定年退職後は夫婦の時間が増えるもの。ですが、夫が無趣味でずっと家にいたら…。いろんな問題が出てきそうですよね。そこで、ベストセラー『夫のトリセツ』(講談社)の著者で脳科学・人工知能(AI)研究者の黒川伊保子さんが、無趣味な夫にイライラしてしまうというかたにアドバイス。どんな夫婦にも応用が効く、夫婦の関係性を円滑にするコツを教えてくれました。
【相談】
夫は無趣味で休日もずっと家にいます。コロナ禍の現在はそれでもよいのですが、通常時もずっと家にいられるとなんとなくイライラ。一緒に出かけようと誘っても「出かけたくない」と言います。私は友人と会うなど出かけることもありますが、夫がずっと家にいると思うと、なんとなく気が引けます。こんな出不精の夫をアクティブにする方法はありますか。(48歳・専業主婦)
* * *
男性脳はゴール指向型、目標なしでは動けない?
この質問には、2つの論点が混ざってますね。
問題は、「夫と一緒に出かけたいのに、出かけられない」ことなのか、「夫が家にいると、気が引けて出かけにくいから、やめてほしい」ことなのか。そのどちらなのでしょう。
それぞれにお答えしようと思います。
無趣味の夫。そのまま定年退職されてしまうと、時間を持て余す夫を持て余してしまうことになり、危険です。趣味も仕事もない在宅夫は、食べることだけが「次のゴール」なので、朝から「昼ご飯、何?」なんて聞いてきて、相当ウザいからです。
男性脳は、基本、目標(ゴール)がないと、脳がうまく動かせません。「目標を定めて、そこに向けてどうしていくか」という思考スタイルなのです。会話でも「何の話だ?」「結論から言えないのか」なんて言うでしょう?
女性は無意識のうちに気持ちを語ることから始める
一方、私たち女性は、無意識のうちに、気持ちを語ることから始めたりします。例えば、姑の7回忌の話をしようとして、つい「お父さんの3回忌のとき、お食事がいまいちだったわね。茶碗蒸しが冷たくて…あれ、がっかりしたなぁ」とか、「喪服入るかなぁ。しばらく着てないし」なんて会話から入ることも。夫が「そうだったね」とか、「しばらく着てなくて、幸いだよな」なんて受け止めてくれれば、「そうそう、お母さんの7回忌だけどね」と本題に入ります。
ところが、男性脳は目的のない話をスルーしてしまうので、たいていは生返事。「聞いてるの?」なんて責められて、イラッとしながら「これって、何の話?」「結論から言えないのか」なんて返してきます。
大半の男性脳は、「お母さんの7回忌だけど、どうする?」というふうに、対話の目的から入らないと、脳がうまく回りません。母の7回忌の相談だと分かっていれば、料理の話も喪服の話もちゃんとキャッチできるのに、「妻の気持ちの垂れ流し」だと思っていると、情報がどんどんこぼれて、脳内にキープできないのです。
男性脳の「おしゃべりに使うワーク領域」は、女性脳の数十分の一と言われています。料理や思い出話にひとしきり花を咲かせたあと、「ところで」と切り返して、一気に結論へ向かうなんていう離れ業は、男性にはとても難しいことなのです。
男性は日々の暮らしにもゴールが必要
会社に行って、責務を果たし、家に帰ってくる。その判で押したような繰り返しも、男性脳にとっては、それほど悪いものではありません。定番のゴールを毎日毎日クリアしていく暮らし。ときに失敗があっても、成果の手ごたえがあり、徐々にでも地位が上がっていき、成果(収入)で家族を食べさせているという自負がある。
そのうえ、妻に感謝でもされれば、ゴール指向型の男性脳にとっては、ゲームに興じているようなものなのでしょう。頑張れば、パワーとポイントが上がり、お姫様に優しくされるのと同じだから。
定年退職すれば、その大いなるゲームが終了します。
趣味のない男性脳は、目標を求めて、家庭内に目を向けることに。妻の家事の「タスク見直し」をして、「これは効率が悪い」なんて小言を言いだす夫もいるはず。そして、妻が完璧な主婦だったりすると、やることがない男性脳は、「ご飯」を目標にするしかなくなってしまうわけ。で、やっと朝の片付けが終わったところに、「昼飯はなんだ?」とか聞いてくるのです。
というわけで、無趣味夫は、めちゃウザい。