健康・医療

《ペットボトル飲料「マイクロプラスチック」のリスク》“アイス”より“ホット”の方が混入の可能性が高い理由 自衛のためには「マイボトル」の活用も

マイクロプラスチックが混入しやすい飲み物がある(写真/PIXTA)
写真3枚

 のどが渇いたと思ったら自動販売機やコンビニなどですぐに買えるペットボトル飲料。たしかに便利であると助かるが、最新研究ではペットボトル飲料がもたらすリスクも指摘されている。有害物質および環境科学分野で権威あるオランダの学術雑誌『ハザーダスマテリアルズ』に掲載された論文によると、「日常的にペットボトル飲料を飲む人は、水道水を飲む人に比べて年間約9万個も多くのマイクロプラスチックを摂取している」ことが明らかになった。マイクロプラスチックは、体内に入り込むと心臓発作や脳卒中、子宮内膜症、認知症、自己免疫疾患、がんなど深刻な病を引き起こすリスクが指摘されているのだ。さらに別の研究によると、マイクロプラスチックの混入しやすい飲み物もあるという。どういうことなのか──。【前後編の後編。前編から読む

熱が加わると放出されやすくなる

 今秋、イギリスのバーミンガム大学からも衝撃の研究結果が発表された。

 9月20日、学術雑誌に掲載された論文によると、ペットボトルや紙、ガラスで提供された飲み物も含めてマイクロプラスチックを調べたところ、紅茶やコーヒーなど、温かい飲み物と冷たい飲み物の両方にマイクロプラスチックの混入が判明。研究の中でその平均濃度がもっとも高かったのはホットティーでアイスティーの約2倍、次がホットコーヒーだった。なぜこのような結果になったのか。環境脳神経科学情報センター副代表で、医学博士の木村—黒田純子さんはこう語る。

「ティーバッグにはプラスチック製品が広く使われており、そこから多くのMNP(ナノプラスチックとマイクロプラスチックを併せた総称)が放出されたのではないかと考えられます。

 ホットコーヒーのMNPは、紙コップのプラスチックコーティングやコーヒーメーカーのプラスチック部分から放出された可能性があります」(木村—黒田さん・以下同)

 これからの寒い季節、温かいペットボトル飲料を飲む機会も増えるだろう。だが、木村—黒田さんは警鐘を鳴らす。

「プラスチックはもともと化学結合が緩く、熱が加えられるとマイクロプラスチックが放出されやすくなる。さらに日本で売られるホットタイプのペットボトルの素材は、冷たい飲料用のペットボトルより耐熱性をもたせるため、より添加剤が多い可能性があります」

炭酸飲料やホットドリンクがペットボトル内のMNPの量を増やすと指摘される(写真/PIXTA)
写真3枚

 熱によるプラスチックの劣化に加え、添加剤が溶け出すリスクも高まるのだ。マイクロプラスチックに詳しい東京農工大学名誉教授の高田秀重さんは、ホット飲料のさらなるリスクを指摘する。

「ペットボトルのキャップ部分には多くの添加剤が使われています。キャップがペットボトル内の熱い飲み物と接触すると、添加剤が溶け出すリスクが増す。

 自販機内は横置きで保管されているようなので接触しやすい。避けるのがベターでしょう」

 飲料中のMNP含有量を増加させる要因はまだある。

「炭酸飲料はボトルに加圧の負荷がかかるため、よりMNPを放出しやすいと考えられます。酸性度もPET表面の加水分解を進め、MNPの放出を促すでしょう。長期保管によるペットボトルの劣化も要因になりうる」(木村—黒田さん)

 高田さんも指摘する。

「紫外線もペットボトルを劣化させます。日光に当たると紫外線と熱の影響で、飲料のMNP濃度を高めることにつながります」

 炭酸の圧力や酸味のあるジュース、長期保管、そして紫外線──これらすべてが、ペットボトル内部でのMNP発生を加速させるのだ。

ステンレス製のマイボトルを使用する

 目に見えず、恐ろしい病気の原因となるかもしれないMNP。手に入る飲み物の多くがペットボトル飲料のいま、私たちはどう自分や家族の身を守ればいいのか。木村—黒田さんは「マイボトル」をすすめる。

「塗装や蓋、パッキンなども含め、できるだけプラスチックを使わないステンレス製のボトルがいいでしょう。ただしフッ素加工のものは避けるべきです」

 外出時は、自宅から安全な容器で飲み物を持参するのがベスト。中に入れる水はどうすればいいのか。

「残念ながら、日本の水道水からも『永遠の化学物質』と呼ばれ健康を脅かすPFAS(ピーファス)や、残留農薬などが検出されることがあります。政府の定めた安全基準内であっても健康被害を考えると、できるだけ避けたい。また、MNPが含まれることも珍しくないため、高性能の浄水器を付けてろ過した水を摂ることをすすめます。EUや国連レベルの国際会議ではガラスボトルに入った水が提供されるのが常識。いまだにペットボトルを出す日本は、かなり遅れています」(木村—黒田さん)

 自宅でのコーヒーブレークにも注意が必要だ。科学ジャーナリストの植田武智さんこう語る。

「家でコーヒーを飲むときはプラスチックのフィルターではなく、紙製のろ紙でいれた方がMNPを遠ざけられる。紅茶派はステンレス製の茶こしを使いましょう」(植田さん)

 日本では1996年まで環境保護やゴミ問題の観点から、1L以下の小型ペットボトルの生産が飲料業界によって自主規制されていた。その規制解除から約30年、私たちの生活はペットボトルに囲まれ、利便性は向上した。その一方で、目に見えない脅威を自らの手で増やし続けてきたといえるかもしれない。

 自分や家族の健康を守るため、そして未来の環境のために、今日から「脱・ペットボトル」生活を始めてみてはいかがだろうか。

ペットボトル以外にもある「マイクロプラスチック」のリスク
写真3枚

(前編から読む)

女性セブン20251218日号

関連キーワード