
毎年3月1日から3月8日は厚生労働省が定めた「女性の健康週間」ということを知っていますか? ライフステージによってさまざまな悩みが生まれる女性の健康問題の中でも、とくに更年期の悩みにフィーチャーし、不調の改善に役立つ栄養素や食材を管理栄養士の小原水月さんに教えてもらいました。
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「女性の健康週間」の取り組み
女性の健康週間は女性が健康で充実した日々を過ごせるよう、女性の健康づくりを支援する取り組みです。

たとえば、厚生労働省が行う「スマート・ライフ・プロジェクト」では今年、女性のやせすぎと健康の関係をテーマにコンテンツがウェブで公開されています。また、地方自治体や企業がイベントを主催し、子宮頸がんや乳がんなど女性特有の疾患に関する情報発信や検診の呼びかけ、更年期障害に関する相談受付なども行われます。
更年期の悩みの予防・改善に役立つ栄養素
女性の健康というテーマにおいて外すことができないのが、更年期にあらわれるさまざまな不調です。これに関係しているのが、体を作る基本となる食生活です。大豆イソフラボン、カルシウム、ビタミンEを、とくに更年期に意識して摂りたい理由について詳しく紹介します。
大豆イソフラボン
大豆イソフラボンは、女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをする成分です。女性ホルモンの分泌が急激に減り、ホルモンバランスが崩れることで、不調を感じやすい更年期に、大豆イソフラボンが補足的に働くことが期待されています。
また、大豆イソフラボンが腸内細菌によってエクオールという物質に代謝されると、女性ホルモンのような働きは、さらに強くなります。

一方、大豆イソフラボンは過剰摂取による健康被害の懸念もあります。大豆イソフラボンの1日の摂取目安の上限値は70〜75mg(食品安全委員会「大豆イソフラボン」https://www.fsc.go.jp/e-mailmagazine/sousyuhen.data/09.pdf)と設定されています。短時間で大量に摂取しやすい豆乳や豆乳飲料などの飲み物よりも、他の栄養素も含まれバランスよく摂取できる大豆や豆腐、油揚げ、がんもどき、納豆などで大豆イソフラボンを摂りましょう。
カルシウム
閉経後の女性はエストロゲンの減少により骨密度が低下しやすくなります。骨折や骨粗鬆症の予防のためには、カルシウムが欠かせません。
カルシウムは牛乳や乳製品以外にも魚介類、藻類、豆類、種実類、野菜類に含まれています。特定の食品にこだわらず、さまざまな食材を摂りましょう。
ビタミンE
ビタミンEは女性ホルモンの分泌の調整や代謝に関わるビタミンで、更年期の症状を緩和する効果も期待されています。抗酸化作用を持ち、ストレスなどで発生した活性酸素のダメージから体を守る働きがある栄養素です。

更年期は女性ホルモンの分泌が急激に低下することで自律神経が乱れ、血行不良がおきやすくなります。この血行不良により、更年期には冷え性や頭痛、肩こりなどの不調があらわれやすくなるのです。また、女性ホルモンのエストロゲンは血管を保護する働きもあります。女性ホルモンの分泌量が低下すると、動脈硬化や血栓などのリスクが高まります。
ビタミンEには血管拡張作用があるため、血流を改善することで、冷え性や頭痛、肩こり、動脈硬化や血栓などのリスクの低減にも役立つ栄養素です。
ビタミンEはアーモンドや落花生などの種実類、米や小麦などの穀類、スケトウダラやブリなどの魚介類、油揚げや納豆などの大豆製品、かぼちゃやニラなどの野菜類といった食品に含まれています。ビタミンEは光に弱いため、食材を保存する際は光の当たらない場所で保管しましょう。
更年期には避けたほうがよい食材はある?
女性ホルモンの分泌量が低下する更年期には、特に不調につながりやすくなる食品があります。
たとえば、睡眠の質を下げる作用がある、アルコールやカフェインを含む飲料の摂り方に注意しましょう。睡眠の質の低下は、女性ホルモンの減少で起こる自律神経の乱れを助長し、更年期症状が悪化する懸念があります。厚生労働省では、睡眠に心配がある場合はアルコールを避ける、就寝前の4時間以内にカフェインを摂らないことを推奨しています。

また、脂質や糖質の摂り方も見直しましょう。女性ホルモンのエストロゲンは脂質や糖の代謝にも大きく関わっており、エストロゲンの減少に伴い脂質代謝機能の低下や糖の代謝を調整するインスリンの働きが低下します。このように、エストロゲンによる保護がなくなるため、更年期からは脂質異常症や糖尿病などに注意が必要です。
日々の食事を見直し、油分が多い炒め物や揚げ物は煮込んだり蒸したりした料理に変更して脂質を控えたり、スイーツや甘い飲み物などはたまのご褒美程度の頻度で楽しむといいでしょう。
更年期の悩みの予防・改善に役立つ漢方薬
更年期のお悩みの予防や改善には、食事によるセルフケア以外に漢方薬も効果的です。漢方薬は西洋薬とは異なり、体質を根本的に改善する役割を担うというのも特徴です。自然由来の成分でできているため、一般的に副作用が少ないといわれています。

更年期障害においては「自律神経を整えてイライラや落ち込みなどの精神症状を改善する」「血流を改善してホットフラッシュやほてりなど血管に関する症状を改善する」といった働きをもつ漢方薬で更年期症状へアプローチします。
おすすめの漢方薬
・加味逍遙散(かみしょうようさん)
とくに更年期障害や月経異常などの女性特有の症状に悩む女性に向いている漢方薬です。血行の促進や自律神経の調整などの効果が期待でき、更年期症状や疲れやすく、イライラする、めまいや頭痛がするなどの不定愁訴がある人に用いられます。
・桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
上半身はのぼせているのに下半身が冷えるというタイプの人に向いている漢方薬です。血行をよくしてのぼせや冷えを改善するほか、ホルモンバランスを整える効果も期待できます。更年期障害やだぼく、肩こりにも効果的です。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれたのは:管理栄養士・小原水月さん

おはら・みづき。管理栄養士。ダイエット合宿所、特定保健検診の業務に携わりのべ600人以上の食事と生活習慣をサポート。自身が漢方薬を使用して体調回復した経験から、栄養学と漢方を合わせたサポートを得意とする。あんしん漢方(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)などで執筆中。