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『配達人~終末の救世主~』の凄絶アクション!”未来の韓国”に端正なダークヒーロー誕生

Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
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全6話のドラマの舞台は、荒廃した韓国。時は2071年、未来の世界は深刻な大気汚染の影響で、人々の暮らしは大きく変化しています。食料だけでなく酸素も買わなければならない過酷な暮らしにおいてひときわ注目を浴びるのは、物資を配達する「配達人」。なかでも、すぐれた戦闘能力を有し、「伝説の配達人」と呼ばれる「5-8」を人気俳優・キム・ウビンが演じます。Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』について、韓国ドラマや映画などに詳しいライター・むらたえりかさんが解説します。(レビューはネタバレを含みます)

* * *

舞台は2071年の砂漠化した韓国

5月12日から配信がスタートしているNetflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』全6話と、韓国ドラマにしては短いこの作品だが、その中にはアクションシーンがたっぷりと詰め込まれている。

第1話では、少年たちがトラックに乗り込もうとし、荷台の上でスピードに振り落とされそうになる。その後も、こどものやんちゃでは済まない、ハラハラする場面が続く。

ドラマで描かれているのは、大気汚染が深刻化し、酸素マスクなしでは暮らせない世界となった2071年。人びとは、食料だけでなく酸素すら買わなければ生きられなくなっていた。

ドラマ『私たちのブルース』(2022年)、『相続者たち』(2013年)などのヒット作品に出演してきたキム・ウビンが、大気汚染が進んだ未来の韓国で、市民に物資を配達するダークヒーローを演じている。

原作は、イ・ユンギョンによるウェブトゥーン(漫画)『配達人』(原題:Black Knight)。監督・脚本を務めたチョ・ウィソクにとっては、今作が初めてのドラマ単独監督作品となる。

キム・ウビンは「伝説の配達人」5-8を演じている/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
キム・ウビンは「伝説の配達人」5-8を演じている/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
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キム・ウビンが演じたのは、主人公の「5-8(オダッシュパル)」という配達人。向かうところ敵なしの戦闘能力の高さから「伝説の配達人」と呼ばれている。昼間は一般区域に住む市民に宅配を届け、夜になると難民区域というひときわ荒廃した地域に住む人たちへ酸素や食料を届けていた。

食料や燃料、酸素さえも配給制のこの世界では、人々は階級によって住む場所が分けられている。もっとも階級が低いのは、難民区域に住む人たちだ。階級が一つ上になると、一般区域に住める。一般区域でも、酸素は購入しなければ生きていけない。

さらに、階級はコア区域、特別区域とランクが上がっていく。大統領らがいる特別区域では、酸素の残量を気にすることなく仕事も生活もできている。

カン・ユソクが演じる青年・サウォルには特別な身体を持っていた/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
カン・ユソクが演じる青年・サウォルは特別な身体を持っていた/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
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伝説の配達人5-8のように、自分も難民を助ける配達人になりたいと思う若者は多い。ユン・サウォル(カン・ユソク)もその一人だ。サウォルは難民区域出身だが、ある事情から一般区域で暮らしている。チョン・ソラ(イ・ソム)と、ソラの妹・スラ(ノ・ユンソ)は、サウォルにとって家族のような存在だ。

ある日、サウォルは事件に巻き込まれる。そして、偶然に居合わせてそこに駆けつけた5-8と関わりを持つようになり、サウォルは「配達人になる」という目標を現実のものにしようとしていく。

5-8とサウォルが出会って物語は動き出す/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
5-8とサウォルが出会って物語は動き出す/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
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目が離せないアクションシーン

第1話のトラックのシーン以降も、アクションシーンがどんどん盛り込まれていく。

サウォルが配達人になるために受ける試験では、肉弾戦とカーチェイスが続き、息つく暇もない。少年の雰囲気があるサウォルの他には、どう見ても最終選考に残りそうな筋肉バキバキの男性、デカくて目つきの悪いスキンヘッドの男性や、強い意志を持って試験に臨んでいそうな女性、プロレスラーのような男性など、多彩な受験者がいる。残念ながら全員との一対一の対戦はないのだが、個性的な受験者一人ひとりとサウォルがどう戦っていくのかも、ぜひ見たかった。

サウォルの仲間たち、ムスルモ、モン、モンモンは難民区域で暮らしている/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
サウォルの仲間たち、ムスルモ、モン、モンモンは難民区域で暮らしている/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
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そして、クライマックスに向かうにつれて盛り上がっていくのは銃撃戦。まだ銃に慣れていないサウォルに代わって、5-8のアクションが見どころになっている。端正な顔の表情を崩さず、瞳にだけ静かに怒りを宿した5-8が、鮮やかな銃さばきで敵に向かって行く。

身寄りのないムスルモたちの保護者(キム・ウィソン)/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
身寄りのないムスルモたちの保護者(キム・ウィソン)/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
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5-8やサウォルたちが立ち向かうのは、貧しい人々を虐げている階級社会と、その社会をつくり出した人たちだ。「配達人になりたい」というサウォルの夢からはじまった物語が、徐々に大きな力となって国を動かそうとしていく。

5-8が挑む銃撃戦に息を飲む/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
5-8が挑む銃撃戦に息をのむ/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
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ソン・スンホンら脇を固めるベテラン俳優

5-8やサウォルたちと対立する立場であるリュ・ソクを演じたのは、ソン・スンホン。日本でも人気の韓流ドラマ『秋の童話』(2000年)や『夏の香り』(2003年)などに出演していて幅広い世代にファンがいる。

リュ・ソクは、父親がつくり出した「チョンミョングループ」のために、難民区域に住んでいる人びとを排除しようと画策する。人の命を奪うことに戸惑いがなく、ときには命をもてあそぶような素振りすら見せる恐ろしい人物だ。父親からの承認を欲しがっているような一面もあり、ソン・スンホンがさまざまなリュ・ソクの感情を表現している。

リュ・ソク(ソン・スンホン)には父親にも言えない秘密があった/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
リュ・ソク(ソン・スンホン)には父親にも言えない秘密があった/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
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サウォルにとって姉のような存在のソラは、軍の情報司令官を務めている。5-8には敵対意識を持っていたが、サウォルが5-8と関わるようになり、少しずつ認識を変えていく。

ソラを演じるイ・ソムは、173cmの高身長。それでも、5-8の前に立つと小さく見えてしまう。今作では、彼女の美しいスタイルは軍服に隠されてほとんど見ることができないが、ショートカットで強調された強い瞳が存在感を放っている。

部下に慕われ、サウォルに対しても良き姉として接するソラ(イ・ソム)/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
部下に慕われ、サウォルに対しても良き姉として接するソラ(イ・ソム)/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
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このほか、荒れ果てて砂漠となった韓国の女性大統領役に、『クイーンメーカー』(2023年)や『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(2022年)など話題作への出演が続いているジン・ギョン。リュ・ソクの父親・リュ会長役を『愛の不時着』(2019年)のナム・ギョンウプが務め、脇を固めた。

大統領(ジン・ギョン)は人びとのために正しい決断をしてくれるのか/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
大統領(ジン・ギョン)は人びとのために正しい決断をしてくれるのか/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
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作り込まれたSFの世界観は、一体どこからどこまでがCGなのかと見入ってしまう。観光地として訪れたひともいるであろう韓国の江南(カンナム)や狎鷗亭(アックジョン)駅などの風景や、朽ちたソウルタワーなどの美術も楽しめる。

アクション、美術で引き込まれ、5-8と出会ったサウォルの成長していく姿に胸打たれる、休日の一気見におすすめのドラマだ。

カリスマ的魅力を持つ5-8は、配達人たちのまとめ役でもある/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
カリスマ的魅力を持つ5-8は、配達人たちのまとめ役でもある/Netflixシリーズ『配達人~終末の救世主~』独占配信中
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Netflixオリジナルシリーズ『配達人~終末の救世主~』

脚本・監督:チョ・ウィソク
原作:イ・ユンギョン『配達人』(原題:Black Knight)
出演:キム・ウビン、ソン・スンホン、カン・ユソク、イ・ソム

◆ライター・むらたえりか

ライター・むらたえりかさん(イラスト・いつもの/みき)
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ライター・編集者。ドラマ・映画レビュー、インタビュー記事、エッセイなどを執筆。宮城県出身、1年間の韓国在住経験あり。https://twitter.com/eripico

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