健康・医療

《最高の眠りを手に入れる「睡眠ルール」》早寝早起きにこだわらず、自分に合ったリズムを選ぶことが重要 最適環境は室温22〜24℃、布団の中33〜34℃

寝ている女性
“質の悪い睡眠”は、健康寿命に大きな影響を及ぼしている(写真/PIXTA)
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 夜になっても気温が下がらず、寝苦しい季節がやってきた。寝つきは悪いしぐっすり眠れず、翌朝起きると体がだるい……そうした“質の悪い睡眠”は、その日の体調だけでなく、健康寿命にも大きな影響を及ぼしている。極上の睡眠を実現するための最新メソッドを取材した。【前後編の前編】

 よく眠れなかった次の日は、自覚できるほど、体も脳も一日中すっきりしない──日々の生活を送る上で、睡眠がどれだけ重要な役割を担っているか、ちぐさ内科クリニック覚王山院長の近藤千種さんが話す。

「睡眠は単に体を休ませる時間ではなく、1日の活動で生じたダメージを修復し、翌日に向けて全身を整えるメンテナンスの時間です。血圧や血糖値、ホルモンの調整、免疫機能の維持、筋肉や皮膚など傷ついた組織の回復、さらには脳が得た情報を整理して記憶を定着させる働きもしています。眠っている間にも、体内では多くの重要な機能が役目を果たしているのです」

睡眠量が健康寿命を左右する

 睡眠がもたらす健康への効果について、近藤さんがまず挙げるのが、「体の機能を守る」働きだ。 

「睡眠時は日中の活動で高まっていた交感神経の活動が落ち着いて、血圧や心拍数が低下することによって心臓や血管を休ませることができます。免疫細胞機能の働きも調整されるため、よく眠ることは免疫機能の維持にも役立ちます。

 逆に睡眠不足が続くと血圧が下がりにくくなり、心筋梗塞や脳卒中などの発症リスクが高まります」(近藤さん)

 睡眠不足だと風邪や感染症にかかりやすくなるだけでなく、ワクチン接種後の抗体産生が低下することも報告されている。

 睡眠は「生活習慣病やがんとも深い関係がある」と話すのは、久留米大学理事長で医学博士の内村直尚さんだ。

「睡眠が不足すると満腹を感じるレプチンというホルモンが低下し、グレリンという空腹を感じるホルモンが増えます。結果として食べすぎると肥満を招き、高血圧や糖尿病などの生活習慣病になりやすくなり、そこから心筋梗塞や脳血管障害のリスクが高まってしまう。最近では睡眠不足によってがんの発症率が増加することも明らかになり、女性では乳がん、男性では前立腺がんの発症率が高まると報告されています」(内村さん・以下同)

健康寿命を延ばす睡眠ルール
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 体だけでなく、脳への影響も大きい。

「起きている間、脳内にはアミロイドβという異常たんぱく質が蓄積していきます。アミロイドβはアルツハイマー型認知症の原因物質とされていますが、人間の体は眠っている間に脳脊髄液からアミロイドβを排出している。

 つまり睡眠不足になるとアミロイドβがどんどん蓄積されてしまい、アルツハイマー型認知症になりやすいとされています」

 睡眠がきちんととれていないと、健康寿命を短くすることになるのだ。

 では最高の眠りを手に入れるための「睡眠ルール」とはなにか。

 厚労省は2024年に「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を発表し、「日常的に質・量ともに十分な睡眠を確保し、心身の健康を保持」する方向性を打ち出した。その内容を内村さんが解説する。

「この指針では20〜60才を『成人』とし、成人が健康寿命を延ばすためにとるべき睡眠時間は6〜9時間としている。“個人差がある”としつつも、少なくとも『6時間以上』の睡眠をとらないと死亡リスクが高まると発表されています」

 一方、「60才以上」では「床上時間が8時間以上にならないこと」が推奨されている。

「60才以上の人が8時間以上床につくと、死亡リスクが高まることがさまざまな研究で明らかになっています。睡眠時間は年齢とともに短くなっていくのが自然で、60才以上で仕事の第一線から離れたようなかたの睡眠時間は平均6時間程度。8時間以上床につくと眠りに落ちていない時間が増えて、かえって睡眠の質が低下します」

 では、入眠のタイミングに理想はあるのか。長らく、夜10時〜深夜2時が美容にいい「ゴールデンタイム」とされてきたが、近藤さんは「近年、ゴールデンタイムには科学的根拠がないと指摘されています」と話す。

「成長ホルモンは時計の時刻に合わせて分泌されるのではなく、眠り始めてから最初の“睡眠の深いとき”に多く分泌されます。大切なのは毎日規則正しく、ある程度同じリズムで寝て、自分に必要な睡眠時間を確保すること。体内時計を整えると質のよい睡眠につながります」(近藤さん・以下同)

 では、自分の睡眠状態を客観的に知るにはどうすべきか。近藤さんが推奨するのが「睡眠日誌」だ。

「記録する内容は、寝た時間、起きた時間、夜中に起きた回数、しっかり眠れた感じがするかどうかの『朝の休養感』、日中眠気なく過ごせたかなど。

 1、2週間続けることで、自分に合った睡眠時間が見えてくると思います。何時間寝たかに一喜一憂せず、朝すっきり起きられて、日中眠くならない睡眠時間を重視しましょう」