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ハロプロ25周年ライブに登場!アラフィフの今もギラギラ輝く「太陽とシスコムーン」の肉食系パフォーマンス

オーディション番組からデビューした「太陽とシスコムーン」
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つんく♂プロデュースで知られる「ハロー!プロジェクト」(ハロプロ)は今年25周年。モーニング娘。をはじめ多くのグループが所属するハロプロを、ファンの1人として長年追い続けてきたライター・田中稲さんが注目するのは、モー娘。と同じオーディション番組を経て1999年4月にデビューした「太陽とシスコムーン」です。なぜ、現在アラフィフの彼女たちに惹かれ続けるのか。その理由を田中さんが綴ります。

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「ハロー!プロジェクト」が今年で25周年を迎えた。モーニング娘。と平家みちよを輩出したオーディション番組『ASAYAN』(テレビ東京)の「シャ乱Q女性ロックヴォーカリストオーディション」から見守ってきた私。新たなユニットが出るたびにwktk(ワクテカ)したものだ。女の子たちが自分の個性をグングン伸ばしていくのを見守り、卒業や解散に泣き……。見送った推しも数知れず。ああ、走馬灯のように25年分のハロプロメンバーの歌う姿が私の脳内を巡る。

そこで「この長いハロプロの中で、一番大好きなユニットはどれだったか?」と自分に問うてみた。そして「非常に難しい……」と勝手に頭を抱えたが、巡っていた走馬灯がピタリとあのユニットでストップした。ああ、「太陽とシスコムーン」だ!

太陽とシスコムーン、略して「太シス」。元オリンピック代表選手の信田美帆さん、元大阪パフォーマンスドールの稲葉貴子さん、民謡家元の小湊美和さん、中国出身のRuRuさんの4人によるド迫力のパフォーマンスはもはや伝説だ。途中「T&Cボンバー」という名前に改名されたこともあったが(現在は「太陽とシスコムーン」で活動中)、「ボンバー(爆撃機、爆撃手)」という単語をつけたくなったのも少しわかる。確かに、歌もダンスもシャウトも爆発的なのである。

彼女たちについて詳しく掘り下げる前に、YouTubeのアップフロントチャンネルで『月と太陽』『ガタメキラ』『宇宙でLa Ta Ta』『Magic of Love』『DON’T STOP恋愛中』『HEY!真昼の蜃気楼』のMVが公開されているのでまずは観よう。観てから、ここに再び集合しよう!

ASAYANで見せた「野心と熱意」

おかえりなさい! 私も観てきたが「宇宙でLa Ta Ta」のMVってこんなにぶっ飛んでいたのかと、改めてビックリしている。そしてさらにテンションが上がったので、この勢いで、彼女たちの軌跡をたどっていきたい。

『宇宙でLa Ta Ta』のミュージックビデオ (YouTubeより)
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結成のきっかけは、『ASAYAN』内で行われた1998年の「つんくプロデュース芸能人新ユニットオーディション」。芸能経験がある女性が条件で、最終審査に受かった8人は、女優や現役アイドル、元宝塚歌劇団の方など、すごい面子が集まっていた。

初々しい少女たちの戦いとはまた違う、切迫感。「もう一花咲かせよう」とする野心と熱意が毎回画面を通してガンガン伝わってきたものだ。私は自分の伸びしろを信じ、積極的にチャレンジする人が大好きである。ゆえに、このオーディションに出演していた人たちのギラギラ戦闘オーラは本当に眩しかった。

「サンフラン」と「シスコムーン」という2チームに分かれ、サンフランシスコのライブハウスでパフォーマンスをするという熱いにもほどがあるオーディション内容。戦いの末、4人は選ばれた。ただ、当時日本語の助詞が入るグループ名なんてほとんどなかったので、「太陽とシスコムーン」とユニット名が発表された時は本当にビックリしたものだ。

近年では「水曜日のカンパネラ」「新しい学校のリーダーズ」「神はサイコロを振らない」など、けっこうよく聞くようになった。いやはや、そう考えると「太陽とシスコムーン」という名は、かなり先見の明があったのだなあ。さすがつんく♂さんである。

左から信田美帆、稲葉貴子、小湊美和、RuRu(YouTubeより)
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『月と太陽』の歌い出しに“心が殴られた”

デビューが決まったら決まったで、デビューシングル『月と太陽』がオリコン6位以内に入らなかったら解散、という無情な条件を突き付けられる4人。

しかし、これが超名曲であった。私は初めて聴いたときの感動を忘れない。

「太陽&シスコムーンレッツスタート!? ウーッ、あーぅ!!」

この歌い出しに心が殴られた。シャウトからドカーンと火が吹き、その爆風を受けたイメージである。彼女たちが長い間抱えてきたであろう、挫折感や鬱屈が弾けて魅力に変わる瞬間を見たというか。輝きに重さを感じる。

そしてこの曲のときの、信田さんの金髪アフロの素晴らしさよ……。整えた美しさもいいが、激しく散らす「攻めの美」のなんとエキサイティングなことか。

クールワイルド信田、セクシースウィート小湊、アクティブヒロイン稲葉、そして最高にスパイシーなRuRu。つんく♂さんがシェイクしてできた大人限定の刺激的な味わい——。よく考えれば「太陽とシスコムーン」とはカクテル名のようでもある。

2枚目シングルの『ガタメキラ』(1999年6月発売)
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続けてセカンドシングル『ガタメキラ』は腰を抜かした。「Gotta make it love(愛を育てなければ)」を縮めて「ガタメキラ」という単語を作ってしまうつんく♂さんも天才だが、それを歌う4人の圧も見事。ガツン、バリバリ! という感じのエロスの威嚇。

いけない。どうしても太陽とシスコムーンを語ると興奮して擬音が多くなってしまう。

1999年デビューで2000年10月に解散。なんと活動期間は1年半ととても短いが、彼女たちの名曲の数々は、現在もハロプロメンバーによって大切に歌い継がれている。

年齢も経験も全部魅力にして

メンバーのRuRuさんはもう芸能活動を引退したそうが、信田さん、小湊さん、稲葉さんの3人は現役。節目節目で集まり、大人の女性のセクシーさ、野心、アマゾネス感を魅せてくれている。9月10日に開催される、ハロプロ25周年ライブ(Hello! Project 25th ANNIVERSARY CONCERT「ALL FOR ONE & ONE FOR ALL!」ACT I)にも登場予定だ。

現在全員アラフィフだが、きっとこの先、30周年、40周年も変わらず肉食系パフォーマンスで圧倒してくれる気がする。デビュー当時から「少しでも若く可愛く」ではなく「今の私が最高。 いつまでだって、輝き続けてやるから!」とギラギラしていた彼女たちにとって、加齢など、恐るるに足らないだろう。

ときにはLa Ta Taと軽やかに、ときにはダラッダーララと力強く——。これからも年齢も経験も全部魅力にして、豊満かつハイクオリティなパフォーマンスを魅せてほしい。本格的再結成&新曲、お願いします!

◆ライター・田中稲

田中稲
ライター・田中稲さん
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1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka

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