
ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子(66歳)。ここ数年、愛猫や身内の死を相次いで経験。一昨年は自身の大病で手術、入院をした。それから意識し始めた“終活”。モノを捨てる「捨て活」を始めたのだが、なかなか捨てられず…そんなとき“使える”リサイクルショップを発見――。
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区のリサイクルショップに出品してちょっとした“儲け”
「ああ、年はとりたくないねぇ」なんて年明け早々、口をついて愚痴が出てくる。昨年の秋から重い腰をあげて取り組みだした部屋の片付けというか終活というかだけど、これがなかなかどうして進まないんだわ。それはまあ、始まる前からわかっていたことだけど今年はいきなり気が塞ぐニュースばかり。

せめてもの救いは東京の天気がいいってこと、なんて思えるかって。太平洋側が晴天なら日本海側は大雪だよ。年々、寒さが身に染みるような年になる冬型の天気図を見ただけで感情崩壊。突然、ボロボロと涙があふれてくる。東京の力のないオババが泣いたところでなんの役にも立たないのは百も承知なんだけどね。
こんなブルーな気分で始まった2024年。重い腰をあげて千代田区のリサイクルセンター鎌倉橋にあるリサイクルショップで出品したの。というのも昨年11月にベロアのショートブーツを2足(ほぼ新品)と、メルカリで買った使いかけのブルガリの香水についてきた小瓶5個をそれぞれ1000円で。それと使わなくなったポリエステルのスカーフを200円で売って5200円になったのよ。その売り上げを取りに行きがてら、今度も出品しようとトランクルームを総点検したわけ。
片付けのためにビニール袋を3つ用意
私が住むマンションには住民が月5000円で借りられる2畳ほどの倉庫があって高さは天井まで2m50cmはある。片付けられない女の私にとってこの収納力がいいんだか、悪いんだか。とにかく部屋を片付けようとやる気を出した5分後にはトランクルームのドアを開けることになる。

片付けのプロは必ずいうよね。「片付けは納戸、押し入れから始めましょう」って。「モノ隠しに使ってはいけません」と。その言葉を今年こそ肝に銘じようと思い、ゴミ捨て用のビニール袋を三枚用意した私。一枚はゴミ用。もう一枚は売り物用。最後の一枚は未決断用。あ、その最後の一枚、余計じゃね? と思った? この一枚が片付けの命取りと思ったでしょ?
うふふ。あのね。確かにこの前まではそうよ。「とりあえずとっとこう」と曖昧さが今日の物だらけの部屋を作ったと言われたら仰る通り! でも「売りものを探す」という目で自分の荷物を見ると、あら不思議。しかも私はこれから3200円という売り上げを手にしようとしているのよ。
不要品を出品する際の2つのコツ
現金ってすごいよね。「捨てられるものはないか」という目でトランクルームの中を見ると「とりあえずとっておこう」としか思えなかったのに、欲に駆られたらあるわあるわ。
出品するにあたって大事なことは2つあってひとつは売り物になるかどうか。2つ目はいくらなら売れるかよ。その参考になってるのが、最近片付けを始めたという拙著『で、やせたの?』の担当編集者・アヤヤの出品話なの。彼女は近所のリサイクル店に洋服を持っていったら10円とか5円という値づけをされたっていうの。

「ハイブランドではないけれど一着一万円以上した服よ。しかも数年前の服でデザインもそんなに古くなっていないのよ。あまりの安さにいったんは売るのやめようとしたけれど、持って帰ることを考えたらもういいやと思っちゃって」
結局、ただ同然で置いてきたんだって。そうか、そうか。民間の業者だと在庫を抱えるにもお金がかかるからなぁ。
私が出品している千代田区のリサイクルショップは値付けは自分でできるけれどその代わり期限内に売れないと引き取ることになるし、再出品もできない。「千代田区に在住、在勤」「1か月10点まで」「販売価格が1万円を超えるものはダメ」とかいろいろ条件はあるけれど、5点までならまとめて200円の出品保管料で売上金は全額出品者に還付される。今どきここまで条件のいいリサイクルショップは珍しいんじゃないかしら。

アヤヤの体験を肝に銘じて新品のジーンズが2本と未使用のリュック。アヤヤから回ってきたブーツ2足。手作りのポーチ付きバックとゴルフボール一箱。それぞれ1000円で出したの。あと捨てきれなかったニットのベストは300円とか。などなどでもし完売したら9500円なり! うふふ。もしそうなったら最近はノンアルコールで誤魔化しているけれど、思い切って本物のビールで祝杯をあげちゃおうかしら。
「ガラクタ置いていった」と言われないように
それにしても話は変わるけれど東京の変化ってすごいね。私の住む神田はまだ昭和の建物が残っていると、ぶらぶら散歩するたびに楽しかったけれど、それが次々にとり壊されていっている。
ハッとしたのは1月3日の箱根駅伝の待ち時間、日本橋の本屋、丸善の3階から見たら沿道に並んでいる人に若者がいないのよ。よく目を凝らしたらボチボチ混じってはいるんだけど圧倒的に中高年。

「それは日本橋だからじゃない?」と言ったのは六本木ヒルズで待ち合わせした73歳のBF(ボーイフレンド)だ。そう言われてみると六本木ヒルズは若者がほとんどで中高年は2、3割しかいない。
この若者たちが多数派になるころに私はこの世から退場するんだよね。その前に自分のチカラで片付けられるものは片付けたいと切に思う。「ガラクタだけ置いていった」なんて汚名を着せられたらかなわないもの。
◆ライター・オバ記者(野原広子)

1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。
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