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66歳オバ記者がハマる1日乗車券(500円)都バス旅 膵のう胞の検査結果が出た日も…揺られながら来し方行く末を考える時間に

オバ記者
バス旅を思いついたオバ記者。一体どんな旅になったのか
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ライター歴45年を迎えたオバ記者こと野原広子(66歳)は一昨年10月、「卵巣がんの疑い」で手術を経験。その後、境界悪性腫瘍と診断された。そして今度は膵臓に「のう胞」が見つかった。その検査結果が出た日、オバ記者が向かった先とは――。

* * *

「都バスに揺られる日にしよう」

「膵臓にのう胞があります」と定期検診で行った大学病院の婦人科で言われたのが昨年の暮れのこと。あれから約1か月、のう胞とがんの疑いをネットで調べまくったわよ。そうしている時もふと手を止めて「医師は“のう胞”と言っていたけれど、本当のところは…」と頭の上に暗雲が垂れ込め始める。まさに疑心暗鬼の塊だ。

オバ記者
昨年、卵巣がんの疑いで手術を受けたオバ記者
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それが先日、7分間でスパーッと消えた! 内科のM医師は、「1年前のMRI検査で6mmの影を発見して、その時にがんではないとハッキリしています。それから半年後のCT検査でものう胞は同じ大きさなので、あとはがん化の兆候を早く見つけるために半年ごとにMRI検査をした方がいいということです」と、理路整然。

これで胸のつかえがスパーンと消えた私は何をしたか。実は結果がどうであろうと、診察を終えたら都バスに揺られる日にしようと決めていたの。そうして来し方行く末をバスに身を任せながらじっくり考えようと、住まいのある秋葉原から「一日乗車券」(500円)で病院行きのバスに乗り込んだわけ。

「一日乗車券」を握りしめてバスに乗り込んだオバ記者
「一日乗車券」を握りしめてバスに乗り込んだ
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病院は朝10時の予約だけど、一昨年からの通院で早めに行くに越したことはないということを覚えてね。この日も9時半には病院に到着している。で、病院を出たのが10時7分。さあ、バス旅の始まりだ!

30年以上前の泣き笑いが染みこんだ歌舞伎町

病院前から上野広小路まで2本目。そういえば朝から何も食べてない。上野駅広小路前の立ち食いそば『つるや』で海老天そば(550円)で温まり、上野公園から早稲田行きが3本め。終点まで約45分の予定だ。バスは不忍池のほとりから15年住んだなつかしい本駒込を通って音羽から鶴巻町。約30年前にこの近くで事務所を構えた日々を思い出したりしている間に終点の早稲田に到着。しかしバスから降りたらまあ、寒いのなんの! で、4本目は新宿駅西口と決めてすぐ近くのモスバーガーに飛び込んでコーヒー(280円)で温まった。

オバ記者
バスに揺られながら昔の事を思い出す(写真は昨年入院していた病室から見えた景色)
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早稲田を出発したバスは高田馬場を通って明治通りをひた走り、歌舞伎町のキワを通ったら、ああ、ここは30歳の時に私が初めて事務所を構え、いろんな泣き笑いが染み込んだ町。って、センチメンタルジャーニーか?

いやいや、病院で「まだイケます」とハンコを押していただいた66歳。昔話なんかしている場合じゃない! で、5本目は未体験の新宿駅西口から品川駅までと決めた。で、結果的にこれが本日の大発見路線になったの。

「再開発」の景色に感じた「自分まで世の中から押し出される…」

いかがわしさと自由が混じり合った町、新宿2丁目を通り、四谷三丁目から慶応病院の横をすり抜け青山へ。ここも2年近く住んだけど、はい、思い出すのはやめやめ! 青山墓地下をYouTubeでラテン音楽を聴きながらバスは行く。

で、乃木大将の住まいの横を抜けたあたりから大小の坂の連続で、上を見上げりゃタワマンがニョキニョキ。横を見たらふつうの一戸建て住宅の一画があったり、古いお寺が連なったりして何度も「ひゃーっ、麻布おもしれー」と声をあげそうになったわよ。

さてさて、品川駅前に着いたら大きな土地が更地になっていて再開発の真っ最中。そういえば上野でもあったはずのビルが消えていたし、新宿駅西口は駅を出たらスバルビルがウソのようにきれいサッパリない!!

あったはずのビルが次々無くなってる!
あったはずのビルが次々無くなってる!
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古くなったビルは立て直す。町のつくりも変える。再開発は自然の流れだけど、なんだか自分まで世の中から押し出されるような気持ちになってきた。世の中のセンターからはずいぶん前に降りたけど、まだまだ脇を固めているような気になっていない? いやいや、それもずい分なウノボレで舞台なんてとんでもない。66歳のあちこち不具合が出た身体がそれを証明しているではないの。

再開発は仕方ないけど自分まで押し出されるような気持になる
再開発は仕方ないけど自分まで押し出されるような気持ちになる
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六本木のハイブランド店に「闘志が湧いてくる」

それをちゃんと自覚したうえで、やれることをやっていこうよ。そんなことを思っているうちに午後3時。ラスト1本は品川駅から六本木ヒルズ行きにしたの。都バス旅の終着は「今」をキラキラ飾らせたら日本一であろう六本木ヒルズがいいなと思ったのよ。ここで若い人やハイブランドの店をのぞいたりすると、「ケッ、見ておれよ」と闘志が湧いてくるんだよね。

オバ記者
バス旅が自分を見つめ直すいい機会になった
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都バス、もう一本? いやいや、腹八分ということをこの年でやっと覚えた私。ふし目ふし目にはこうしてバスに揺られながら自分を見つめ直したいなと思いながら六本木から秋葉原の自宅までは地下鉄日比谷線で帰宅したのでした。

◆ライター・オバ記者(野原広子)

オバ記者イラスト
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1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。昨年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑 で、やせたの?』を出版。

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