お皿や丼の上で栄養バランスをとる
健啖家の先輩に教わったことの1つに、「上手な手抜き」がありました。
主食と主菜、副菜、汁物。それらがそろった「ザ・定食」を毎食用意するのは大変です。食事のしたくは、手をかけたらキリがなく、それだけで1日が終わってしまいます。
お元気な健啖家の先輩方はみなさん何かと忙しく、「きょうよう(今日用)」「きょういく(今日行く)」の予定が詰まっておられることも多い。そこで、調理はパパッと、上手に手抜きするわざを身につけています。
時短クッキングも元気の秘訣に
もともと料理が好きで、それなりに凝っていたけれど、高齢になってからは「気力、体力と相談して、時短クッキングを考えるのが楽しみになった」という人もいました。いまの自分にとって食事が負担にならないように、新しい習慣をつくったのですね。その柔軟さも、きっと元気の秘訣ではないかと感じました。
ある自宅療養中のがん患者さんに教わった時短メニューが、おいしくて、食べ飽きません。丼に冷凍うどん1人前を盛り、キャベツのせん切り、カットベーコン(または鮭ほぐし身)をのせ、電子レンジで加熱したあと、クリームチーズを和えて食べます。
お醤油をちらりとかけてもいいですし、かつお節、あおさのり、すりごま、砕いたナッツなどをちらしてもおいしい。
丼の上で「エネルギー源・タンパク源・野菜」がそろって、あっという間に食べられて、片付けも手軽なので気に入り、アレンジにもハマりました。スーパーで、これも使える、これもあり、とイメージするのも楽しいです。
「しっかり食べる」を手抜きでも、時短でも、おいしく、楽しんでいきましょう。
遊びに行く日は「ごはん3口増」で出かける
これはある先輩ご夫婦から聞き、なるほどとひざを打ち、以降おすすめしている習慣です。
70歳を過ぎたら、出かける日の朝ごはんは、ちょい大盛り。だいたいご主人は3口分、夫人は5口分、ごはんを余計に食べておきます。食パンなら、6枚切りのところを4枚切りに変えます。これは本当に理にかなっていて、このちょい大盛り作戦で、80~100kcal多めにエネルギーがとれます。
今日は遊びに行って、体を動かすから、ちょっと多めに食べておこう。自分の活動や体験から、新しい食習慣をつくって、元気を保っているのがカッコいい。まさに「自分が主治医」と思っておられると、ひざを打ったものでした。
太りたい人は、この作戦を毎食1カ月続けると、1日の総カロリーが240~300kcal増となり、およそ1㎏体重を増やせます。
◆教えてくれたのは:医学博士、大妻女子大学家政学部教授、管理栄養士・川口美喜子さん
専門は「病態栄養学」「がん病態栄養」「スポーツ栄養」。島根大学医学部附属病院で栄養管理室長を務め、NST(栄養サポートチーム)を立ち上げるなど、“食事をとおした治療”に積極的に参加。現在は、大学で後進を育てながら、地域医療のパイオニアである「暮らしの保健室」(東京都新宿区・江戸川区)や、がん患者とその家族が訪れるマギーズ東京(東京・豊洲)などにて、栄養指導、栄養ケアを行う。病気や日々の暮らしに問題を抱える多くの人のために、卓越した栄養学の知識を具体的な食事に落とし込んで支援している。著書に『老後と介護を劇的に変える食事術』(晶文社)など。