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犬や猫はかなり繊細? 飼い主が気づかずやっている“ストレス行動”について獣医師が解説

犬と猫
犬や猫はかなり繊細? 飼い主が気づかずやっている“ストレス行動”について獣医師が解説(Ph/イメージマート)
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私たちが日々、さまざまなストレスを抱えながら生活しているのと同じように、ペットにも大なり小なりストレスはあります。愛犬や愛猫がどんなことに強いストレスを感じるのか、それに対して飼い主さんはどうしたらいいのか、獣医師の山本昌彦さんに聞きました。

ストレスの原因は飼い主の態度?

犬や猫は強いストレスを感じると、健康トラブルにつながりがち。消化器官が荒れて下痢や嘔吐をしたり、自分の身体をなめ続けて毛が抜けたり皮膚が炎症を起こしたりすることもあります。言葉でコミュニケーションが取れない犬や猫のストレスは、飼い主さんが気を付けて原因を取り除くか、発散させてあげなくてはいけません。

山本さんによれば「犬や猫のストレスには、大きく分けて心理的なものと肉体的なものがある」といいます。

「心理的ストレスは、飼い主さんの態度によって生じることが多いですね。人間でいうネグレクトのようなことが原因になりやすいです。飼い主さんが必要なケアを放棄すると、犬や猫は不満を抱えたり、不安になったりします。

単にフードや水を与えるだけのお世話にとどまらず、一緒に遊んだり、スキンシップをとったり、名前を呼んだりしてかわいがる時間が絶対に必要です。猫もそうですが、特に犬は飼い主さんの愛情表現が不足すると、非常にストレスを感じるものです」(山本さん・以下同)

また、家族が不仲だったりすると、そのピリピリした空気を敏感にキャッチしてしまう犬や猫もいるのだとか。大声で言い争いをするようなことは、ペットのためにも避けたいところです。

環境が変わるとペットはつらいということを忘れないで

ほかにも、犬や猫に心理的ストレスを与えがちな原因があります。

猫
環境の変化は特に猫が敏感(Ph/イメージマート)
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「環境の変化ですね。これは特に猫が敏感だと思いますが、引っ越しで住環境が変わることや、家族構成が変わることなどに、ペットはストレスを感じます」

飼い主さんが結婚してパートナーのかたと一緒に暮らすようになったり、子どもが生まれたり、親御さんと同居を始めたり、新たにペットを迎えたりして、同居家族が増えると飼い主さんの注意がどうしても新しく共に生活するようになった人、動物に向くので、元からいるペットは寂しい思いをすることになるようです。

「こういう場合、たくさんスキンシップを取って安心させてあげるのが何よりの解決策です。特に、既にペットがいるご家庭で新たにペットを迎えるときは、先輩犬、先輩猫を何事も優先して落ち着かせてあげるのが鉄則です。ご飯も遊びも、先住ペットが先。人間にはたいした問題に思えなくても、順番が前後するようなことは避けてください」

逆に、家族の誰かが単身赴任したり入院したり、子どもが独り立ちして実家を出たりして、同居家族が減ると、それもまたペットが寂しがる原因になります。これは避けられることではないので、そばにいる時間を増やし、体調に変化がないか注意深く見守るしかありません。

犬は“適度な”散歩が大好き

肉体的ストレスは、運動や休息、栄養、排泄など、身体が欲しているものが与えられなかったり、ジャマされたりした場合に発生します。

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犬は“適度な”散歩が大好き(Ph/イメージマート)
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「代表例はやはり、犬が散歩に連れて行ってもらえないケースでしょう。特に狩猟犬や牧羊犬など、もともと野山や草原を走り回っていた犬種は、運動不足になるとイライラがたまってしまいます。

犬を飼うなら事前に必ず、自分や家族が1日にどのぐらいの時間を散歩や外遊びに割けるのかを確認して、その範囲で飼える犬種を選ぶか、飼わないという選択をするべきだと思います」

一方、猫は高いところに上るなどの上下の動きを伴う遊びや、狩猟欲を満たしてくれるような遊びを好みます。そのような運動ができる遊具やおもちゃを用意して、時には飼い主さんから遊びに誘ってあげることが大切です。

散歩やドッグランは犬の体調と相談しながら

逆に、どんなに散歩が好きな犬でも、行きたくないのに無理に連れ出される、疲れているのに長時間の散歩をしいられると、それもストレスになる点に注意しましょう。

「外へ出ていろんなにおいをかぐことは犬にとって気分転換になるし、散歩を喜ぶ子がほとんどですが、年を取ると比較的短い時間で満足するようになります。逆に長時間の運動、激しい運動はつらくなることもあるので、散歩やドッグランは、犬の体調と相談しながらにしましょう」

食べること・飲むこと、排泄することをさまたげない

栄養不足も犬や猫のストレスになります。フードは年齢に応じたものを適量与えることが大切です。飲み水はいつでも清潔に。そして、排泄したいときに安心してできる環境も非常に重要です。

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トイレが汚いと、特に猫は嫌がって排泄しなくなる(Ph/イメージマート)
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「トイレが汚いと、特に猫は嫌がって排泄しなくなったりします。そうなると膀胱や腎臓に負担がかかってしまう。トイレを清浄に保つことは、ペットの健康を保つための必須要件だと心得てください。多頭飼いの場合は、頭数+1の数だけトイレを用意しておきたいところです」

なるべく早く原因を突き止めて対処する

犬には、身体をなめ続ける、食事が済んでもまたすぐ欲しがる、もう覚えたはずなのにトイレを失敗する、自分のしっぽをしつこく追いかけ続けるといったストレスのサインがあります。猫もストレスがかかったときは、身体を過度になめたり、トイレを失敗したりしがち。食欲をなくしたり、攻撃的になったりすることもあります。

「飼い主さんが先回りしてストレスの少ない環境、接し方を心掛けるのが一番ですが、このようなサインを見つけたら、なるべく早く原因を突き止めて対処しましょう。犬や猫の小さな身体は、私たち以上にストレスの影響を受けやすいことを意識しておきたいですね」

◆教えてくれたのは:獣医師・山本昌彦さん

山本
獣医師・山本昌彦さん
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獣医師。アニコム先進医療研究所(本社・東京都新宿区)病院運営部長。東京農工大学獣医学科卒業(獣医内科学研究室)。動物病院、アクサ損害保険勤務を経て、現職へ従事。https://www.anicom-sompo.co.jp/

取材・文/赤坂麻実

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