『月と太陽』の歌い出しに“心が殴られた”
デビューが決まったら決まったで、デビューシングル『月と太陽』がオリコン6位以内に入らなかったら解散、という無情な条件を突き付けられる4人。
しかし、これが超名曲であった。私は初めて聴いたときの感動を忘れない。
「太陽&シスコムーンレッツスタート!? ウーッ、あーぅ!!」
この歌い出しに心が殴られた。シャウトからドカーンと火が吹き、その爆風を受けたイメージである。彼女たちが長い間抱えてきたであろう、挫折感や鬱屈が弾けて魅力に変わる瞬間を見たというか。輝きに重さを感じる。
そしてこの曲のときの、信田さんの金髪アフロの素晴らしさよ……。整えた美しさもいいが、激しく散らす「攻めの美」のなんとエキサイティングなことか。
クールワイルド信田、セクシースウィート小湊、アクティブヒロイン稲葉、そして最高にスパイシーなRuRu。つんく♂さんがシェイクしてできた大人限定の刺激的な味わい——。よく考えれば「太陽とシスコムーン」とはカクテル名のようでもある。
続けてセカンドシングル『ガタメキラ』は腰を抜かした。「Gotta make it love(愛を育てなければ)」を縮めて「ガタメキラ」という単語を作ってしまうつんく♂さんも天才だが、それを歌う4人の圧も見事。ガツン、バリバリ! という感じのエロスの威嚇。
いけない。どうしても太陽とシスコムーンを語ると興奮して擬音が多くなってしまう。
1999年デビューで2000年10月に解散。なんと活動期間は1年半ととても短いが、彼女たちの名曲の数々は、現在もハロプロメンバーによって大切に歌い継がれている。
年齢も経験も全部魅力にして
メンバーのRuRuさんはもう芸能活動を引退したそうが、信田さん、小湊さん、稲葉さんの3人は現役。節目節目で集まり、大人の女性のセクシーさ、野心、アマゾネス感を魅せてくれている。9月10日に開催される、ハロプロ25周年ライブ(Hello! Project 25th ANNIVERSARY CONCERT「ALL FOR ONE & ONE FOR ALL!」ACT I)にも登場予定だ。
現在全員アラフィフだが、きっとこの先、30周年、40周年も変わらず肉食系パフォーマンスで圧倒してくれる気がする。デビュー当時から「少しでも若く可愛く」ではなく「今の私が最高。 いつまでだって、輝き続けてやるから!」とギラギラしていた彼女たちにとって、加齢など、恐るるに足らないだろう。
ときにはLa Ta Taと軽やかに、ときにはダラッダーララと力強く——。これからも年齢も経験も全部魅力にして、豊満かつハイクオリティなパフォーマンスを魅せてほしい。本格的再結成&新曲、お願いします!
◆ライター・田中稲
1969年生まれ。昭和歌謡・ドラマ、アイドル、世代研究を中心に執筆している。著書に『昭和歌謡 出る単 1008語』(誠文堂新光社)、『そろそろ日本の全世代についてまとめておこうか。』(青月社)がある。大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し、『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。他、ネットメディアへの寄稿多数。現在、CREA WEBで「勝手に再ブーム」を連載中。https://twitter.com/ine_tanaka
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