
すべて想像の逆を行く男、高須克弥の破天荒な人生を描く連載『YES!逆張り人生~高須克弥物語~』! 読めば悩みが全て吹き飛ぶ、そんなパワフルすぎる人生を、どうぞご堪能あれ。
第18話:形成外科学会を除名された話【後編】
「お父さん、何をするの? チャッキーが可哀想じゃない!」
シヅが怒る。どうやらこの犬はチャッキーという名前らしい。
「犬と一緒に飯を食うなんておかしいだろ」
克弥が怒鳴ると、シヅと子供たちが一斉に批難した。
「お父さん、チャッキーとエリは家族でしょ!」
「家族が一緒にご飯食べるのは当然だよ」
──もう一匹はエリというのか。なんとも品性下劣な顔の犬だな。
子供たちの価値観も克弥とは大きくかけ離れた教育をされているようだ。
それもそのはず、シヅは子供たちに「決してお父さんのようになってはいけない」という教育方針を徹底していたのだ。
「お前ら、目を覚ませ! こいつらは犬だ」
「犬じゃない! 家族よ!」
聞けばこれらの犬はシヅが保健所から殺処分寸前のものを引き取ってきたという。実に心優しい話だが、克弥には理解できない。
リビングを見回すと、壁に穴が開いている。「これも犬が開けたのか?」と聞くと、家族全員が下を向いた。
その夜、次男と話をすることで克弥は穴の真相を知った。
「僕が悪いことをした時に、恐ろしい思いをしたんだ……」
次男が言うには、シヅに海に連れて行かれて、「一緒に死のう」と言われたという。「死ぬのは嫌だ」と抵抗すると、「悪いことは二度としないと誓わない限り、生きていくことはできない」と次男の手を引き、シヅはどんどん海に入って行ったというのだ。あのお嬢様だったシヅからは想像もつかない、トラウマ級の教育法である。
「てことは、あの壁も?」
「うん。お母さんがパンチで開けた」
──シヅさんには逆らってはいけない。
克弥は自分の経験を息子に話して聞かせることで、ほんの少しだけ父子の絆を深めた。
* * *
克弥が美容業界で覇権を握った頃、祖母イマが亡くなった。94歳だった。

──人の逆を行き、常に先駆者たれ。
こう教え続けた祖母は、克弥が逆張りで一番になる姿を見届けてからこの世を去った。晩年は克弥にこう言い続けたという。
「克弥、医は仁術じゃ」
「うん。分かった」
「克弥、医は仁術」
「うん。そうだね。分かったよ」
「克弥、医は……」
「仁術だろ! 分かったよ!」
貧乏な患者からは診察料を取らなかったイマらしい最後の言葉だった。高須克弥、42歳。文春砲を食らう3年前の話である。(第19話につづく)
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【プロフィール】
家守鷹主(いえす・たかす)/テレビ局プロデューサーとして高須克弥氏と出会い、十数年来の友人。今回、その人生を小説として描きたいと依頼したところ、高須氏は一言“YES”と快諾し、ペンネームも命名。かくして、希代の人生物語が幕を開けた。
高須克弥(たかす・かつや)/1945年、愛知県生まれ。医師(美容外科、整形外科、形成外科。学位は医学博士)。2018年に自身の全身がんを公表(発病は2014年)。
※女性セブン2026年10月29日・11月5日号