
片付けは、部屋がスッキリするだけでなく、時間やお金の節約もでき、心に余裕が生まれる。そればかりか「捨て活」をして人生が変わったという達人たちも。あなたの人生後半戦を輝かせる魔法のメソッドを伝授します。

物にも固定資産税や家賃がかかる
不要な物を捨てただけで人生が好転する―整理収納アドバイザーのぴょりさんが自身の体験を語る。
「私は根っから片付けが苦手で、33才までいわゆる汚部屋に住んでいました。
自宅に人を呼べないから人間関係に支障が出る。部屋が散らかっていたため、20分以上かけて探し物をしては、見つからなくて同じ物を購入する。その繰り返しでした。そんな中、私は結婚して新居を探すことになりました。それで新居の収納スペースを広くしようと考えている中、使わない物が占領しているスペースにも家賃や固定資産税がかかっていることに気づいたんです」
いまある物を移動させても片付けたことにはならない。ぴょりさんは、大胆な「捨て活」を実行する。
「7か月かけて約400㎏の物を手放しました。物が減ったので新居の収納スペースを減らすことができ、新居を50坪から30坪にサイズダウン。当初の予算から2000万円も節約できました」(ぴょりさん)
捨て活のメリットについて片づけアドバイザーの石阪京子さんが語る。
「私が片付け指導しているかたからは、捨て活をしたことで時間に余裕ができ、心身ともに安定したという声をよく聞きます。
家が片付くと家にいることが楽しくなり、家族仲もよくなり、外出が減ってレジャーや外食も減って、お金が貯まるようになったという人も多いですよ」
石阪さんは60代が捨て活のラストチャンスと続ける。
「70代になると体力が落ちるため、家族や誰かの手を借りないと片付けるのが大変になることが多いんです。体が動く60代のうちに自分でなんとかしましょう」
では、具体的にどう捨てればいいのか。次から見ていこう。
一見、片付いているようでも何年も着ていない衣服や、使っていないおもちゃ、引き出しに入れたままの便利グッズなどの不要品はあちらこちらに存在する。特に物が増えがちな場所の“捨てポイント”をピックアップする。
準備するもの
大きめのビニール製の手さげ袋や紙袋2枚。捨てるためのゴミ袋1枚
捨て活心得
【1】「いる」か「いらない」かを声に出す
「その物を見ながら『いまの自分に必要?』『この先、必要になる?』と声に出して自問すると、冷静に判断できますよ」(石阪さん・以下同)
【2】「自分の価値を高める物」か「棺桶に入れたい物」か
「子供からもらった手紙や旅行の思い出の品など捨てにくい物は、『棺桶に入れたい』かどうかで考えてみましょう」
【3】周囲に捨て活を報告
「SNSなどで毎日捨てる様子を投稿すると、『サボれない』という気持ちに。SNSでなくとも家族や友人に宣言、報告するだけでもモチベーションがアップ」(ぴょりさん)
捨て活はまず収納されている物をすべて出すことから始める
「捨て活は、まず収納されている物をすべて出すことから始めましょう」と石阪さんがアドバイスする。
「物を出す前に、手さげ袋2枚を、必要な物用、フリマなどで売る物用に分けます。
次に、『冷蔵庫の上段』など一度に1か所ずつ、入っている物をすべて出し、それぞれの袋に入れていきます」(石阪さん・以下同)
欲張って、複数の場所に手をつけてはいけない。
「『いまから、たんすの引き出しの1段目を、1時間かけてやる』など場所と時間を決めると、モチベーションが上がり達成感も得られます」
場所別!見直したいものリスト
では、場所別に捨てポイントをさらに見ていこう。
キッチン&冷蔵庫、パントリー
「どこから手をつければいいかわからない場合は、冷蔵庫やパントリーから始めて」とぴょりさんは言う。
「キッチンは『捨てる・捨てない』の判断が、ほかの場所に比べてラクな場所。なぜかというと、食材には消費期限や賞味期限という判断基準があるからです」(ぴょりさん・以下同)
次に捨てるべきは、用途が限定された便利グッズだ。
「キャベツ専用スライサーや、温泉卵を作る容器など、ほかの物で代用できる物は捨て候補に」

クローゼット
キッチンが済んだら、ターゲットはクローゼットだ。
「着古したTシャツをカットして雑巾代わりにするかたがいますが、おすすめできません。結局、捨てなければストック場所が変わるだけです。Tシャツの端切れで掃除をしてもあまり効果は望めません。思い切って捨ててしまいましょう」
悩む人が多い着物の捨て方を石阪さんが説明する。
「着物にも、流行り廃りがあり、購入時は高価だったとしても、高く買い取ってもらえるとは限りません。着ない着物があれば、リサイクルショップに引き取ってもらいましょう」
リビング
リビングも見直す物が多くある。
「クッションは複数あると場所を取るので、1〜2個に絞る。ラグマットも掃除の手間を考えれば敷かないことをおすすめします」(ぴょりさん)

そのほか
「ぬいぐるみやお守りは、捨てるのを躊躇しがち」と言うのは、石阪さんだ。
「子供の頃から持っているぬいぐるみは愛着が強く、捨てたくない人が多いです。大切にしていることは素敵なことなので無理に捨てなくてもいいと思います。
ただ迷う場合は、なぜ必要なのか声に出して言ってみると自分の気持ちが整理でき、冷静に判断できます。
また、お守りはきれいな紙袋に入れ、感謝をしながらお清めの塩を振りかけてから燃えるゴミと一緒に出せば、罪悪感が減らせます」(石阪さん・以下同)
また、寝室の布団や毛布も見直したい。
「いまの寝具は10年以上前の物と比べて軽量化しています。また、安くて丸洗いできるなど衛生面でも優秀な物が増えています。昔、高値で買った羽毛布団だからといって使い続けていると、ほこりやダニなど体に悪影響を及ぼすこともあります。
10年以上使い続けている布団は思い切って処分し、買い換えるのも手です」
処分する物は自治体指定のゴミの日に出し、とっておく物は次からを参考にして収納しよう。

これどうする?Q&A
【Q】フリマに出すのが面倒です。
【A】「買取アプリ」なら面倒な手間がかからない、とぴょりさんはすすめる。
「使わない物をまとめて段ボール箱に入れ、アプリから買取を発注すれば、宅配業者が段ボールごと持って行ってくれ、後日、買取金がアプリにチャージされます。私は『ポレット』というアプリを利用していますが、買取箱、送料、査定は無料です」(ぴょりさん・以下同)
【Q】実家の片付けはどこから手をつければいいの?
【A】「親の物を勝手に捨てるのはダメ。はたから見てゴミのようでも、当人には思い入れがあるため親子関係にヒビが入ることに。おすすめは、『これちょうだい』ともらって帰る方法。親は気分よく譲ってくれることが多いので、目の前で捨てるより、スムーズに捨て活が進みます」
捨て活が終わったら収納へ
本当に必要な物だけを絞ったら、効率よく収納しよう。ポイントは、詰め込むのではなく、余裕を持たせることだ。
【リビング】収納は最小限にとどめる

家族がくつろぐ場所のため、「収納場所は、最低限にとどめておく」といい。
「収納場所が多いと、それだけ物が増えるので、リビングの収納場所の基本はテレビ台とカラーボックスや引き出しなどをひとつに絞って。
テレビ台の上は、何も置かないか、置いてもリモコンだけがベストです。カラーボックスや引き出しタイプの収納には、使う頻度の高い文具や工具、充電器機などを入れましょう」(ぴょりさん)
【調理器具や食器類】シンプル収納で出しやすく

サイズ違いのフライパンやふた類、ざるなどは、使いやすいように立てる収納が便利だ。
「私はニトリの収縮するフライパンスタンドを使って、引き出しの中にフライパンなどは並べて立てています。
おたまやフライ返し、調理スプーンなどよく使う器具はコンロ近くに置くと作業がスムーズに行えます。
食器は来客用と普段使い用を分けずに、食洗機に入るお気に入りだけに絞って使用。食器の数としまう場所を決めれば子供でも片付けられます」(ぴょりさん)
【冷蔵庫&パントリー】ゆったりと収納し、食品ロスをなくす

いずれも、よく使う調味料や食材のみをストックするというルールを徹底して。
「わが家では凝った料理は作らないので、冷蔵庫には、しょうゆ、ケチャップ、ソース、マヨネーズ、ポン酢など基本的な調味料しか入れていません。また、かさばらないようにサイズを小さめにして使い切るようにしています。冷蔵庫に入れる食材は3割程度にし、在庫確認がしやすいようにしています。パントリーには半透明のボックスを利用してストック用の食品を収納すれば、中身が見えるので食品ロスが減らせます」(ぴょりさん)
【書類、レシート類】スマホアプリでデータ化

レシートや大事な書類は、スマホのカメラで撮影して、データ保存するのがおすすめだ。
「スマホの写真フォルダに保存できますが、おすすめは、スマホアプリの『Googleキープ』。画像だけでなく、スマホにメモをしたことまで保存してくれます。
ノートやメモなどに書いた内容を保存したい場合は、きれいに撮影する必要はなく読める程度に写っていればOKです。画像名をスーパーの名前などにして保存すれば、検索する際にも便利です」(石阪さん)
【クローゼット】ハンガーの本数を決めて管理

衣類はハンガーにかけたまま収納するのが便利だ。
「ハンガーであれば洗濯後もそのままかけて収納できるので、たたむ手間が省けてラク。服は『増えたら減らす』を徹底するためにも、ハンガーの数を1人あたり20本と決め、それ以上増えたらどれか1着は捨てるようにしています。
ハンガーで収納する際は、着た服を右端にかけるというルールにしているので、自然と左側にある服は着ていない服ということになります。新しい服が増えた場合は、左側から処分する対象にしています」(ぴょりさん)
◆整理収納アドバイザー・ぴょりさん
雑な性格でも片付く方法をSNSで発信。著書に『400㎏捨てたら人生まるごと片づいた』(扶桑社)がある。
◆片づけアドバイザー・石阪京子さん
片付けレッスンやオンラインセミナーを開催。著書に『これが最後の片づけ!』(ダイヤモンド社)ほか多数。
取材・文/廉屋友美乃
※女性セブン2025年12月4日号