
コンビニのサンドイッチ、スーパーのコロッケ、テイクアウトした餃子、刺身につけるしょうゆ──大半のパッケージの裏には食品添加物がズラリと並ぶ。私たちの生活から排除するのが難しいのなら、せめて体に害の少ない添加物を知っておきたい。
保存性向上、食中毒防止、安全な流通、栄養価を高める、見た目や香りをよくするなど食品加工技術の進化に伴い、いまや食品添加物は欠かせないものとなった。日本で認可されている添加物の数は、831品目にのぼる(2022年時点)。
一方で、食の安全を担うはずの添加物には危険な側面があることは、すでに広く問題視されている。発がん性リスクのあるものや、子供の発達に影響を与える恐れのあるものなどいくつもの危険が指摘され、「食品添加物は危険」という認識は一般的となった。だが、食の利便性とリスクを天秤にかけることはそう簡単ではない。神奈川県在住の主婦、Aさん(62才)が嘆息する。
「子供が結婚して家を出て、夫とふたりの食事は総菜に頼ることが多くなりました。コンビニのお弁当ですませちゃうことだってあります。だけど、コスパを考えたら作るよりもよっぽど経済的だし、時間も手間もかからない。毎日食べているわけじゃないし、家で手作りしたって調味料には添加物が入っているわけだから、そんなに気にする必要ってあるんでしょうか」
原材料名に添加物が記される順番は使用量が多い順
そもそも、「添加物を全部避けることは難しい」と話すのは、加工食品ジャーナリストの中戸川貢さんだ。
「どれだけ気にするかは、人それぞれで異なります。いずれにしろ、食事のすべてで添加物を排除することはほぼ不可能です。だからこそ食品表示をしっかり見て、自分の中で許容できる添加物と、絶対に避けるべき添加物を見極められるようになる必要があります」
食品表示を見ると、野菜や果物、肉や魚、小麦粉、砂糖といった原材料に続いて「/(スラッシュ)」が記されている。その/以降に続くのが添加物だ。調味料、着色料、香料、酸化防止剤などいくつも並ぶ中、いったいどれが“本当に危険”なのか。『食べてはいけない10大食品添加物』の著者で科学ジャーナリストの渡辺雄二さんが言う。
「原材料名に添加物が記される順番は、使用量が多い順です。私が“食べてはいけない”ものとして挙げるのは、安息香酸Na(保存料)、亜硫酸塩(漂白剤・保存料)、次亜塩素酸Na(殺菌料)、OPP/TBZ(防カビ剤)、亜硝酸Na(発色剤)、タール色素(着色料)、カラメル色素(着色料)、サッカリンNa(甘味料)、人工甘味料3品目(アスパルテーム、アセスルファルムK、スクラロース)、臭素酸K(小麦粉改良剤)です。ほとんどが、用途名併記の添加物で、保存料などといった用途と、安息香酸Naという物質名の両方が記されます。

こういったものは基本的に毒性が強く、それを消費者が選択できるようにしているのです。毒性が強いというのは、発がん性など体に害を与える可能性が示唆されているものです」
実際、2023年7月、IARC(国際がん研究機関)は、人工甘味料のアスパルテームは、ガソリンエンジンの排ガスや鉛と同等の発がん性リスクがあると分類した。
「アスパルテームなどの甘味料について、国は人工や合成といった分類を避けています。たしかに、人工甘味料にはいくつかの分類法があり、メーカーによって異なりますから一括りにしたくないのかもしれませんが、いずれにしても体にいい影響は与えません。
発がん性が指摘されていることはもちろん、WHO(世界保健機関)は腸内環境の悪化を招くと懸念しています」(中戸川さん)
また、ハム、ソーセージ、ベーコンといった加工肉についても同様に分類し、その理由として亜硝酸Naの使用を指摘している。
アメリカでは禁止も日本では使用が続く
添加物はそもそも「安全性が確立されていない」と指摘するのは『食品添加物小辞典』の監修者で食品評論家の小薮浩二郎さんだ。
「添加物の安全性について、たしかにラットなど動物実験では証明されていますが、人間ではいまだ証明されたとはいえません。医薬品なら必ず人間でも安全性の確認を行いますが、添加物はありません。
また、添加物のほとんどは化学合成品ですが、中には純度の規定がないものがあります。乳化剤やカラメル色素、加工デンプンなどは純度の規定がなく、いくら不純物が含まれていてもいいということ。それらを日常的に口にするのは非常にリスクが高いでしょう」
さらに、表示法の不明瞭さが危険に拍車をかける。
「たとえばカラメル色素にはI〜IVまであり、IIIとIVには発がん物質が含まれています。しかし、表示上は『カラメル色素』だけでいいので、IやIIなのか、IIIやIVなのかは消費者にはわかりません。乳化剤も具体名が表示されません」(渡辺さん・以下同)

いま添加物の危険性については国際的に問題視されており、海外では「使用禁止」のものがいくつもある。
アメリカではトランプ大統領指令の下、合成着色料の規制に乗り出した。ADHDといった発達障害や発がん性リスク、消化器系疾患などを招くといった研究が発表されているからだ。
「今年1月、アメリカFDA(食品医薬品局)は赤色3号について、発がん性リスクがあるとして使用禁止にしました。しかし、日本では依然として使用が認められたまま。アメリカではかねて着色料について規制が厳しく、赤色3号を含むタール色素といった合成着色料をいくつも使用禁止にしています。ヨーロッパでも子供の脳の発達の影響が問題視され、EUでは規制が厳しくなっている。
これは、添加物を多量に使用した超加工食品を強く問題視していることにつながります。がんや糖尿病、心臓疾患、認知症といったあらゆる病気を引き起こすことが疫学研究で明らかになってきて、カリフォルニア州では学校給食から超加工食品を排除する法律が成立しました。日本の動きは鈍く、アメリカでは使用されていない赤色2号や3号を含むタール色素12品目の使用が認められています」
天然成分由来の添加物なら比較的安全
危険性が明らかになっている中、“まだマシ”な添加物はあるのだろうか。
「保存料として使用されるプロピオン酸、甘味料のソルビット(ソルビトール)は比較的安全性が高く、体への負担が少ないでしょう」(小薮さん)
天然成分由来の添加物なら比較的安全だと言うのは渡辺さんだ。
「アントシアニン(着色料)、アルギン酸Na(糊料)、アルギニン(栄養強化剤)、カロテン色素、キサンタンガム(増粘剤)、キチン・キトサン(増粘剤)、セルロース(増粘剤)などは野菜や果物、海藻、魚介など天然由来のものにもともと含まれるものなので神経質にならなくてもいいでしょう」
中戸川さんは、「避けることがストレスになるくらいなら、思いきって気にしなくてもいい」とアドバイスする。
「人工甘味料と合成着色料は絶対に避けるべきですが、それ以外については自分のできる範囲でいいと割り切るのも手です。特に化学調味料(アミノ酸)は避ける方が難しいので、個人的には許容してしまってもいいと思っています」
添加物の表示には“抜け道”も存在する。
「キャリーオーバーといってそこに書かなくてもいいというルールも存在します。たとえばしょうゆせんべいの場合、しょうゆにどんな添加物が使われたかは書かなくてもいいので、表示されていない。そうなるとどれだけ見極めようと思っても限界がある。
添加物の知識を増やして、記されている範囲内で、自分の判断で良しあしをつけるのがまずは第一歩です。人工甘味料と合成着色料を避けるだけで体への負担がだいぶ軽くなりますから、まずはそこを意識してみるといいでしょう」
体のこと、毎日の食事作りのこと、家計のこと、いくつもの視点をもとに、マイルールを持って判断できるよう、まずは添加物の理解を深めることから始めよう。

※女性セブン2025年11月27日号