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吉岡里帆の演技はなぜ見る人を惹きつけるのか?映画『アイスクリームフィーバー』で豪華キャスト陣が体現する独特な世界観を牽引

『アイスクリームフィーバー』場面写真
(C)2023「アイスクリームフィーバー」製作委員会
写真10枚

吉岡里帆さん(30歳)が主演を務めた映画『アイスクリームフィーバー』が7月14日より公開中です。芥川賞作家である川上未映子さんの短編小説を原作とした本作は、世代の異なる4人の女性の人生が交差するさまを描いたもの。独特な世界観を示す表現もユニークな、非常にリリカルな作品に仕上がっています。本作の見どころや吉岡さんの演技について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説します。

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芥川賞作家・川上未映子氏の作品を映画化

本作は、2008年に『乳と卵』で第138回芥川龍之介賞を受賞した川上未映子さんの短編作品を映画化したもの。原作となっているのは川上さんによる短編集『愛の夢とか』所収の『アイスクリーム熱』で、メガホンを取ったのはこれが初監督作となる千原徹也さんです。

『アイスクリームフィーバー』場面写真
(C)2023「アイスクリームフィーバー」製作委員会
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これまでに数多くの広告デザインを手がけてきた千原さんの作品とあって、全編にわたって映像にも音響にも趣向が凝らされています。いまのこの時代を生きる女性たちの姿を、ユニークな映画表現で描き出している作品なのです。

世代の異なる女性たちの日常が交錯する物語

美大を卒業してデザイン会社に就職したものの、うまくいかなかった常田菜摘(吉岡里帆)。クリエイターになる夢をあきらめかけている彼女はいま、東京・渋谷にあるアイスクリーム店でアルバイトをして過ごしています。

デザイン業界に戻るべきか、このままアイス屋でのバイトを続けるべきか悩んでいた彼女は、ある日、店にやってきた1人の女性に運命的なものを感じる。それ以降、菜摘は彼女のことが頭から離れなくなります。

『アイスクリームフィーバー』場面写真
(C)2023「アイスクリームフィーバー」製作委員会
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いっぽう、菜摘のバイト先の後輩・桑島貴子は、先輩である菜摘の変化を複雑な心境で見つめています。そして、アイスクリーム店の近所に住む高嶋優は、自由な生活を謳歌していたところ、突然の来訪者を前に心をざわつかせていました。

そんな彼女たちの“日常”が、交錯していくことになるのです――。

豪華キャスト陣が体現する独特な世界観

千原監督が独自のセンスで描き出す川上ワールドは、独特な世界観を持っています。これを体現する豪華キャスト陣にも注目でしょう。

『アイスクリームフィーバー』場面写真
(C)2023「アイスクリームフィーバー」製作委員会
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単調な菜摘の日常に変化をもたらす1人の女性役にモトーラ世理奈さん。彼女が演じているのは作家の橋本佐保。菜摘を夢中にさせる人物です。モトーラさんといえば、『ブラック校則』(2019年)や、2020年に公開された『風の電話』『恋恋豆花』などで主演を務め、俳優としても高く評価されている存在ですが、それ以前にモデルとして世界の舞台で活躍してきた存在でもあります。セリフに頼ることのない、その佇まいに魅せられます。

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(C)2023「アイスクリームフィーバー」製作委員会
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菜摘のアルバイト先の後輩・桑島貴子を演じているのは、音楽ユニット・水曜日のカンパネラのボーカルメンバーである詩羽さんです。現在放送中の『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ)にも出演している彼女は、この『アイスクリームフィーバー』が俳優デビュー作。これが初演技とは思えぬ堂々たる姿で、飾らないそのスタイルが魅力的です。

『アイスクリームフィーバー』場面写真
(C)2023「アイスクリームフィーバー」製作委員会
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そして、アイスクリーム店の近所にある銭湯を癒やしてとしている高嶋優を演じているのは松本まりかさん。放送中の大河ドラマ『どうする家康』(NHK総合)での“くノ一”役の好演が話題であり、今年は福士蒼汰さんとのダブル主演作『湖の女たち』の公開も控えている彼女が、突然の姪の訪問に戸惑い変化していくさまを繊細に表現してみせています。姪である美和役の南琴奈さんとの軽妙なかけ合いも見ものです。

『アイスクリームフィーバー』場面写真
(C)2023「アイスクリームフィーバー」製作委員会
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さらに、後藤淳平さん(ジャルジャル)、はっとりさん(マカロニえんぴつ)、MEGUMIさん、コムアイさん、片桐はいりさん、安達祐実さんら個性豊かな面々が重要キャラクターに。彼・彼女らの存在が本作をより豊かなものにしています。

そんな作品の中心に立っているのが、主人公・菜摘を演じる吉岡里帆さんなのです。

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