健康・医療

《75歳の現役医師が指南》食事で脳の衰えを予防!「脳を元気にする」6つの“ブレインフード”と効果的な食べ方

ジャケットを着てハットをかぶった男性
医師の鎌田實さんが解説する「脳を元気にする」6つの“ブレインフード”
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脳の衰えは年齢と切り離せない悩みですが、進行すると認知症になるリスクも高まります。医師の鎌田實さん(75歳)は、著書『医師のぼくが50年かけてたどりついた鎌田式長生き食事術』(アスコム)の中で、脳の衰えは脳だけでなく、腸も相関していると語っています。脳と腸の関係について、また衰えていく脳の進行を予防する方法を教えていただきました。

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認知機能の衰えを防ぐ!脳によい食事法

認知症は突然発症する病気ではなく、糖尿病などと同じ生活習慣病のひとつだと鎌田さんは話します。

「習慣を変えることで、認知機能の衰えを食い止めることは十分可能です。実際に、認知症の前段階として訪れるMCI(軽度認知障害)の段階で適切に対応すれば、正常な脳に戻れる可能性が十分にあることもわかっています。この対応の中心になるのは食事です」(鎌田さん・以下同)

左手を上げる男性
鎌田さんが教える、脳の衰えを防ぐ食事法とは?
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そこで、まずは脳の衰えを防ぐ食事法から解説していただきました。

脳を元気に保つ工夫|ジュースや食べ方で手軽に

鎌田さんがすすめるのは、DHAが豊富な青魚や、脳の神経伝達をサポートするオメガ3脂肪酸を含むナッツ類などの“ブレインフード”。さらに、野菜や果物に含まれるポリフェノールは、脳の酸化を防いで慢性炎症を予防し、衰えを防ぐ効果が期待できるといいます。

「私は毎日350gの野菜を食べることを推奨していますが、難しい人は野菜ジュースで手軽に摂りましょう。また、ごはんや麺類などの炭水化物(糖質)を最後に食べる“カーボラスト”を実践するだけでも血糖値の上昇がおだやかになり、脳の慢性炎症の予防効果が期待できます。日々の食事を見直して、認知症にならない人生を目指しましょう」

脳を元気にする!“ブレインフード”6つ

鎌田さんが特におすすめする、食べるほど脳が元気になる“ブレインフード”。これらの6つの食品が若い脳を保ってくれるというので、積極的に食生活へ取り入れましょう。

しらすや大豆がのったサラダ
“ブレインフード”を食事に取り入れよう(Ph/photoAC)
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□魚:青魚にとくに多く含まれるDHAとEPAは、アルツハイマー病に関連付けられている酸化ストレスや炎症を減らす働きがあります。また、加齢にともなう脳萎縮を抑える効果があるといわれています。

□ナッツ:α-リノレン酸が含まれていて、脳の神経伝達をよくしたり、血流を上げて脳の働きを高めたりする作用があります。

□大豆製品:記憶力や集中力を高める大豆レシチンが含まれます。

□ごま:抗酸化作用の強いセサミンを含み、動脈硬化の予防効果もあります。

□えごま油・アマニ油:オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸は、体内に入るとDHAやEPAに変わり、脳の神経細胞を活性化させます。熱に弱いので、食べる直前に小さじ1杯程度を目安に料理にかけるなどして摂りましょう。

□野菜・ベリー:葉物野菜や赤い野菜など、色とりどりの野菜には抗酸化物質やビタミン、ミネラルが豊富で脳の健康によいとされています。ブルーベリーやラズベリーには記憶力低下を防ぐ抗酸化物質が含まれています。

これらは単品でも効果的ですが、組み合わせることで抗酸化作用がさらに高まることも期待できます。

たとえばビタミンEが豊富なナッツ類と、ほかのビタミンを含む葉物野菜を合わせてサラダにすれば、抗酸化力を高められます。また、青魚の缶詰と豆腐の組み合わせも抗酸化力がアップ。青魚に含まれるコエンザイムQ10には老化を進める活性酸素を除去する働きがありますが、この働きは豆腐のビタミンEと合わさって効率がよくなります。とくにイワシはコエンザイムQ10が豊富です。

焼き豆腐とさばの水煮の小鉢
青魚の缶詰と豆腐など健康にいい食材の組み合わせを紹介!(Ph/photoAC)
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腸は第二の脳!脳の健康につながる腸内環境を整える

腸は第二の脳であり、長生きの要だと鎌田さんは言います。その理由と、腸内環境を整えるにはどんな食事がおすすめなのか伺いました。

なぜ、腸は第二の脳といわれているのか?

栄養を消化・吸収する腸は、免疫細胞の約7割が集中していて、体内に侵入した病原菌などから体を守る働きもあります。さらに、約1億個の神経細胞がある腸は、自律神経を介して脳とつながっていることも近年わかってきています。

つまり腸はいわば第二の脳であり、腸を整えることで、脳の健康にもつながります。この影響を及ぼし合う関係を“脳腸相関”といって、ストレスでお腹が痛くなったり、腸の調子が悪いと鬱々とするのはこのためだと鎌田さんは話します。

黒板に描いた腸のイラスト
腸を整えると脳も健康に(Ph/photoAC)
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また、腸内の悪玉菌が増えると炎症を起こし、睡眠障害や認知機能の低下、大腸がんなどの原因になることもあるそうです。

「腸内環境を整えるなら、食物繊維をたくさん摂ること。毎日350gの野菜を食べるのが理想的で、味噌汁にたくさんの野菜を入れたり、野菜ジュースなどで手軽に取り入れましょう。また、発酵食品を食べることも大切です」

善玉菌を増やすなら、さまざまな発酵食品を試すべき理由

中高年以降になると、腸内の善玉菌がどんどん減ってしまいます。鎌田さんは善玉菌を増やすために、毎日発酵食品を食べることをすすめています。

「とくにいろんな産地の発酵食品を食べると、種類の違う菌が腸内で働き、善玉菌を増やしてくれるといわれています。納豆もヨーグルトも、産地やメーカーによって菌のタイプが変わります。ときどき産地やメーカーを変えると、色んな種類の善玉菌が腸の中で働き、免疫力を高めてくれるんです」

話している男性
いろんな産地の発酵食品を食べることをすすめる鎌田さん
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世界初のビフィズス菌を配合したヨーグルトやドリンクが森永乳業から発売されていますし、ローカルな牧場のヨーグルト、納豆は水戸だけでなく北海道や宮城も名産地など、いろいろと取り寄せてみるのも、腸によいだけでなく生活の楽しみが増えます。

さらに発酵食品の組み合わせもおすすめだそうで、納豆(納豆菌)×もろみ酢(こうじ菌)やヨーグルト(乳酸菌)×甘酒(オリゴ糖)の組み合わせや、みそ(こうじ菌)×ナチュラルチーズ(乳酸菌)のみそ漬けなどは、腸内の善玉菌をより活発化させるとともに、味のバリエーションが増えることで食の楽しさにつながると鎌田先生は話します。

◆教えてくれたのは:医師・鎌田實さん

著書を前に座っている男性
医師・鎌田實さん
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1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業。1988年に長野・諏訪中央病院院長に就任し、脳卒中の死亡率が全国ワーストクラスだった長野県で減塩運動をスタートさせ、地域住民と公民館で食事をするなど「住民とともにつくる医療」を推進。地域包括ケアのさきがけとなり、長野県を屈指の健康長寿県に導いた。2005年より同院名誉院長に就任。『医師のぼくが50年かけてたどりついた鎌田式長生き食事術』(アスコム)のほか、実用書からエッセイまで著作多数。http://www.kamataminoru.com/

取材・文/イワイユウ 撮影/黒石あみ

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