと色の組み合わせでかわいいキルトが生まれる喜びがあり、どれほど疲れていてもリフレッシュできる。怒りを手放して心が穏やかになる時間です」(中島・以下同)
2009年に最愛の長女の七奈美さんを29才の若さで肺がんで亡くした際も、キルトとともに立ち直った。

「娘の死後2か月は何もやる気が起きなかったけど、私が悲しんだまま暮らすことを娘は望まないだろうと思ったんです。私らしくあるために明るい色の服を着て明るい場所に行こうと思いつき、真っ赤なワンピースで東京・銀座の歩行者天国を歩きました。
娘が亡くなっても変わらず動く世の中を感じ、自分はいま生かされているのだからいろんなことを経験して、いつか再会する娘に話すべきだと感じた。そこから、娘が好きだったオレンジ色のキルト作りに没頭したんです。無心になることで、再び前を向いて笑うことができるようになりました」
子供たちが幼稚園の頃に自宅のある静岡・御殿場で始めたキルト教室はいまも続いており、生徒は200人を超える。最高年齢は98才の女性だ。
「彼女はもう40年教室に通っていて、『100才のキルトを作る』と意気込んでいます。かっこいいでしょ。私は教室に来る人たちの家庭の情報などは知らず、誰かの妻や母としてではなく、ひとりの人間としてかかわっています。月に1回、作品を見せ合いながらおしゃべりを楽しむ時間もいまの生きがいです」

どんな生きがいを持つにせよ、中心に「自分」がいることが大切だと強調する。
「誰かに喜んでもらうためではなく、自分が好きだからやることが生きがいにつながります。その際に大事なのが、自分をほめること。例えば、疲れているのに夫のためにおにぎりを握るとき、そうする自分を“すごいな、私”とほめることが自分に対する癒しになります。見返りを求めず自分で自分のことを認められれば、周囲の言動を気にすることなく人に優しくなれます」
“あなたはあなた、私は私”と割り切れば、生きがいは身の回りの至るところに見つかるはずと語る。
「毎日コーヒーを飲むとき、“今日はおいしくいれられた”と思うことや、部屋をきれいに掃除することも立派な生きがいです。一日一日を大切に生きることでもいい。難しく考えず、自分が好きなことや楽しいことを生きがいにして、あとは楽しめた自分をほめてあげればいいんですよ」
【プロフィール】
キャシー中島/1952年ハワイ・マウイ島出身。1969年にモデルとして芸能界デビュー。国内でハワイアンキルトを紹介した第一人者として知られる。
※女性セブン2025年7月3・10日号