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「すぐにしょうゆをかける」加藤茶のために妻・加藤綾菜が医師から学んだ「減塩アイディア」

黄色いエプロンをした女性
加藤綾菜さんが医師から学んだ「減塩アイディア」とは?
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『加藤家の食卓 医師と栄養士の先生に長生きする食事の作り方を習いに行ってきたレシピ集』(アスコム)を上梓した加藤綾菜さん。加藤茶さんと2011年に結婚し、高齢の夫を支えるためにさまざまな資格を取得するほか、食生活の改善にも力を入れています。その1つの減塩食について、加藤さんが医師から教えてもらった調理の工夫や、それを踏まえて加藤さんが開発したレシピを紹介します。

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減塩食を楽しむ調理の工夫

減塩の工夫について加藤さんに教えてくれたのは、国立循環器病研究センター(国循)の栄養管理室で室長を務める田中勝久先生です。

減塩食は食が進まないということが悩みだった加藤さんですが、味覚の錯覚によって、だしを効かせると塩分が少なくてもおいしく感じるという田中先生の教えから「万能 氷だし」を考案しました。さらに加藤さんが学んだ減塩の工夫について紹介します。

追いがけ分の調味料を先に取り分けておく

どんなに工夫して減塩料理を作っても、「夫はひと口食べたらすぐに、しょうゆを足してしまう」のが加藤さんの悩み。

その対策として田中先生は、追いがけする分を計算に入れて料理の味付けをすることを提案します。

「例えば、煮物を作るとして、綾菜さんが味付けをするときにしょうゆは少なめにします。しょうゆは加熱すると、香りが飛んでしまうので、仕上げに残りのしょうゆをかけることで、味の存在感が出るはずです」(田中先生・以下同)

また、「あらかじめ使う分だけ取り分けておけば、かけすぎることもありません」というアドバイスに、「自分で味を足したという達成感で、意外と満足してくれるかもしれません」と加藤さんも納得!

水炊きとしょうゆ
塩分が多くなりがちな料理は後がけ分の調味料を減らして調理(Ph/photoAC)
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「煮物はできあがってすぐ食べるよりも、しばらく置いておくことで、食材の中まで調味料の味とだしのうま味が染み込みます。食べる前に温めて、そのタイミングで追いがけの分のしょうゆをプラスすれば、かなり塩味の存在感があると思いますよ」

さらに、追いがけのしょうゆと同様に、塩を使った調理法でも最後にかけたほうが粒が残るため、塩味を感じながら食べることができるという気づきが加藤さんにありました。

お酢やスパイスなどで飽きない味に

そして、塩分に関係のない香辛料や酸味のあるものを食卓に置いておくというのもおすすめだそう。

「七味唐辛子やこしょう、山椒など、辛みのあるようなものや少し刺激になるような香辛料を使うと、塩分が少なくてもおいしく感じます。酸味も同じです。お酢や、レモンなどの柑橘類も活用してみてください。味が決まらないときは黒酢を使うといいですよ」

そのほか、香味野菜のしょうがやにんにくも、上手に使うことで味の幅が広がると教えてもらいました。

しょうがを入れたスープ
にんにくやしょうがで風味をアップ(Ph/『加藤家の食卓 医師と栄養士の先生に長生きする食事の作り方を習いに行ってきたレシピ集』(アスコム)より)
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野菜の切り方でも減塩ができる

加藤さんはこれまでにも減塩食を学び、「野菜の切り方でも調味料が減らせると聞いて、実践しています」と話します。その理由についても田中先生から詳しく教えてもらいました。

「調味料が染み込むのは、野菜の切り口からです。食材の体積に対する表面積が大きくなると、調味料の吸収率が上がります。ですから、できるだけ食材は大きいままで調理して、あとから切るのがいいと思います」

具体的には、素材丸ごと→角切り→千切りの順に吸収率が上がります。ちなみに、かき揚げを作るときに油がたくさん必要なように、揚げ物の油の吸収率でも同じことがいえるといいます。

魚料理を減塩でおいしく仕上げるコツ

加藤さんはさらに、魚料理のコツについても質問。減塩しながらもおいしく作る方法を教えてもらいました。

「たとえば、魚の照り焼きを作るときには、魚をジッパーつき保存袋に入れて、だしと調味料、そしてゆずなどの柑橘や香辛料を入れて、1時間ほど漬け込んでおきます。そうすることで、香りが立って、少ない塩分でも満足感のある味に仕上がります」

ぶりの照り焼き
魚の照り焼きは焼く前に漬け込んで味付け(Ph/photoAC)
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そのほか、フライパンで魚を焼くときには小麦粉をふってから焼くことで味がつきやすくなり、また、油をひいて焼くことも少ない調味料でおいしく感じられる方法です。

減塩食の注意点

調理の工夫をすることで、我慢しすぎずにバリエーション豊かな減塩食を楽しめることがわかりました。しかし、良かれと思ってやっていることが逆効果になってしまうこともあるので、注意点も押さえておきましょう。

昆布にはナトリウムが多い

かつお節以外に、いりこや干ししいたけなど、だしのバリエーションを増やすことで、より食事を楽しむことができます。ただし、昆布はナトリウムを多く含んでいるので減塩という意味では不向きだといいます。さらに、塩分を排出する作用のあるカリウムも多いことも、場合によってはデメリットになるとのことです。

「加藤さんのご主人は腎臓が悪いとお聞きしました。昆布はナトリウムもありますが、カリウムも多いので、注意が必要です。腎臓のためにも減塩食を実践していると思いますから、カリウムが多いと腎臓に負担がかかって本末転倒です」

食事量や栄養素も意識

減塩食と言っても、食べ過ぎてしまうと塩分の摂取量は増えてしまいます。一方で、減塩を徹底しすぎて、食事の全体量が少なくなってしまうのもとくに高齢の場合は注意が必要です。

空の茶碗とはし
減塩を意識しすぎて食事量が減りすぎてしまうのは要注意!(Ph/photoAC)
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「食事の全体量を少なくすれば、もちろん減塩が簡単に叶います。でも、80歳になってから痩せてしまうのは、やっぱりよくないのではないかと心配していました」と話す加藤さん。

田中先生は「減塩が徹底できても食事量を減らしすぎてしまうと、筋肉が落ちやすくなるので、高齢の方は注意が必要です。三大栄養素である炭水化物、たんぱく質、脂質のバランスも意識するとよいでしょう」と説きます。

厚生労働省の「日本人の食事摂取基準」2020年版によると、75歳以上の男性(身体活動レベルⅡ)のエネルギー必要量は約2100kcal。三大栄養素に加え、体の調子を整えるビタミン・ミネラル、骨や筋肉を作るカルシウム、お腹の調子を整える食物繊維を摂るのが理想だといいます。

そのほかにも、お酒をたくさん飲む人はアルコール代謝に使われるマグネシウムも意識的に摂るのがいいそうです。

「具体的には大豆製品やナッツ類がおすすめです。ナッツを食べる習慣がないなら、サラダやスープの上に砕いたりして、食事としてとるなど、工夫してみてください」

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