「気象病」と呼ばれる、天候が関連している片頭痛などの不調。30年以上も気象病の研究を続ける医師の佐藤純さんは、著書の『1万人を治療した天気痛ドクターが教える「天気が悪いと調子が悪い」を自分で治す本』(アスコム)で、天気と体調、自律神経の関係性についてまとめています。そこで、特に影響を受ける人の多い気圧について、そのメカニズムや不調の改善方法を教えてもらいました。
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気圧が体に与える影響は大きい
気圧とは、天気や気象の分野では大気圧(大気の圧力)のことを指し、簡単に言えば空気の重さのことです。高気圧は気圧が高いことで空気が重い、低気圧は気圧が低いことで空気が軽いということです。
1平方メートルあたりにかかる気圧(1気圧)は約10トンと言われます。人間の体の表面積の平均が1.5平方メートルなので、私たちは常に約15トンもの気圧を受けて生活をしているといえるのです。
1気圧は大気圧の国際基準に置き換えると、1013ヘクトパスカルです。これが1ヘクトパスカル下がっただけで、海面は1cm上昇します。
また、高い山に登ると袋菓子などのパッケージはパンパンに膨らみますが、これは山頂に向かうほどに気圧が低くなるため。でも、人間は形が変わりませんよね。これは、気圧と同じだけの力で内側から空気を押し返しているからです。
片頭痛と気圧の関係
1気圧とされる1013ヘクトパスカルから6〜10ヘクトパスカル下がると片頭痛の発症率が上がるという結果が、東海大学の研究グループが片頭痛の患者を対象に行った疫学調査で出ています。台風が通過する際に変化する気圧はだいたい40ヘクトパスカルですが、その数分の1でも人体には大きな影響があるということです。
気圧の変化が大きい場所
実は天候にかかわらず、生活の中で気圧の影響を受けるシーンは多いのです。気圧が大きく変化したり、小刻みに上下したり、という環境に身をおくと、途端に具合が悪くなるケースがあります。
例えば、新幹線はトンネルに出たり入ったりする際に車内の気圧が変化します。私が山陽新幹線の小倉・名古屋間で高低差を測定したときは75ヘクトパスカルもの差がありました。気象病のかたは、気圧変化の影響が少ないグリーン車のある中央付近の車両を選ぶことをおすすめします。
飛行機の場合は離着陸時に大きな気圧差が生じるだけでなく、さまざまな事情から機内の気圧が0.75気圧程度に保たれています。地上とは0.25気圧の差がありますが、これをヘクトパスカルに変換すると、約250ヘクトパスカルにもなるのです。
また、高層ビルでは10m上昇するごとに、約1ヘクトパスカルずつ下がります。エレベーターでの上り下りによる影響はもちろん、高層マンションに住んでいたり、高層ビルの上階のオフィスに勤めたりしている人が体調を崩しやすいというのも、めずらしい話ではありません。