犬は“適度な”散歩が大好き
肉体的ストレスは、運動や休息、栄養、排泄など、身体が欲しているものが与えられなかったり、ジャマされたりした場合に発生します。
「代表例はやはり、犬が散歩に連れて行ってもらえないケースでしょう。特に狩猟犬や牧羊犬など、もともと野山や草原を走り回っていた犬種は、運動不足になるとイライラがたまってしまいます。
犬を飼うなら事前に必ず、自分や家族が1日にどのぐらいの時間を散歩や外遊びに割けるのかを確認して、その範囲で飼える犬種を選ぶか、飼わないという選択をするべきだと思います」
一方、猫は高いところに上るなどの上下の動きを伴う遊びや、狩猟欲を満たしてくれるような遊びを好みます。そのような運動ができる遊具やおもちゃを用意して、時には飼い主さんから遊びに誘ってあげることが大切です。
散歩やドッグランは犬の体調と相談しながら
逆に、どんなに散歩が好きな犬でも、行きたくないのに無理に連れ出される、疲れているのに長時間の散歩をしいられると、それもストレスになる点に注意しましょう。
「外へ出ていろんなにおいをかぐことは犬にとって気分転換になるし、散歩を喜ぶ子がほとんどですが、年を取ると比較的短い時間で満足するようになります。逆に長時間の運動、激しい運動はつらくなることもあるので、散歩やドッグランは、犬の体調と相談しながらにしましょう」
食べること・飲むこと、排泄することをさまたげない
栄養不足も犬や猫のストレスになります。フードは年齢に応じたものを適量与えることが大切です。飲み水はいつでも清潔に。そして、排泄したいときに安心してできる環境も非常に重要です。
「トイレが汚いと、特に猫は嫌がって排泄しなくなったりします。そうなると膀胱や腎臓に負担がかかってしまう。トイレを清浄に保つことは、ペットの健康を保つための必須要件だと心得てください。多頭飼いの場合は、頭数+1の数だけトイレを用意しておきたいところです」
なるべく早く原因を突き止めて対処する
犬には、身体をなめ続ける、食事が済んでもまたすぐ欲しがる、もう覚えたはずなのにトイレを失敗する、自分のしっぽをしつこく追いかけ続けるといったストレスのサインがあります。猫もストレスがかかったときは、身体を過度になめたり、トイレを失敗したりしがち。食欲をなくしたり、攻撃的になったりすることもあります。
「飼い主さんが先回りしてストレスの少ない環境、接し方を心掛けるのが一番ですが、このようなサインを見つけたら、なるべく早く原因を突き止めて対処しましょう。犬や猫の小さな身体は、私たち以上にストレスの影響を受けやすいことを意識しておきたいですね」
◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん
獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/
取材・文/赤坂麻実
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