危険!「起きぬけ」「ずっと同じ姿勢」は軟骨カラカラ乾燥状態
そしてこの「足放り」はぜひ寝起きの習慣にしていただきたい!
なぜ朝、一番に行うことを推奨するのか。それには理由があります。朝起きたときが一番「軟骨が乾燥している」からです。
軟骨の中の水は、寝ている間に下へと落ちていきます。1時間後に寝返りを打つと、また水は反対側へ移動します。みなさん寝ている間はあまり動きませんよね。どんなに寝相が悪い人でも、寝起きのときが軟骨はもっとも乾燥しています。乾いているときほど、軟骨はへしゃげたら元に戻りにくい!
朝起きたら、トイレに行きますよね?
寝床からトイレまで、僕の統計では「平均17歩程度」歩きますが、その移動時にも体重の5倍が軟骨にかかるわけです。それも水のうるおいがない乾燥した軟骨はもっとも壊れやすい。豪邸住まいで、寝床からトイレが遠いほど、軟骨がへしゃげてしまいます。
同様に、しばらくデスクワークで同じ姿勢をしていたあとや、つい集中して好きなドラマを2、3本一気見したあとなどに「急に立ち上がる」ときもダメージは大きい!
立ち上がる前、体重をかける前、一歩踏み出す前に、30回、足を放って、それから動くようにしましょう。
左右30回放るといっても、1分ちょっとでできます。それだけで軟骨はヌルヌル液で満たされ、割れにくくなるのです。ぜひ習慣にしてください。
関節軟骨がなくなっても代役「線維軟骨」ができる
関節は、袋状の関節包に包まれています。関節包の内側にあたる滑膜が伸び縮みすると、滑膜細胞に刺激が加わり、滑膜細胞からヌルヌルとした関節液が分泌されます。この液は水分やヒアルロン酸、コンドロイチンといった、滑るための成分と軟骨の栄養成分や成長因子が含まれています。
いくらかへしゃげて、減っていたとしても、関節軟骨(硝子軟骨)が残っていれば、関節液の栄養補給により修復(再生)されます。「足放り体操」をして、軟骨にしっかりと栄養を与え、日常の活動をしてください。
一方、変形性膝関節症の中期以降、大腿骨と脛骨がぶつかり、軟骨がなくなり、その下の骨が微小骨折を起こしているような場合も、あきらめず「足放り体操」などに取り組んでいただくことが大切です。
というのも、関節軟骨(硝子軟骨)が完全になくなってしまった場合は、栄養が供給されても、関節軟骨が再生することはないのですが、その代わりとしてはたらく「線維軟骨」ができるのです。
変形性膝関節症の治療法の1つに「骨切り術」という手術法があります。この手術法を行ったあとに、脚がまっすぐになって、ひざの痛みもなくなる人がおられます。骨切り術後に痛みがなくなった人のひざを、関節鏡でのぞいたドクターが、まったく軟骨がなくなっていた場所に、線維軟骨が生じていたことを報告しています。
この骨切り術でなぜひざの痛みが取れるかというと、それは歩くときの荷重のかかる場所が変わるから。
変形性膝関節症の中期以降、歩くときの荷重がひざの内側を通っていたのが、骨切り術によって、その荷重がひざ関節の真ん中に戻るからです。痛かった内側ひざ関節には隙間が生まれ、外側ひざ関節の軟骨は残っていますから、痛みなく歩けます。なくなってしまっているひざの内側の軟骨は、骨どうしが当たらずにすみ、歩行時は「足放り体操」のように、振っている状態――関節内の骨どうしの間隔が広がり、滑膜が伸び縮みし関節液が軟骨をうるおしている状態──になるわけです。
骨どうしが当たらない状態で足を振ることで内側には線維軟骨が再生されます。これは指を切った後、炎症が起こった結果、線維で覆われて再生するメカニズムと同じです。
じつはたつみ式保存療法は、この骨切り術と同じメカニズムで線維軟骨を再生させます。
しかし、「足放り体操」で線維軟骨が誘導されたとしても、今までの歩き方のまま歩いてしまうと、新しく再生された軟骨はすぐにつぶされてしまいます。そこで「軟骨を減らさない歩き方」が重要になります。