健康・医療

歯ぎしり・食いしばりを放置すると体の不調につながる可能性も 予防・対処法を薬剤師が解説

ベッドであくびをする女性
就寝中の歯ぎしりが体の不調と関係しているかも?
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寝てもなかなか疲れが取れなかったり、あごや歯に違和感があったりするのは、就寝中の歯ぎしりや食いしばりによる影響の可能性があるそうです。歯ぎしり・食いしばりを放置するとさまざまな体の不調につながることも。そう教えてくれた薬剤師の山形ゆかりさんに、歯ぎしり・食いしばりの対処法や予防につながる食材、漢方薬について教えてもらいました。

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歯ぎしり・食いしばりによる体への影響

歯ぎしり・食いしばりによって歯のすり減りや欠損が起こると、知覚過敏や歯周病を悪化させる要因になります。また、あごに強い圧力がかかるため、顎関節のずれや顎関節症を引き起こすことがあります。歯ぎしり・食いしばりを放置していると、顔の痛みや頭痛、肩こり、疲労感、睡眠の質の低下など、体のさまざまな部位で不調が起こることもあります。

歯ぎしり・食いしばりの対処法

歯ぎしり・食いしばりは、歯だけでなく体全体の健康にも影響します。就寝中に無意識に行っていることが多く、自分でコントロールするのは難しいですが、放置せずになるべく早めに対処しましょう。

食生活を見直してストレスを軽減する

歯ぎしり・食いしばりは噛み合わせの悪さや飲酒、喫煙による影響などのほかに、ストレスも原因のひとつとして考えられています。ストレスによって睡眠の質が下がり、睡眠の質が下がることで、ストレスが解消されずにさらに歯ぎしり・食いしばりが悪化するという負のスパイラルに陥っている可能性もあります。

耳の下の方を触る女性
歯ぎしりの原因の1つにストレスがある
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そこで注目したいのが、岡山大学およびノートルダム清心女子大学食品栄養学科の研究グループによる研究結果です。この研究で、睡眠中の歯ぎしりには、食物繊維不足が関係していることが明らかになりました。(岡山大学「睡眠中の歯ぎしりは食物繊維摂取量と関連している可能性を世界で初めて発見」https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r5/press20230524-2.pdf

そこで、食生活の見直しによって歯ぎしり・食いしばりを減らすアプローチについても後ほど紹介します。

過度なストレスがかかると腹痛や便秘などのお腹の不調が起こるように、腸内環境と自律神経には密接な関係があり、互いに影響しあっているといわれています。食物繊維を摂取して腸内環境を整えることで、自律神経のバランスが整って睡眠の質が上がり、歯ぎしり改善につながる可能性があるのです。

マウスピースで歯をガードする

歯ぎしり・食いしばりの代表的な対症療法は、マウスピース(ナイトガード)です。寝る前にマウスピースを装着して、上下の歯が直接触れないようにすることで、歯ぎしり・食いしばりによる歯や顎関節、体への負担を軽減します。

歯ぎしり・食いしばり用のマウスピースには、歯科医院で自分専用に作るものと市販品の2種類があります。歯科医院のマウスピース最大のメリットは、自分の歯に合ったものを作れるため、市販品のマウスピースよりも就寝中に外れたりずれたりする可能性が低く、しっかりと歯を保護できます。

マウスピースとケース
マウスピースは歯ぎしり・食いしばりの代表的な対症療法
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一方で、「できあがるまでに時間がかかる」「定期的な通院が必要である」「費用が市販品より高い傾向にある」ことがデメリットといえるでしょう。

市販品のマウスピースは、歯科医院のものより安価で、ドラッグストアなどで手軽に手に入ります。安価で手軽に使える市販品ですが、「自分の歯に合わない場合、違和感や不快感が生じ、歯ぎしり・食いしばりがさらに悪化してしまう可能性がある」のが大きなデメリットです。

できれば、市販品ではなく歯科医院で自分専用のマウスピースを作ることをおすすめします。

歯ぎしり・食いしばりの予防につながる食材

「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、18〜64歳の1日あたりの食物繊維摂取目標量を、男性21g以上、女性18g以上(厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf)としています。

日本人の食物繊維の1日平均摂取量は14gほどといわれているため、まずは1日3〜4g増やすことを目標にしましょう。

例えば、白米など精製度の高い穀類より未精製の全粒粉や玄米、大麦などのほうが食物繊維が多く含まれているため、白米を玄米に置き換えたり大麦を混ぜたりすると食物繊維の摂取量を増やすのに効果的です。

全粒粉パン
食物繊維を摂るには、未精製の全粒粉や玄米、大麦などのほうがおすすめ
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また、生野菜で食物繊維を摂ろうとすると、かさが多く、人によってはたくさんは食べられず摂取量が少なくなりがちです。煮たりゆでたりしてかさを減らして、食物繊維の摂取量を増やしましょう。

なお、食物繊維には、水溶性と不溶性の2種類があります。それぞれ体内での働きが違うため、偏らずにどちらも摂るのが大切です。

水溶性と不水溶性の両方を含む食品もあり、水溶性の食物繊維は、大麦(押し麦)、らっきょう、海藻類などに、不水溶性食物繊維はごぼう、ブロッコリー、だいこん、大豆、きのこ類などに多く含まれています。なかでも、「納豆」や「ライ麦パン」は2種類の食物繊維がバランスよく含まれている食品です。例えば、主食を押し麦ご飯、おかずには野菜やきのこ類を取り入れると、2種類の食物繊維をバランスよく摂取しましょう。

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