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自分や家族に介護が必要になったら…介護に関する社会保障、さまざまな手当の基本

人生100年時代。厚生労働省の発表によると、2019年日本人の平均寿命は女性87.45歳、男性81.41歳となり、男女ともに過去最高を更新しました。

介護している様子
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超高齢化社会に突入し、介護と仕事を両立する人も増える一方、介護離職なども社会問題となっています。いざというときに慌てないためにも、支援制度はおさえておきたいもの。

今回は、介護にまつわる支援制度を、特定社会保険労務士の小泉正典さんの監修のもと紹介します。

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家族が寝たきりになってしまったら…「介護保険」

【質問】母親の介護が必要になってしまいました。介護保険に入っていればサービスを受けられると聞きましたが、そもそもどういう制度なのでしょうか(56歳・主婦)

【回答】介護保険とは2000年に作られた制度で、介護が必要になったときに困らないよう、社会全体で支えていくものです。要件に当てはまれば、介護サービスを受けることができます。

●介護をサポートしてくれる「介護保険」

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40歳以上の国民は介護保険への加入が義務付けられており、保険料は所得金額やお住まいの自治体によって異なります。介護保険を利用できるのは、原則として65歳以上。保険の加入者は、介護認定を受けることで介護サービスを1~3割の自己負担で受けることができます。また、末期がんや関節リウマチなどの特定疾病であれば、40~64歳であっても介護サービスを利用することが可能です。

→介護保険制度について|厚生労働省

●介護サービスを受けるには?

介護サービスを受けるにはお住まいの市区町村から、介護の必要度合いや内容を決める「要介護認定」を受ける必要があります。介護が必要なレベルは、「要支援1~要支援2」、「要介護1~5」の7段階に分けられます。

「要支援」か「要介護」のどちらに認定されるかによって、介護サービスの内容が異なります。介護認定を受けると、訪問介護やデイケア、ショートステイなどのサービスを受けることができます。また、要介護3以上の場合は、特別養護老人ホームなどでの施設介護サービスも利用できます。

介護レベルによって個人負担額も変わってきます。例えば、「要支援1」の在宅(居宅)サービス限度額は月額約5万320円、「要介護5」の限度額は月額約36万2170円。限度額を超えた分のサービス利用は自己負担となります

自宅で介護をしていると1人で悩んでしまいがちですが、困ったら家族や友人、自治体に助けを求めることが大事です。

→要介護認定について |厚生労働省

車いすと女性
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【ポイント】

・介護サービスはすぐに受けることができないので、早めに市区町村の窓口に申請しましょう。

・要介護認定を受けるには、かかりつけ医による意見書が必要になります。

・介護サービスを受けるにはケアマネジャーとケアプラン、あるいは介護予防ケアプランの作成が必要ですが、作成費用の自己負担はありません。(なお、ケアプランは自分で作成することも可能です)

自宅で介護している場合は「高齢者福祉手当」や「老人介護手当」

【質問】同居している母親が認知症で足腰も弱ってしまいました。要介護認定を受けて介護サービスを利用していますが、なんだかんだとお金がかかり、家計が苦しいです。何か利用できる制度はないのでしょうか?(52歳・会社員)

【回答】介護にまつわる支援制度は介護保険だけではありません。生活費や介護費を補助する「高齢者福祉手当」や「老人介護手当」があります。

●介護対象者本人に支給される「高齢者福祉手当」

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自治体によって正式名称や支給条件は異なりますが、「高齢者福祉手当」は寝たきりの高齢者本人に対する自治体の支援制度です。基本的には、寝たきり、あるいは認知症で日常生活を送ることが困難な65歳以上の本人が対象となる場合が多いようです。

支給額は月額数千円~1万円程度。例えば、茨城県下妻市には「ねたきり老人等福祉手当」制度があり、65歳以上および40歳以上65歳未満の在宅で要介護認定を受けている人を対象に、月額3000円を支給しています。

●家族を支援する「老人介護手当」

自治体によっては、介護している家族をサポートする「老人介護手当」がもらえることもあります。自治体によって名称や支給額、適用条件も異なるので、まずはお住まいの市区町村に問い合わせてみてください。要介護の段階や住民税の課税の有無、介護保険サービスの利用状況などに条件があり、支給額は月額3000~1万5000円程度です。

→介護・高齢者福祉について |厚生労働省

【ポイント】

・大きく分けて、要介護者本人が受けられる手当と家族が受けられる手当の2種類があります。

・他にも「紙おむつ配布」など、独自のサポートをしている自治体もあります。

・要介護者が介護保険サービスを利用しているときや、施設に入居した場合には、手当の対象外となることがあります。

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