
年齢とともに白髪やボリューム、ハリやコシなど、髪が衰えていくもの。ケアをしているのに、なかなか改善しないと悩んでいませんか?「いろいろな方法を試してみても、まったく効果が出ない理由は、やり方が間違っているからです」と管理理容師・理容師・ヘッドスパ経営者の辻敦哉さんは指摘します。そこで、正しいケアの方法について、医師のコッツフォード良枝さんが監修した辻さんの著書『「髪が増えるしくみ」から考案 頭皮が蘇るすごいマッサージ』(アスコム)に掲載のマッサージ法を紹介します。
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正しい育毛ケアは“頭皮のみ”ではNG
辻さんが5000人以上の髪の悩みを解決して気づいたことは、「育毛ケアをしている」と話す人の多くが、頭皮ケアのみをしているということだそうです。しかし、髪によい変化をもたらすには、頭皮だけでなく、頭へとつながる肩、胸、首の血の巡りが重要だと、辻さんはいいます。
「淀んだ川を清掃するとき、川下から掃除を始めないと淀みが流れていかないのと同じで、頭皮だけをケアしても頭皮の血流不足は改善されないからです。血液の巡りが悪ければ、栄養も行き渡りません。
そこで、3つのステップで“老廃物”を流し、頭皮をベストコンデイションに戻す『辻式育毛マッサージ』を考案しました」
髪がよみがえる?「辻式育毛マッサージ」の3STEP
毛が生える周期の関係もあり、髪の変化が表れるまでには少し時間がかかるものの、血流が改善されることで、うれしい変化が起こるのだそうです。辻さんが考案した「辻式育毛マッサージ」をすると、黒く美しい髪が増えるだけでなく、血の巡りが改善されることで顔がリフトアップして印象が変わり、体調もよくなるといいます。
「自宅でセルフでできて、かかる費用はゼロです。簡単な3つのSTEPでできますので、まずは試してみてくださいね。早い人だと、2週間ほどで効果を実感できます」
STEP1:肩と胸に溜まった“疲労物質”を流す「大胸筋ほぐし」
「絡まった髪をとかしてもほぐれにくいのと同様に、頭皮の血流も滞りを起こしている肩周りをほぐさないと、改善しにくいものです。まずは、肩と胸の筋肉を緩めましょう」

【1】人差し指と中指で鎖骨を挟むように手をあて、指をぐっと押し込みます。両腕を前方に1分間回しましょう。このとき、肩甲骨から腕を動かすイメージで行います。同様に、後方にも1分間回します。

【2】右胸の鎖骨から指3本分下の位置に左手の親指をあて、後方にぐっと押し開くイメージで胸の中心から外側に向かって、らせんを描きながら1分間マッサージします。親指で押すと痛い場合は、4指でさすってもOKです。反対側も同様に行いましょう。
STEP2:首周りをゆるめる「胸鎖乳突筋・僧帽筋ほぐし」
「頭部を木に例えると、胸部は養分を取り込む根にあたります。次は、幹にあたる首を緩めて血流を改善し、葉=髪の隅々まで栄養を届けましょう。頭の重さを利用して、ゆっくりと首をストレッチしてください」

【1】両手は体の横に下ろしたまま、頭を前に倒し、そのまま時計回りに1周します。頭が前にもどったら、反時計回りにもう1周。手を使って伸ばしたり、ポキポキと音を鳴らしたりせずに、頭の重さを使ってゆっくりと首の筋を伸ばすイメージでストレッチしましょう。目安は1周30秒です。

【2】テーブルに右ひじをつき、右の首と頭蓋骨の付け根に左手の親指をあて、頭の重みを利用して富士山ラインのくぼみに沿ってマッサージをしましょう。滞った“疲労物質”を押し流すイメージで、痛気持ちいいくらいの強さで押します。1分間マッサージしたら、左側も同様に行いましょう。
STEP3:血流や毛穴を改善する「側頭筋ほぐし・前頭筋もどし」
「最後に、頭皮をほぐします。草木が豊かに実るようにと耕す田畑と同じく、頭皮もやわらかい状態が理想的です。頭皮は引っ張られていると毛穴が小さくなり、血流も悪くなって、白髪や薄毛の原因となることがあります。マッサージで改善し、豊かで美しい髪を育てましょう」

【1】テーブルに両ひじをつき、頭の重さを利用して力をかけ、もみあげとメガネのツルが交差するライン(奥歯を噛むとふくらむ位置)から、眉尻までの側頭筋を30秒ほど、円を描くようにマッサージしましょう。次に、こめかみから前髪の生え際に親指の付け根をあて、前頭筋を30秒ゆっくりと押し上げます。

【2】テーブルに両ひじをつき、両手を組んだら、眉毛の上の位置に親指の付け根をあてます。頭皮と筋肉を中央に寄せるイメージで、頭の重さを利用してぐっと頭皮を中央に寄せながら、つむじに向かってA字の形にマッサージします。つむじまできたら、頭頂部をぐっとつかんで10秒キープし、パッと離しましょう。
「老け髪リスク」がわかる!4つのチェックテスト
各部位がどれだけ硬くなっているのか、自分ではわかりにくいものです。そこで、辻さんが紹介する、老け髪リスクとなる4つのポイントと改善方法をチェックしてみましょう。
表情筋をチェックする「アヒル口テスト」

「う」の口を作り、くちびるをできるだけ遠くへ突き出し、上唇を鼻の下につけられるか、確認してみましょう。唇が鼻につかない場合は、ほほと口元の筋肉がこわばっているので、アヒル口を続けて顔筋をきたえましょう。
首の血流をチェックする「首まわしテスト」

肩の位置を動かさないようにしながら、首だけを動かして後ろを向いてみましょう。左右チェックして、動きが悪い場合は腋窩(えきか)リンパがつまっているので、STEP1の「大胸筋ほぐし」を入念にすると◎です。
肩の血流をチェックする「首曲げテスト」

左手を頭に添え、右肩が上がらないようにしながら、首を左に倒してみましょう。反対側も同様にチェックします。もしこわばりが強いと感じる人は、重点的にSTEP2の「胸鎖乳突筋・僧帽筋ほぐし」でほぐしましょう。
頭皮の硬さをチェックする「頭皮つまみテスト」

眉頭の延長線上の生え際に親指と人差し指をあて、中央に向かってぐっと引き寄せます。女性は利き手で、男性は利き手ではないほうで行ってください。頭皮の動きが悪く硬いと感じたら、STEP3の「側頭筋ほぐし・前頭筋もどし」をしましょう。
◆教えてくれたのは:管理理容師、理容師、ヘッドスパ専門店「PULA(プーラ)」経営者・辻敦哉さん

1979年、埼玉県浦和市生まれ。埼玉県理容専門学校、東京文化美容専門学校を卒業、ロンドンTONI&GUYアカデミー修了。サロンで店長、営業推進部長を務めたのち、2011年に独立。現在は後進の育成に注力し、プーラ式ヘッドスパ専門店を全国展開中。著書に今年5月に出版した『「髪が増えるしくみ」から考案 頭皮が蘇るすごいマッサージ』、『育毛のプロが教える髪が増える髪が太くなるすごい方法』(ともにアスコム)など。
◆美容外科、皮膚科医師・コッツフォード良枝さん
日本抗加齢医学会専門医、銀座禅クリニック院長。 山梨大学医学部卒業後、国際医療センター国府台病院を経て、日本医科大学麻酔科学講座に入局。2011年から皮膚科、美容皮膚科、美容外科に従事する。フジテレビ『バイキング』、毎日放送『林先生が驚く初耳学!』、テレビ東京『なないろ日和!』などに出演するなど、メディアでも活躍中。