日本人の変形性膝関節症の9割は、O脚によるものですが、これは、ひざの内側軟骨がすり減っていくものです。この、日本人に多いタイプの変形性膝関節症に有効なのが、内転筋を使った「内もも歩き」です。
内ももの筋肉(内転筋)を使い、ひざを内側に入れることで、大腿骨と脛骨の間に隙間をつくって、親指側に重心を移動させて歩く歩き方が「内もも歩き」です。
内もも歩きのポイントは、歩く前に、座ったままひざに手を置き、体重をかけて〝普段のひざの状態とは逆〟の親指重心の練習をすること。足の小指を浮かせて着地するのを、まずは座った姿勢でやってみます。
一方で、X脚由来による変形性膝関節症の方には、「一直線歩き」をすすめています。歩みを進めるときに、前に降り出した足を、後ろ足のすぐ前に着地し、一直線上に歩く方法です。
O脚の方も、X脚の方も、このように歩き方を変えることで、大腿骨と脛骨がぶつかって起こる微小骨折を防ぐことができれば、激痛はなくなります。そして、「足放り体操」によって再生した軟骨を減らさずに歩けます。
◆教えてくれたのは:整形外科医・巽一郎さん
1960年生まれ。医師。一宮西病院整形外科部長・人工関節センター長。ひざのスーパードクター。静岡県立薬科大学薬学部卒業後、大阪市立大学医学部に入学。卒業後は同附属病院整形外科に入局し手術三昧の日々を送りながら、米国(メイヨー・クリニック)と英国(オックスフォード大学整形外科留学)などに学び、世界最先端の技術を体得。日本屈指の技術と、患者の立場に立った診療方針で全国各地から人が絶えない。評判の手術の腕の一方で「すぐには切らない」医師として話題を集める。湘南鎌倉総合病院人工膝関節センター長を15年務めた後、2020年より一宮西病院人工関節センター長に。