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大病続きだった加藤茶の「日常生活」を改善させた妻・加藤綾菜の気づきとサポート “水を自分で取りに行く”から始まった「自分で自分をケアする」ことの重要性

加藤茶の妻・加藤綾菜
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 国民的スター・加トちゃんこと加藤茶(82才)の夢は「108才の“茶寿”まで舞台に立つこと」。その夢を叶えるため、妻・綾菜(37才)は、透析療法を受ける寸前だった夫の食事と運動、生活習慣のすべてを変えた。その結果、血圧は正常値に。結婚生活15年をかけて綾菜が学び、挑戦し続けたことに健康長寿のヒントがあった。【前後編の前編】

「加トちゃんの好き嫌いの多さは異次元級です。好きなものはとんカツやハンバーグといったお肉やラーメン。とにかくしょっぱくて、味が濃くて、茶色いものが大好きなんです。お酒も毎晩たくさん飲んでいました。

 健康を考えて焼き魚を出しても、まったく手をつけない。魚は骨があるから食べられないって言うんです。野菜も大嫌いで、付け合わせでさえお皿の端に寄せて残すくらいです」

 こう語る加藤綾菜だが、いま夫の偏食を笑顔で語れるのは、減塩食生活を受け入れてもらえたからだろう。

SNSの料理写真にお叱りが殺到!

 綾菜が加藤茶と結婚したのは2011年。当時68才だった加藤とは45才の年の差があり、話題となった。

「結婚当初は、加トちゃんに喜んでもらいたくて、彼が大好きな肉料理ばかり作っていました。

 23才の私は、加トちゃんに『おいしい』と言ってもらうことばかり考えて料理をしていました」(加藤綾菜・以下同)

 しばらくそんな食生活を続けていたある日、手料理をSNSに投稿すると、《高齢なのに、味の濃いものばかり食べさせるなんて、早死にさせたいのか!》といったコメントが続々と寄せられた。ただでさえ、年の差婚のせいで「遺産目当て」だなどとバッシングを受けていた綾菜は、さらなる世間からのお叱りにショックを受けた。

「加トちゃんは、私と結婚する前の62才のとき、狭心症と診断され、2006年には大動脈解離を発症。人工血管置換手術をしていました。そのときから、減塩・禁酒を医師から告げられていたんです。ですから、加トちゃんの健康状態と年齢を考えたら、確かにそう言われても仕方がない。皆さんが私に教え、気づかせてくれたんだと思い、このとき初めて減塩を意識するようになりました」

 健康のため減塩食に──そう言われても、23才の綾菜は当初、何をしていいかわからなかった。そこで幼児向けのレシピ本を購入して勉強。魚はピンセットで骨をすべて取り除き、野菜は細かく刻んで形が見えないようにして肉に混ぜた。

「お豆腐で作ったハンバーグを出したら、加トちゃんは普通のハンバーグと勘違いしてくれて、『肉汁がたっぷりでうまいね』と言ってくれたんです。心の中でガッツポーズをしました」

 しかしこの頃の減塩料理は、いま振り返れば本格的なものではなかったという。その後、本腰を入れて減塩に向き合わなければならない出来事が起こった──。

パーキンソン症候群で箸も持てなくなる

 結婚2年目、加藤は狭心症などの薬の影響でパーキンソン症候群を発症する。仕事中でのことだった。

「急いで帰宅したときにはすでに40℃近い高熱があり、病院に連れて行ったところ、即入院。医師からは、『生きているのが不思議なくらいです。復帰は難しいでしょう』と言われ、仕事はすべてキャンセルしました」

 入院後、加藤の体重は20kg近く減り、手の震えで箸も持てなくなった。

 パーキンソン症候群は、ふるえや筋固縮(筋肉の持続的なこわばりや過剰な緊張)、姿勢保持障害などを起こす病気だ。

「症状はみるみる進行。食事を飲み込むことさえ難しくなり、点滴や流動食だけの状態に。足腰も弱って歩けなくなるなど、日に日に弱っていく加トちゃんを前に、何もできない自分の無力さを痛感しました」

 しかし、綾菜の献身的なサポートのおかげもあり、加藤は1年でパーキンソン症候群を克服した。

「この経験が私にとって大きな転機になりました。あんなに元気だった人が、ある日突然動けなくなるのだから、これから先、私に専門知識がなかったら、加トちゃんを支えられないと痛感しました」

 綾菜は、すぐに介護職員初任者研修を修了するため、学校に通い始めた。

 しかし、綾菜が資格を取ってしばらくすると、加藤はまたも病に襲われた。

「ある夜、就寝していた加トちゃんが吐血したんです。食道破裂でした。血の量に驚きましたが、資格を取っていたおかげで、救急対応ができました」

 資格や知識の重要さを実感した綾菜はその後、「こういうときはどうしたら……」といった疑問が生じるたびに勉強を重ね、介護予防運動指導員、介護食アドバイザーなどの資格も取得していった。

加トちゃんを変える前に自分が変わるべき

 加藤のためにと、食事や運動について学び始めると、たくさんの気づきがあったという。

「それまでの私は、加トちゃんのために身の回りのことを全部やってあげることが愛情表現だと思っていました。靴下まで履かせてあげていましたから(笑い)。でも、資格の学校の先生に『なんでもやってあげるのは本人のためにならない。体が動かなくなるし、認知症も誘発する。本当に愛しているなら、自立させないとダメ』と言われました」

 よかれと思ってやっていたことが、夫の健康を損なうきっかけになっていたと気づいた綾菜は、“自分が変わらないといけない”と考えを一変させた。

「加トちゃんとしては、それまで私やお付きの人たちにやってもらうのが当然だったことを、急に自分でやらなくてはいけなくなりました。そのせいで、最初はすごく不服そうで……。

 たとえば、『水を取って』と言われても『自分で持ってきてね』というわけです。加トちゃんは性格的に、やれと言われるとやらない。でも、『これは加トちゃんのためなんだよ』『一日でも長く一緒にいたいの』などと、ポジティブに説明したり、時に涙を流してお願いしたりすると、納得して自ら動いてくれました。強制や命令をしたことは一度もありません」

 水を自分で取りに行く。その行動を変えただけでも大きな変化があったという。

「水を取るため、立ち上がって歩くと、途中で愛犬のご飯がないことに気づいて自分で用意してあげるようになったんです。さらに、犬のおやつがないと自分で歩いて買いに行くようになりました」

 自分で自分のケアをするよう、加藤の行動がどんどん変わっていった。

「もともとおしゃれな人なので、自分で洋服を買いに行くようにもなりましたし、月1回の歯科健診も自分で手配するようになりました。さらに自分でできることを増やすため、週1回、ピラティスに通って運動するようになると、丸まっていた背筋がピンと伸びて、姿勢もよくなりました」

 こうした日常生活の改善は、数年かけて少しずつ浸透させていったという。

 後編記事【《目標は108才の“茶寿”まで舞台に立つこと》加藤茶を支える妻・綾菜が実現した1日6g減塩でもおいしい食生活 栄養士と研究を重ね、集大成「万能 氷だし」が完成】では、加藤綾菜が実践する減塩料理について、具体的に紹介する。

※レシピや体操の参考文献/加藤綾菜著『加藤家の食卓 医師と栄養士の先生に長生きする食事の作り方を習いに行ってきたレシピ集』(アスコム)

「万能 氷だし」の作り方
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【プロフィール】
加藤綾菜(かとう・あやな)/タレント。1988年広島生まれ。2011年『ザ・ドリフターズ』の加藤茶と結婚。YouTube「加藤家の日常」やさまざまなメディア、イベントに出演。「綾菜式減塩 万能だし粉」(60g1382円)発売中。著書に『加藤家の食卓 医師と栄養士の先生に長生きする食事の作り方を習いに行ってきたレシピ集』(アスコム)など。

※女性セブン2025年11月27日号

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