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旅行ジャーナリストが80代の両親を7日間のクルーズへ連れて行ったら…経験してわかった“親孝行旅”5つの心得「『やっぱり家が一番!』にがっかりしてはいけない」

村田和子さん親子
旅行ジャーナリストが80代の両親を7日間のクルーズへ連れて行ってわかった“親孝行旅”5つの心得とは?
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コロナ禍を機に出不精になったシニアの方、多いですよね。自由に旅ができるようになり、「高齢の親をどこかに連れて行ってあげたい」「親孝行したい」と思うかたも多いのでは? そこで今回は、旅行ジャーナリストの村田和子さんが、自身の両親との“大人の家族旅行”を振り返り、5つの心得を伝授します。

大人の家族旅行。80代の父母を連れてクルーズへ(長崎にて)
大人の家族旅行。村田和子さんは80代の父母を連れてクルーズへ(長崎にて)
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私の両親は、ともに80代。体は元気で、父はゴルフに囲碁にと多趣味でアクティブ派。他方、母は園芸が趣味で、家でもご機嫌に過ごせるのもあって、コロナ禍ですっかり出不精に。人生100年時代とはいうものの、健康寿命も気になる年齢。元気なうちに「旅へ連れて行ってあげたいなぁ」「親孝行したいなぁ」と思い、ゴールデンウイーク明けに7日間の外国船クルーズに乗船してきました。

外国船クルーズ
乗船した外国船クルーズ
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張り切って計画をしたものの、旅行中は「びっくり!」「怒!」「涙…」「???」と、さまざまな気持ちが入り乱れ、ちょっと気まずいムードになったことも。旅を分析・反省しつつ、高齢の親と行く「大人の家族旅行」の心得をまとめてみました。周りに聞くと、意外と「あるある」なことも多く、それを知るだけでも気持ちが楽になりますよ。

高齢の夫婦
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旅の計画、我が家はクルーズに決定!旅の行程は連泊・移動を快適に

我が家の族の行程は、関西にある自宅からクルーズの出航する「横浜」まで新幹線で移動し1泊。翌日、横浜を出港し、寄港地「長崎」「済州島(韓国)」「鹿児島」を経て、神戸港着というクルーズに乗船しました。ちなみにクルーズというと高いイメージがありますが、今回は7日間でひとり5万8000円~(港湾税やチップを除く)。食事もすべてついてリーズナブル!

今回は大学生の息子(父母からみると孫)を連れた3世代旅行(韓国・済州島にて)
今回は大学生の息子(父母からみると孫)を連れた3世代旅行(韓国・済州島にて)
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クルーズは、ベッドに寝たまま移動ができ、寄港地では大きな荷物を船に置いたまま、身軽に観光ができるので、大人の家族旅行にはぴったり。このセレクトは◎でした。

クルーズ以外の旅でも、高齢者が一緒の場合は、ホテルを連泊にしたり、移動は少し奮発しても疲れにくい快適な手段を選ぶなどがおすすめです。

寝たまま移動ができるのが魅力のクルーズ。父母にはバルコニー付きの客室を予約(ダイヤモンドプリンセス)
寝たまま移動ができるのが魅力のクルーズ。父母にはバルコニー付きの客室を予約(ダイヤモンドプリンセス)
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それでは5つの心得早速順にご紹介していきます。

心得1:「任せる」はスルーして、要所は確認

「部屋どうする?」「寄港地観光は? どこか行きたいところある?」と聞くと、きまって「任せる」という返事が返ってきました。ちょうど私も忙しく、それならと手配をして旅に出ると、「あそこへ行きたかった」「これはいまいち」など、「こだわりあるじゃない(涙!)……」と思ってしまう場面に出くわすことも。

言ったほうは、悪気なく感想を口にしたつもりでも、ひとりで計画を担うとブルーな気持ちになります。「一緒に決めたよね?」「確認したじゃない」といえるように、親が「任せる」といってもスルーし、「AとBどちらがいい?」など要所は確認、巻き込んで計画すると、何かあっても連帯責任。気持ちも楽になります。

心得2:旅の初めはゆったりペースで。テンションが高めは黄色信号

クルーズの前泊をした横浜は、父が会社員時代によく訪れていた場所。知った土地というのもあって、中華街では当時のお気に入りの店へ記憶をたよりに訪れたり、思い出を語ったりとテンション高く楽しそうでした。

横浜:ランチは父の思い出の横浜中華街にあるお粥の店へ
横浜:ランチは父の思い出の横浜中華街にあるお粥の店へ
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昔ここで……と思い出を語りながらの散策
昔ここで……と思い出を語りながらの散策
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ただ、クルーズに船に乗ってから父は疲れが出たようで、体の節々が痛いと不機嫌に。旅では、誰しもテンションが上がります。そのときはいいのですが、あとからどっと疲れが出ることはよくあること。

大事なときに調子を崩さないように、特に旅の始まり、あるいは出発前は、親御さんが大丈夫と言っても、ゆっくりしたペースで過ごせるように心がけるのがいいですね。

心得3:せっかく〇〇なのに……は封印。こだわりはみな違う

親孝行旅ということで奮発をし、横浜の宿泊はホテルニューグランドへ。

ホテルニューグランド
ホテルニューグランド
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旧館の建物はロケ地になることも多い、趣のある素敵な空間。マッカーサーや大佛次郎氏が逗留した歴史などの展示もあり、ナポリタンやプリンアラモード発祥といわれる館内のコーヒーハウス 「ザ・カフェ」は行列ができるほど人気です。

写真撮影の定番:ホテルニューグランド旧館の大階段
写真撮影の定番、ホテルニューグランド旧館の大階段
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宿泊記念に、旧館の大階段で2人を写真にと思ったら、「いらない。写真は撮らなくていい」といわれ、「せっかく来たのに……」と残念な気持ちになった私。でも、あとで母から「先々のことを考えると、もう写真はあってもねえ。必要ないと思うようになったのよ」と聞き、なるほどと納得。その年齢にならないとわからないことは、やはりあるものです。

翌日、一緒に行こうと楽しみにしていた「ザ・カフェ」に誘ったら、「別にのどは乾いてないし、お茶なら部屋でいい」と言われ、再びブルーに。でもカフェで親とお茶をしたかったのも、プリンアラモードを食べたかったのも私。世代が違うと志向や考え方、価値観が異なるのは当たり前のこと。自分のこだわりを押し付けるのはよくなかったと、あとで反省をしたのでした(体力的な問題もありますしね。振り返ると関西からの移動で疲れもあったのだと思います)。

私は「ザ・カフェ」でしっかりとプリンアラモードをいただきました
私は「ザ・カフェ」でしっかりとプリンアラモードをいただきました
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「せっかくだから◎◎」は、誘うのはOK。でも気乗りしないようなら無理強いしないこと。環境が許されるなら「そう、じゃあ行ってくるね」と別行動するぐらいの気持ちでいるとよいでしょう。

心得4:別々で過ごす時間も必要。そして自分も楽しむ

今回は行程も長く、別の客室をとったのが大正解。普段一緒に暮らしていないと、お互いに小さなことでストレスが蓄積され雰囲気が悪くなることも。適度な距離感や別行動の時間をとることも大切です。

私と息子はリーズナブルな内側客室へ
私と息子はリーズナブルな内側客室へ
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また、寄港地「鹿児島」で私はどうしても観光列車に乗りたく、あらかじめ父母と別行動をする旨を告げていました。すると、自分たちで調べてタクシーをチャーター。日帰り温泉に行き、ウナギのおいしい店で昼ご飯を食べ、ちょっと観光してと、大満足でご機嫌に帰ってきました。

鹿児島停泊中は、きれいな桜島が。この日の夕食はお互いの1日を振り返りながら会話も弾みます
鹿児島停泊中は、きれいな桜島が。この日の夕食はお互いの1日を振り返りながら会話も弾みます
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高齢で心配だという気遣いや、せっかくならこんな経験もという思いから、つい過干渉になっていたところもあったかも……とこのときに気が付きました。もちろん体力や性格にもよりますが、特に父はもともと旅やイベントの計画も好きな人。自分のペースで行きたいところに行くほうが、むしろあっていたのかもしれません。

私は観光列車に乗り、心穏やかなゆったりとした時間を堪能
私は観光列車に乗り、心穏やかなゆったりとした時間を堪能
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心得5:帰宅後の「やっぱり家が一番!」にがっかりしない

大人の家族旅行あるある第一が、帰宅後に「やっぱり家が一番!」という親の言葉にがっかりすること。同世代のかたに聞くと、かなり多くのかたが経験されているようです。「せっかく喜んでもらおうと思ったのに、どっと疲れた」「もう次はないと思った」など、悲しみや怒りの声も聞かれます。私も出不精の母に旅の楽しさを思い出してもらうつもりが、なぜ~(涙)と思ったのですが。

下船してほっとした瞬間に、やっぱり旅は疲れる。家が一番といわれました……
下船してほっとした瞬間に、やっぱり旅は疲れる。家が一番といわれました……
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数日すると「今回はありがとう。また一緒に行こうね」と何事もなかったかのように次の旅の誘いの電話がありました。

旅で疲れがたまった中、帰ってきてほっとした瞬間に思わず出るだろうこの一言。聞き手は「とっても楽しかったけれど」という前置きが隠れていると受け取るのがよさそうです。つまり「とっても楽しかったけれど、(疲れるし)やっぱり家が一番!」と考えれば、「しばらくはゆっくりしてね」という優しい言葉も返せます。

そして親世代のかたは、「楽しかった」という気持ちも言葉にすると、「喜んでくれた」「親孝行できた」と子どもの気持ちも満たされます。お互いに少し歩み寄ると、終わりよければすべてよし!の気持ちのいい旅行になりますよ。

村田和子さん親子
お互いに少し歩み寄ることが大事
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父母のペースでのんびりと
父母のペースでのんびりと
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孫との触れ合いも楽しかったようです(後日談)
孫との触れ合いも楽しかったようです(後日談)
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いかがでしたか? 大人の家族旅行は、どうしても親の気持ちや体力がわからず、よかれと思ったことがそうでない、あるいは伝わらないなど、すれ違いも起こりがち。でもしばらくたつと旅のことを思い出し「行ってよかった。また行きたい」となります。

船上で行う「シャッフルボード」。トーナメント戦では父と息子で優勝、準優勝。旅のよい記念になりました
船上で行う「シャッフルボード」。トーナメント戦では父と息子で優勝、準優勝。旅のよい記念になりました
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今回の経験から私もさまざまなことを学びました。5つの心得も参考に、ぜひ親孝行旅にチャレンジしてみてくださいね。

◆教えてくれたのは:旅行ジャーナリスト・村田和子さん

村田和子さん
旅行ジャーナリスト・村田和子さん
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旅行ジャーナリスト。「旅を通じて人・地域・社会が元気になる」をモットーに、旅の魅力を媒体で発信。宿のアドバイザー・講演なども行う。子どもと47都道府県を踏破した経験から「旅育メソッド(R)」を提唱、著書に「旅育BOOK~家族旅行で子どもの心と脳がぐんぐん育つ(日本実業出版社・2018)」。現在は50歳を迎え、子どもも大学生となり、人生100年時代を楽しむ旅を研究中。資格に総合旅行業務取扱管理者、1級販売士、クルーズアドバイザーなど。2016年より7年間、NHKラジオ『Nらじ』月一レギュラーを務めた。トラベルナレッジ代表(https://www.travel-k.com/)。旅ブログも行っている(http://www.murata-kazuko.com/)

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