
2003年に日本で放送が始まった「冬のソナタ」をきっかけに広がった韓流ブームは、20年以上を経たいまも衰えを見せない。字幕なしで作品を味わいたい、推しに韓国語で想いを伝えたい――。そう思いながらも「もういい年だし、今から語学なんて」と諦めた人は少なくないだろう。だが、京都大学で言語学などを学び、現在は韓国語のオンラインスクール「K-PRO」を運営する韓国人講師のユン・スンジュンさん(30才)は「50代以上の方には、若い人にはない語学学習の有利さがある」と話す。
■スクールの受講生は9割が女性、最多は50代
韓国は、日本人にとってすっかり身近な外国になった。韓国観光公社によれば、2025年に韓国を訪れた日本人は365万人。前年比13.3%増で、13年ぶりに過去最高を更新した。語学学習アプリ「Duolingo」のレポートでも、日本で学ばれている言語は2021年以降、英語に次ぐ2位を韓国語が占め続けている。
実際に学んでいるのはどんな人たちなのか。スンジュンさんに、自身のスクールの様子を聞いた。
「うちの受講生は40代以上が9割ほどで、一番多いのが50代。男女比は女性が9割以上です。始めたきっかけは、ほとんどが推し活。あとは韓国ドラマが好きで、という方ですね。推しはBTSなど王道のアイドルから、俳優のパク・ボゴムさんまで様々。入り口になるドラマも『愛の不時着』や『梨泰院クラス』といった有名作品が多いです」
とはいえ、50代から始めて本当に話せるようになるのか。「ネイティブレベルを目指すなら、やはり10代から始めたほうが有利」とスンジュンさんも認める。ただ、50代にはそれを補う条件が揃いやすいのだそうだ。
「語学学習で大切なのは、時間の確保とモチベーションの管理です。バリバリ働いている50代の方もいますが、人によっては自分の時間が増えてくる年代でもある。10代、20代は勉強や仕事で忙しく、推し活をしたくても現実にはなかなか没頭できない方も多い。若い人との脳機能の差よりも、学習時間を確保できることのほうが大きいと思います。『好き』という気持ちを、そのまま学ぶ原動力にしやすいのも強みですね」
気になるのは記憶力だ。人の名前が出てこない、昨日の夕飯が思い出せない――50代ともなれば、そんな場面も増えてくる。
「脳の処理速度や判断の速さ、短期記憶などは、どうしても加齢とともに落ちてきます。ただ、脳には可塑性、つまり使い方に応じて形を変えていく柔軟さがあることが、研究でわかっています。訓練次第で、衰えた働きをある程度取り戻せる可能性があるんです。しかも言語能力は比較的維持されやすく、語彙や知識といった『結晶性知能』は年を重ねても落ちにくいとされています。最初は時間がかかるかもしれませんが、単語を覚える力に関しては、若い頃とそこまで大きな差はないと考えています」