
「スマホ口臭」という言葉をご存じでしょうか? これは、『スマホがあなたをブスにする 歯科医師が教える1日3分でキレイを保つ方法』(大和出版)の著書・中城基雄さんが名付けたものです。中城さんは、口臭専門クリニックの院長として診察を続ける中、「スマートフォンを見続けると唾液に分泌が減少し、口臭の原因になる」ということに気づいたと言います。なぜ唾液が少なくなると口臭につながるのか。その理由と、唾液が出ているかどうかの見分け方を教えてもらいました。
なぜ唾液が減ると口臭がキツくなるのか
そもそも、唾液にはどのような働きがあるのでしょうか。中城さんは、口臭予防を含めて次の8つの作用があると話します。

唾液の働き8つ
【1】免疫作用…免疫グロブリン(IgA抗体)により、菌やウイルス感染症を予防する。
【2】自浄作用…歯や歯ぐき、歯の間に付着した食べカス、歯垢を自然に洗い流して、口腔内を清潔に保つ。
【3】抗菌作用…抗菌作用を持つ成分が、口腔内細菌の増殖を抑え、口臭・歯周病予防をする。
【4】酸・アルカリ中和作用…飲食により酸性やアルカリ性に傾いた口内の環境を緩衝作用で中和させ、虫歯を防ぐ。
【5】再石灰化作用…飲食の酸性成分により、歯のエナメル質が溶け出した表面を再修復し、虫歯を防ぐ。
【6】消化作用…消化酵素であるアミラーゼが食材のデンプンを分解し、消化を助ける。
【7】粘膜保護・潤滑作用…ウナギと同様の粘性のあるムチン成分が粘膜を保護し、嚥下、発声をスムーズにする。
【8】溶解・凝集作用…味を感じさせ、かみ砕いたり飲み込んだりしやすい塊にする。
唾液にこれだけの作用があることに、驚いた人も多いでしょう。
「唾液は口の中を潤すだけでなく、口内の細菌の増殖を抑え込み、口臭、虫歯、歯周病、感染症予防、食べ物の消化までしっかり助けて、私たちの健康を守ってくれるすばらしい物質なのです。ところが、スマートフォンを長時間見ると、うつむき姿勢によって唾液腺が圧迫され、『ストレス神経』と呼ばれる交感神経が過度な緊張状態になり、唾液が減少。8つの働きが鈍くなり、健康上さまざまな問題が出てくるのです」(中城さん・以下同)

唾液が少なくなるとさまざまな健康トラブルが
たとえば、次のような影響が出るそう。
「感染症に罹患しやすくなる、虫歯が増えたり歯周病が起こりやすくなる、口内がパサついて食べ物が飲み込みにくくなる、口内炎ができやすい、味覚が損なわれて濃い味付けばかりを好むようになる、などです」

さて、自分は唾液の量がどのくらいで、口臭はどの程度か。中城さんに、目安を測れるチェックリストを教えてもらいました。
自分の口臭を測るチェックリスト
□朝起きたとき、舌の表面に「おから」のような、指でかき取れる舌苔がついている
□就寝前、布団の中でスマホを30分以上使うことが多い
□スマホを使っている最中に、ふわふわした感じの「めまい」を感じる
□最近、濃い味でないと食事が美味しくない
□普段の呼吸が浅くなった気がする。うまく深呼吸できない
□胃もたれや便秘がずっと続いている
□アッカンベーと舌を出すと、表面にひび割れがある
□スマホを使っている最中、気がつくと眉間にシワが寄っている
□食事中、誤って飲食物が肺に入り、むせることが多い
□ 口が粘ったり、苦い味やしょっぱい味がしたりすることが続いている
★「はい」の数が1~3個…枕を共有するくらい近い距離で臭気が届くレベル。唾液分泌低下が始まっている。
★「はい」の数が4~6個…ファミレスなどの隣の席で、肩が触れるくらいの距離で臭気が届くレベル。唾液量がかなり低下している。
★「はい」の数が7~10個…カフェや接客などでテーブルを挟んだ対面でも臭気が届くレベル。ドライマウスを強く疑うレベル。
いかがでしょうか。
点数は少なくても、気になった項目があるかもしれません。少し中城さんに補足説明してもらいましょう。
舌で分かる唾液の量と口臭
「まず、就寝中は唾液の分泌が滞るため、口腔内の細菌が増殖して舌の表面に苔のように広がっていきます。朝起きて、唾液の分泌が開始されれば舌苔(ぜったい)は剝がれますが、唾液の分泌が衰えている人は普段から舌苔がつきやすくなります」
唾液の減少、舌苔の増加、口臭の発生はワンセットの関係だそう。明日の朝、早速チェックしてみてください。

もう一つ、舌の表面にひび割れがあるのも危険信号。
「体の中が乾いてくると舌の表面も乾き、舌が“干しシイタケ”のように萎縮してしまいます。舌の表面の中央に大きな縦型のひび割れが出てきて、さらに乾燥が進むと、その縦のひび割れから横方向に細かく枝分かれしたようにひび割れてきます。こうした症状は圧倒的に女性に多いと言われています」
スマホの見過ぎに要注意
夜寝る前に布団の中でスマホを見ている人は、その姿勢が問題。
「布団の中で片手にスマホを持って操作していると普段以上に顎を引いたうつむき姿勢になりがち。すると首元が圧迫されるため、唾液の分泌が滞ってしまいます」

また、起きているときに長時間スマホを使うことで、顎を引いた姿勢が長時間続くと、いわゆる「スマホ首」になり、ふわふわしためまいを感じるようになるとのこと。
「さらに、スマホの見過ぎで猫背になり、胸郭が狭くなると、自然に呼吸が浅くなります。すると血液中の酸素が不足して集中力が続かず、ぼーっとしてしまったり、慢性疲労や眠気、頭痛、自律神経失調症などの症状が出てしまいます。スマホの使用中、気づくと眉間にシワが寄っている人も、過緊張状態の表れかもしれません。過度な緊張状態が長く続くと唾液の分泌が減り口臭が発生しやすくなります」
スマホを30分以上使ったら一度顎を上げて、腹式呼吸で深呼吸すると、リラックス神経も働き唾液の分泌も再開すると、中城さんはすすめています。

食事中に分かる唾液量の低下や口臭
食事では、味覚の変化で唾液の減少を測ることも可能。
「唾液が減少すると、味を感じる『味蕾(みらい)』という細胞への刺激が少なくなり、濃い味付けの食事でないとおいしく感じられなくなるのです」
また、唾液が少ない状態だと食べ物をうまく飲み込めず、肺に飲食物などと一緒に細菌が入る誤嚥性肺炎を起こしやすくなります。気をつけましょう。
なお、食べたものに関係なく、苦い味が、しょっぱい味がずっと口の中に残っている、口の中に粘り気があるという違和感は、舌がカラカラに乾いている状態といえます。

スマホを触る時間、舌の状態、味覚など、日常的に意識してみると、唾液の状態が分かるかもしれません。意識的に唾液を出すように心掛けたいものですね。
◆教えてくれたのは・歯科医師・中城基雄さん

歯科医師、鍼灸師。口臭専門クリニック「中城歯科医院」院長。1984年に東京歯科大学を卒業し、1988年に日本大学大学院歯学研究科修了後、中城歯科医院院長に就任。日本歯科東洋医学会、日本東洋医学会、日本歯科麻酔学会所属。日本歯科色彩学会理事、全日本鍼灸学会認定師。ラジオ、新聞、雑誌などのメディア露出も多数。近著に『スマホがあなたをブスにする 歯科医師が教える1日3分でキレイを保つ方法』(大和出版)がある。