
冬は、食べ過ぎたり、家でダラダラ過ごしてしまう時間が増えたりと、体重はどうしても増加しがち。そこで今回は、体重78kgから1年間で24kgのダイエットに成功、その後、トータルダイエットカウンセラーとして活動し現在ヘルスフードサイエンス研究家として活動中しているの大西ひとみさんに、経験談を踏まえた上手な食欲コントロールの方法を教えてもらいました。

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極端なカロリー制限をおすすめしない理由
年末年始で食べすぎてしまっても、普段の生活に戻れば自然に体重が落ちる人はいいのですが、私のように一旦体重が増えてしまうとなかなか減らず苦労しているかたもいると思います。増えた体重を減らすために多くの人がまず実行するのが食事制限ですが、我慢だらけのダイエットはストレスも溜まりやすく、リバウンドもしやすいもの。今回は、食欲コントロールのコツをお伝えしたいと思います。
極端なカロリー制限をすると過剰にお腹が空いてしまう原因の1つには、レプチンというホルモンが大きくかかわっています。食欲とホルモンは、切っても切り離せない関係にあります。レプチンは身体の脂肪細胞の中から分泌されるホルモンで、飢えたり食べすぎたりしないように血液を通して脳に信号を送る役割を果たしています。
もう少し詳しく説明すると、レプチンは脂肪細胞にどれだけ脂肪の蓄えがあるかという情報を脳に伝えています。脂肪細胞がたくさんあると、レプチンは脳に“食事をして脂肪を蓄える必要がない”という信号を脳に送ることで食べ過ぎをコントロールし、脂肪細胞が減ると“脂肪を蓄える必要がある”という信号を送り食欲を促します。また、脂肪細胞が多いとレプチン濃度は上がり、脂肪細胞が減るとレプチンの濃度は低くなります。

極端なカロリー制限をしていると、脂肪が減りレプチンの濃度が低くなることで、脳に“食べる指令”が出され続け、異常にお腹が空いてしまい食欲が高まります。これが、カロリー制限の落とし穴。この指令は短期的に出されるわけではなく、長期的に指令が出されるようになってしまうことから、仮に目標体重に達することができてもお腹が空き続けて食べすぎてしまい、結果としてリバウンドしてしまう可能性を高めてしまうのです。
レプチン濃度が低くなると脂肪蓄積されやすくなる
また、レプチン濃度が低くなるとエネルギー代謝が悪くなり脂肪蓄積されやすくなることもわかっています。
レプチンは血糖値とも深い関係にあり、食事をすると血糖値が上昇し、レプチンが分泌されて脳に満腹信号を送るのです。極端なカロリー制限をすると血糖値があまり上昇しなくなり、レプチンが分泌されにくくなることで空腹感が増してしまう作用も起きてしまいます。
食事制限をしながら食欲コントロールをするポイント
ダイエットで全くカロリーを考えずにダイエットを成功させ、そしてそれを維持するのは、至難の業。少なくとも、増えた体重を減らすためには、普段食べている食事量を減らす必要がありますが、大切なのは「極端に減らす」ではなく、「どこまで減らすべきなのか」を理解すること、そして「食事量を減らすことで少なからず起こる食欲増加の症状をどう乗り越えるのか」を考えることです。
食事制限中の食欲コントロールのポイントとして、レプチンと関係の深い血糖値の乱れをコントロールすることが対策として挙げられます。

糖質中心の食事をするとインスリンにより血糖値が急上昇・急降下してしまうので、うまくレプチンが作用せず空腹感が増してしまいます。ダイエット中もダイエット後でも(摂取するカロリー量が変わっても)糖質中心の食事を避け、たんぱく質、脂質、炭水化物がバランスよく摂取できる食事を毎回心がけるようにしましょう。糖質が好きな人は血糖値が上がりにくい糖質(そば、オートミール、さつまいもなど)を食べることを習慣化できるようにしてください。
食後にクエン酸を摂取すると食欲が抑えられやすくなる
食事制限をしているときは、肝臓内のグリコーゲンが少なくなっているのでグリコーゲンを早く体内に入れようとして食欲が増してしまいがちです。グリコーゲンとは炭水化物の一種で、特に肝臓・筋肉などに含まれるエネルギー代謝に必要な物質)。グリコーゲンが溜まった状態だと食欲は減る傾向にあります。
食後にクエン酸を摂取すると肝臓にグリコーゲンが作られやすくなり食欲が抑えられやすくなりますので、ぜひ取り入れてみてください。手軽に摂取できるクエン酸を多く含む食材は、梅やレモンなどの柑橘類、パイナップル、キウイなどの果実などが挙げられます。
自分に合ったダイエット方法が見つけるきっかけに
実際、食欲コントロールの最適な方法はその人の性格や体質によって変わってきます。原因を知り、対策を知っていれば自分なりのダイエット方法が見つかるはずです。ダイエットが成功しない理由は1つではありません。今回ご紹介したものはダイエット失敗の原因のひとつにすぎません。それでも、これらの情報は頭の片隅に情報があるだけで自分に合ったダイエット方法が見つけるきっかけになると私自身の経験で感じています。
何度もダイエットに失敗していた体重78kだった私が初めてダイエットに成功したのは、失敗の原因と向き合うことができたからでした。性格・体質はみんなそれぞれ違います。流行りのダイエットに振り回されていた頃はリバウンドの繰り返しでした。ある日突然誰かに出会ったり、たまたま自分に合った情報に出会えたりしたことで人生が変わったりもします。この記事がそんなきっかけになってくれればと思います。
◆教えてくれたのは:ヘルスフードサイエンス研究家・大西ひとみさん

9年間、米ロサンゼルスでパーソナルトレーナーとして活動後帰国。トータルダイエットカウンセラーとして7冊の本を出版、ダイエット商品・食品の商品開発の監修などをはじめさまざまなメディアで活動。2017年に自身のギルトフリースイーツブランド「h+diet(エイチプラスダイエット)」(https://h-plusdiet.com/)を立ち上げ、現在は東京・武蔵小山で『h+diet laboratory』をオープン。野菜を使い、甘味料・人工甘味料不使用、グルテンフリーの「栄養学から考えるオーガニックスイーツ」を販売、他社の商品監修などに携わるなどヘルスフードサイエンス研究家としても活動。
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