朝晩の冷え込みが一層と厳しくなってきましたが、なんとなく体調がすぐれない、倦怠感や疲労感が続くといった不調はありませんか。それは、気象病の一種「寒暖差疲労」が原因かもしれません。「寒暖差疲労は、生活習慣や食事を意識するだけで改善できる可能性がある」と話す薬剤師の山形ゆかりさんに、詳しい予防方法について教えてもらいました。
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寒暖差疲労の症状と原因
最低気温と最高気温の寒暖差や、屋外と屋内の寒暖差などによって、体のさまざまな器官をコントロールしている自律神経のバランスが乱れ、頭痛、めまい、倦怠感、食欲不振、肩こり、不眠、イライラなどの不調が生じることを「寒暖差疲労」といいます。
自律神経は、活動を司る「交感神経」と休息を司る「副交感神経」の2つから構成されており、この神経を使い分けることで血流や発汗量の調節、筋肉での熱の生産などが行われ、暑いときも寒いときも体温を一定に保ちます。
しかし、寒暖差が大きいとこの2つの神経の使い分けが通常よりも必要となり、自律神経に負担がかかってバランスが乱れてしまうのです。
また、寒暖差による心身へのストレスは、交感神経を活発化させる作用のあるホルモンを分泌させ、これも自律神経のバランスを乱す原因となります。
寒暖差疲労の予防方法
寒暖差疲労を予防するために自律神経のバランスを整えるには、屋外と屋内の寒暖差をなるべく小さくすることや、正しい方法で入浴するのが効果的です。
部屋を暖めすぎない
部屋を暖めすぎると外気温との寒暖差が大きくなり、自律神経の負担となるため、屋内の暖房設定は外気温との差が5℃以内(東京都保健医療局「健康・快適居住環境の指針」https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/kankyo_eisei/jukankyo/indoor/kenko/index.html)になるのが望ましいとされています。
外気温との差が5℃以内の室温設定はやや寒いように感じますが、暖房器具に頼って部屋を暖めすぎると、自律神経を働かせずとも体温を一定に保つことができてしまうため、自律神経の衰えにつながります。そのため、自律神経の負担軽減や機能維持には必要なことといえるでしょう。
ただし、室温が低くなりすぎると、風邪を引くなど健康を害する可能性もあるため、寒さを感じる場合は暖かい上着や履物などを活用して、冷えによる不調に注意してください。
正しい方法で入浴する
温かいお湯に浸かることで、リラックス効果が得られ副交感神経を活性化できます。
ただし、冬場はリビングや脱衣所と浴室や湯船との寒暖差が大きいため、急な血圧変動を起こしやすく、脳卒中などのリスクが高まります。そのため、正しい方法で入浴することが大切です。
<冬場の正しい入浴方法>
【1】予め水分補給をしておく(脱水による血管収縮防止のため)
【2】シャワーで浴室を暖める
【3】暖房器具などで脱衣所を暖める
【4】湯船に浸かる前に掛け湯をして、湯船の温度に体を慣らす
【5】38~41℃のお湯で10~15分全身浴をする
【6】入浴後は水分補給をする(脱水による血管収縮防止のため)
副交感神経を活性化させるには38〜41℃の湯温がよいとされ、42℃以上のお湯は交感神経を優位にさせる原因となります。
また、神経の集中している首を温めると自律神経を整えやすいため全身浴としていますが、水圧が心臓へ負担をかけるため、入浴時間は10~15分と短めにするのがよいでしょう。