ちょっとしたことで感情的になってしまったり、いつまでもイライラを引きずってしまったり…。怒ってもいいことなんてないとわかっているのに、イライラして感情をぶつけてしまうのはいったいなぜでしょうか。『ついイラッときても感情的に反応しない方法を一冊にまとめてみた』(アスコム)の著者で精神科医の和田秀樹さんに、人がイライラしてしまう原因を教えてもらいました。
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イライラの原因は脳にある
人が思わず感情的に反応してしまう理由は脳の仕組みにあると和田さんは言います。怒りが湧き上がってきたとき、脳内ではどのような変化が起こっているのでしょうか。
「脳はいくつかの部位にわけられますが、たとえば人に殴られたときに、もっとも速く反応するのが大脳辺縁系というところです。ここは、人間以外の動物にも共通の原始的な脳といわれています。辺縁系では複雑なことは考えずに、殴られたからカッとするという単純な反応を起こします。怒りのもとが、ここで生み出されるといってもいいでしょう」(和田さん・以下同)
アクセル役の大脳辺縁系、ブレーキ役の皮質
和田さんによれば、素早く反応する大脳辺縁系に対し、大脳皮質という部分がその反応を制御する役割を果たしているそうです。
「大脳皮質という部分は、人間的な脳です。ゆっくりとした反応が起こります。『この相手に勝てるのか』『ケンカをすると警察がやってきて、やっかいなことになる』といったことを考え、衝動的な行動に走るのをストップさせます。怒りに関していえば、辺縁系はアクセル役、皮質がブレーキの役割を果たします。そうやってバランスをとっているのが人間の人間たる所以です」
つまり、バランスがとれない状態になっていることが、感情的になってしまう原因なのです。そこには、バランスがとれなくなる理由があると考えられます。
皮質の酸素不足がイライラの原因の1つ
「最近になって重要視されるようになったことに、『皮質の窒息状態』があります」と和田さん。感情が高まっているときや不安が強いときには、皮質に酸素があまりいかなくなるのだそうです。
「酸素が不足すれば、皮質は十分に機能しなくなります。そうすると、先ほどお話ししたように、皮質は怒りのブレーキ役ですから、それが故障したようなことになってしまいます。つまり、怒りがどんどんとエスカレートしてしまうのです」
酸素不足には3秒呼吸法が効果的
皮質が窒息状態になってしまったときの対策は、意外と簡単に実践できます。脳に酸素を送る方法は呼吸しかないそうです。
「3秒間、深呼吸をしてみてください。同時に、脳が新鮮な酸素で満たされていくのをイメージするといいかもしれません」
イライラしたときには、意識して3秒間ゆっくりと呼吸をすること。そうすることで、次第に怒りも収まります。また、散歩がてら、スローテンポで近くのコンビニまで行くのもいいと言います。
「外の空気を、酸素が体中に行き渡るように、深呼吸します。怒りを体の中の古い空気とともに、全部吐き出す感覚です」