
「更年期の女性は、ホルモンの影響で夫の言動にイライラしやすく、夫婦喧嘩が起こりやすい傾向があります」と話すのは薬剤師の山形ゆかりさん。そこで、夫婦喧嘩を減らすためのアンガーマネジメントや食事、漢方薬について教えてもらいました。
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夫婦喧嘩の原因は許容量を超えたネガティブな感情
「夫婦喧嘩の原因で多いのは何? 100人に聞いた体験談と仲直りのコツのまとめ」のアンケートでは、夫婦喧嘩の原因は、子どものことや子育て方針の違い、家事分担や金銭面について、コミュニケーション不足などが挙げられています。(小学館:Domani https://domani.shogakukan.co.jp/303430)
夫婦喧嘩の発端になる「怒り」は、「悲しい」「くやしい」「つらい」「苦しい」「不安」「さみしい」などのネガティブな一次感情が蓄積され、許容量を超えたときに生まれる二次感情です。

また、怒りは相手との関係性が近くなるほど、強く大きくなりやすい性質があります。一つひとつの原因は日常の小さな不満やちょっとした意見の相違などでも、それらが積み重なって許容量を超えたネガティブな感情が、強く大きな怒りに変わり、夫婦喧嘩に発展してしまうことがあるのです。
40代以降の女性はイライラしやすい
40代以降は、更年期障害によってよりイライラしやすくなることがあります。更年期障害とは、自律神経失調症に似たさまざまな身体的・精神的な症状のことです。具体的には、頭痛やめまい、肩こり、のぼせ、ほてり、耳鳴り、発汗、動悸、息切れ、疲れやすいなどの身体的な症状と、イライラ、不眠、うつ、不安感などの精神的な症状があります。
更年期障害の主な原因は、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌量の急激な低下によるホルモンバランスの乱れです。そこに、ストレスや疲労、睡眠不足、不規則な生活などが加わると、自律神経が乱れ、イライラのような精神的な症状が悪化しやすくなります。

怒りをコントロールする「アンガーマネジメント」
前述の通り、40代以降は更年期障害の影響もあり、些細なことでイライラしがちです。しかし、怒りを我慢すると、ストレスが蓄積して抑うつ状態になることもあります。
そこで、ただ我慢するのではなく、「怒りを逃がす」「上手に怒る」など、怒りと上手に付き合っていくためのコントロール方法「アンガーマネジメント」を身につけるのがいいでしょう。
アンガーマネジメントを実践することで、夫婦円満を目指すことが期待できます。
アンガーマネジメント:怒りを逃がす
夫の言動にカッとなったときは、まずは数秒間をやり過ごして怒りを逃がしましょう。
たとえば、心のなかでゆっくり数字をカウントする、深呼吸をする、何も考えないよう頭の中を真っ白にして思考を停止する、人生最大の怒りと比較してみるなど、気をそらすことで衝動的な行動を抑えやすくなります。そうして数秒間やり過ごすことで、冷静さを取り戻すことができます。

アンガーマネジメント:怒りの記録
数秒間をやり過ごしても怒りの原因が解決しないままでは、モヤモヤが残り、さらにイライラする悪循環に陥ってしまいます。
実は怒りの裏には、夫にこうしてほしいという期待が隠れているのです。そこで、モヤモヤを解消するためには怒りの記録をつけることが有効です。これを活用して上手に怒ることで、自身の期待が実現するように相手を動かします。
【1】怒りを感じたら、まずは理性が介入するまでの数秒間をやり過ごし、落ち着く。
【2】自分が何に怒りを感じたのか、どうしたかったのかをメモする。
【3】後日、メモを元に怒りの理由やこれからどうしてほしいかを夫に伝える。
ただし、嫌だったことをそのまま伝えると、また喧嘩になる可能性があります。「こうするべき、こうしてほしい」などの命令ではなく、「こうしてくれたらうれしいな。どうかな?」とリクエスト(提案)の形で伝えるのが有効です。
積もり積もった気持ちを、つい夫にぶつけて発散したくなることもあるでしょう。しかし、アンガーマネジメントを活用して問題解決を優先したほうが、結果的に自分のイライラやストレスを大きく減らすことができます。
イライラに効く食べ物
普段からイライラする気持ちを抑えるためには、緊張や興奮を鎮めて、イライラやストレスをやわらげる効果が期待できる「カルシウム」を食事に取り入れるのがいいでしょう。
カルシウムの含有量が多い食品は、乳製品(牛乳、チーズ)や小魚(しらす干し、ししゃも)、大豆製品(木綿豆腐、厚揚げ)などです。

なかでも、乳製品に含まれるカルシウムは、ほかの食材に比べて吸収率が高い傾向があります。とくに、牛乳を濃縮して作られたチーズは少量で効率よくカルシウムを摂取できる優れものです。
おやつや晩酌のお供にチーズを食べたり、チーズを使った料理を献立に加えたりして、生活に取り入れてみましょう。
イライラには漢方薬も役立つ
アンガーマネジメントや食事で効果を感じられなかった人は、イライラしやすくなる原因である、ホルモンバランスや自律神経の乱れ、ストレス、過労などにアプローチして根本改善を目指す漢方薬を取り入れるという方法もあります。

おすすめの漢方薬
・加味逍遙散(かみしょうようさん)
女性ホルモンの乱れを整えることで、気分の落ち込みやイライラなどの更年期の精神的症状に働きかけます。のぼせ感があり、疲れやすい人に用いる漢方薬です。
・抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)
カッとなりやすい、イライラしやすいなどの興奮を抑え、精神の安定に働きかけます。体力が低下している人に用いる漢方薬です。
漢方薬を始める際の注意点
漢方薬は食事の工夫などでは不調が改善しなかった人でも、効果を感じる場合が多くあります。
ただし、漢方薬はその人の体質に合っていないと、よい効果が見込めないだけでなく、副作用が起こることもあります。自分に合う漢方薬を見つけるために、服用の際は漢方に詳しい医師や薬剤師に相談するのが安心です。
◆教えてくれた人:薬剤師・山形ゆかりさん

やまがた・ゆかり。薬剤師、薬膳アドバイザー、フードコーディネーター。病院薬剤師として在勤中、食養生の大切さに気付き薬膳の道へ。牛角・吉野家ほか薬膳レストラン等15社以上のメニュー開発にも携わる。「健康は食から」をモットーに健康・美容情報を発信する「Medical Health -メディヘル-youtubeチャンネル」(@medicalhealth–7900)で簡単薬膳レシピ動画を公開するなど精力的に活動している。症状・体質に合ったパーソナルな漢方をスマホ一つで相談、症状緩和と根本改善を目指すオンラインAI漢方「あんしん漢方」(https://www.kamposupport.com/anshin1.0/lp/)でも薬剤師としてサポートを行う。