
こめかみや目の周りがズキズキと痛くなる片頭痛。「なぜか春になると、片頭痛が頻発する気がする」と悩んでいる方は、季節性のものかもしれません。春に起こりやすい片頭痛の理由と対策を、登録者数60万人を超えるYouTubeチャンネルで人気のドクターハッシーこと内科医の橋本将吉さんに聞きました。
春の片頭痛の原因は、「ストレス」と「気象病」
片頭痛は20代~40代の女性や、中高生に多いと言われていますが、実は、なにがどのように痛みにつながっているか、明確なメカニズムは解明されていないそうです。
「頭痛は大きく分けて、命にかかわる危険な頭痛と、そこまで至らない頭痛の2種類あります。危険な頭痛は脳に出血や腫瘍があるなど、脳の病気が隠れていることがあります。そんな致命的な頭痛の多くは、普段とは異なる痛みを感じるはずですので、違和感を覚えたら直ちに専門医を受診してください」(橋本さん・以下同)
原因不明の“直ちに危険”ではない頭痛でも、日常生活に支障をきたすほどつらい症状もあります。もし、片頭痛が春に多いのなら、原因は「ストレス」と「気候の変化」かもしれません。
「春は出会いと別れの多い季節です。卒業、入学、入社、転勤、人事異動などで新しい人間関係や仕事が始まるため、強い緊張やストレスにさらされます。こうした精神的な刺激が、片頭痛を引き起こす原因になると指摘されています。

感覚を脳に伝える三叉神経がストレスにより刺激されると炎症物質が放出されて、その炎症物質が血管を拡張・収縮させ、血管のまわりの神経を圧迫して痛みを感じるのです」
季節の変わり目に患者が増加?
寒い冬から温かい春になるにつれて、気温や湿度、気圧が急激に変化していくことも、体に影響します。
「東洋医学では“気象病”という考えがあります。季節の変わり目や梅雨の時期、天気の変動に伴って起こる不調全般の総称です。エビデンスはないのですが、季節の変わり目には頭痛や関節痛の患者さんが明らかに増えると実感しています。気候の変化により、自律神経のバランスが崩れることが原因だと考えられています」

自分なりの「片頭痛の要因」と「対策」を認識する
春の片頭痛の原因になりやすい「ストレス」と「気象病」は、どちらも神経性のものです。頑張りすぎず無理をしない生活を心がけたり、リラックスタイムを作ったりすることで、頭痛のリスクを軽減できます。それ以外の予防法を橋本さんが解説します。
「東洋医学的なアプローチとしては、春野菜を食べることが挙げられます。夏野菜であるきゅうりやレタスは、カリウムや水分が豊富で利尿作用があり、体を冷やしてくれます。冬野菜であるにんじんやごぼうなどの根菜類は、血行促進を促すビタミンEなどが含まれているため体を温めてくれます。
春になると、冬に溜まった老廃物などを解毒しようと肝臓に負担がかかります。そこで、肝臓の解毒機能をサポートするイソチオシアネートが含まれる、春野菜の菜の花や春キャベツ、クエン酸が豊富な梅などがおすすめです。旬の野菜には意味があるのです」

医師に「危険な頭痛ではない」と言われたとしても、慢性的に片頭痛が続く場合は、「頭痛ダイアリー」をつけることを橋本さんは推奨します。
「雨の日に頭がズキズキする、疲れると目の奥が痛い、決まった生理周期で頭が痛くなるなど、人によって片頭痛が起きやすいタイミングもあります。それを記録して医師に見せることで、診断の精度が上がります。また、アルコールを飲むと痛みが増す、旅行先で痛くなりやすいなど、自分なりの“悪化する要因”を把握することで、対策が打ちやすくなります」

自分の行動と状態を記録することで、片頭痛の法則性を見つけることができるかもしれません。これらの対策を取り入れて健康的な生活を送りましょう。
◆教えてくれたのは:内科医 ・橋本将吉(ドクターハッシー)さん

東京都出身。高齢者向けの訪問診療『東京むさしのクリニック』院長。2011年に「医学教育という専門領域から、日本と世界の明るい未来を創造する」という理念の元、リーフェホールディングス(旧リーフェ)を設立。医学生向けの個別指導塾『医学生道場 』(https://igakuseidojo.com/)の運営や、YouTuber『ドクターハッシー(内科医 橋本将吉)』として健康情報の発信。2022年9月に健康や医学を医師から学ぶ事のできるサービス『ヘルスケアアカデミー 』(https://healthcare-academy.co.jp/)をリリース。2か月で300人を突破。
取材・文/小山内麗香