
「さぁ、今から“命懸け”のダンス大会が開幕しますよ!」──開会宣言が響き渡ると、会場はただならぬ熱気に包まれた。
11月22日に都内で行われた『FIDA GOLD CUP 2025』。一般社団法人日本国際ダンス連盟(FIDA JAPAN)が主催する日本で唯一の“シニア世代が競い合うダンス大会”で、出場資格は60歳以上。GOLDにはGood OLD(古きよき/よい形で年を重ねている)が込められている。大会には、冒頭の開会宣言を行った厚生労働省 特別健康対策監の杉良太郎が「ダンスを通じて日本のシニアをもっと力強く、日本をさらに元気に」と旗揚げした「ダンス健康クラブ」に登録するチームが参加する。47都道府県すべてにチームを作ることを目指し、現在は22都道府県35チームが活動している。
2022年にGOLD世代4チームからスタートし、第4回目となる今大会では、17チームが出場するまでに。245名のダンサーが集結し、ウォーミングアップのダンスチャレンジ企画から“今年はこれまでと違う”と期待させるエナジーをみなぎらせた。今企画は、体を動かすことによる健康の維持、増進の重要性への意識向上を促し、ダンスによる健康づくりを推進している厚生労働省「健康一番プロジェクト」とコラボした特別プログラム。
厚生労働省「知って、肝炎プロジェクト」スペシャルサポーターのEXILE MAKIDAIの指導で、出場チームから選抜された80代4名とリモートで参加した101才のダンサーが『Choo Choo TRAIN』を踊った。客席のGOLDダンサーも総立ちになって一緒にステップを踏んだが、恥ずかしがって立ち上がれなかったり、動きが小さくなってしまったりする人はいない。壇上のチームメイトに声援を送りながら堂々とカラダを動かし、会場を揺らした。
大会は昨年の覇者・埼玉『ケロッグ・ダンディーズ』からスタート。優勝経験者らしい表現力の高さで、大会に勢いをつけた。続く青森『YDK65』も第2回大会の覇者。昨年からフットワークの強化が見られたが、今年はさらにパワーアップし、審査員が、思わず「膝が心配になる」ほど躍動感あふれるニュージャックスイングでフロアをわかせた。
また、驚くべきは衣装の変化。シャイな青森の県民性からこれまでは単色のシンプルな衣装だったが、今年はまばゆいレインボーカラーのセットアップに身を包み、トレードマークの黒いハットにもキラキラのストーンが散りばめられていた。メンバーは「毎年、進化している気持ちで楽しんでいて、今までと違った派手な衣装にも挑戦しました」と声を弾ませ、杉が語る「ステージで観衆に見られることで、人は生き生きと輝く」を体現していた。
他にも、常連組の進化が目立つ大会だった。昨年大会3位の埼玉『GOLD DRAGON』は西遊記をテーマに、京劇のような装いで絢爛なステージを披露。審査員が「“GOLD DRAGON”というジャンルを築き上げていらっしゃる。ショーを観にきた気分で、ダンスコンテストであることを忘れました」と絶賛したが、群舞もこの4年間で格段にレベルアップを見せた。
シニア世代が身体的にも精神的にも健康でいることを願って杉が創設したダンス大会も、回を重ね、ジャンルが大きく広がった。米・アリゾナ州のシニアチアリーディングチームをモデルに発足した日本初のシニアのチアダンスチーム・東京『ジャパンポンポン』が初出場し、ミニスカートの美しいラインダンスで魅了。手話の聖地・鳥取から参戦した『YURU-GOLD』は、エネルギッシュなダンスに手話を採り入れた。
広島『UNLIMITED』は被爆・終戦80年の特別な節目に開催された今大会で、ダンスを通じて平和への想い、ポジティブさを発信した。万国旗をあしらった衣装で登場し、ラストでジャケットやベストを脱ぐと、メンバーの背中に1文字ずつ刻まれた「ノーモアヒロシマ」のメッセージが出現。メンバーのひとりは、「私は被爆2世で、母が被爆しております。広島は平和運動が盛んな土地ですが、(全国的には)なかなか愛や平和のメッセージをお届けする機会もなく、今日のステージへ込めました」と明かし、皆で「広島からやってきて、ぶち楽しかった!」と笑顔を見せた。