気温の変化で自律神経が揺らぐこの時期は体調を崩しやすく、コートやカーディガンを脱いで薄着になると腕やお腹まわりの贅肉にショックを受ける。そんな春の不調や悩みを一挙に解決するのが「腸」。ごっそり出して、スッキリきれいにする「腸内洗浄」食品を一挙大公開!
監修・取材
以下の10人の「専門医」と「食のプロ」におすすめの順位と習慣を挙げてもらい、1位を10点、2位を9点、3位を8点、4位を7点、5位を6点、6位を5点、7位を4点、8位を3点、9位を2点、10位を1点として集計。3点以上を掲載した。
・石黒成治さん(消化器外科医)
・石原新菜さん(イシハラクリニック副院長)
・岩崎真宏さん(管理栄養士・医学博士)
・金丸絵里加さん(管理栄養士)
・川本徹さん(消化器外科医、犀星の杜クリニック六本木院長)
・佐野こころさん(医学博士)
・清水加奈子さん(管理栄養士)
・中沢るみさん(管理栄養士)
・真野わかさん(養腸家、セラピスト)
・望月理恵子さん(管理栄養士)
男性約40人に1人、女性約20人に1人が便秘を自覚
「病名がつくほどではないが、不快な症状」の代表格として挙がる便秘。男性よりも女性の方が悩む人は多く、厚生労働省の国民生活基礎調査(2022年)によると、男性は約40人に1人、女性では約20人に1人が便秘の症状を自覚しているという。不快感だけでなく、あらゆる病気の引き金にもなりかねない。
イシハラクリニック副院長の石原新菜さんが言う。「便秘が続き、悪玉菌が増えて腸内環境が悪化することでむくみや肌荒れを引き起こすばかりか、動脈硬化や生活習慣病、アルツハイマー型認知症の発症リスクが高まるとも指摘されています。いまや健康も美容も、要は腸。腸年齢を若く保つことが健康長寿に直結すると考えていいでしょう」
消化器外科医で、犀星の杜クリニック六本木院長の川本徹さんも続ける。
「腸内環境は、体の健康だけでなく心の健康にも関連している。整腸することでうつや不眠、イライラなども解消される効果も期待できます」
心がけたい 毎日の食事による腸内クレンズ
腸内にたまった毒素をしっかり出して、スッキリした美腸にするために心がけたいのが毎日の食事による腸内クレンズ。専門医と食のプロたちがダントツで推したのが1位の納豆だ。
自身も1位に挙げた管理栄養士の金丸絵里加さんが解説する。
「水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方がバランスよく含まれ、オリゴ糖も豊富です。オリゴ糖は善玉菌の一種であるビフィズス菌を増やして整腸作用を促し、便秘改善につながります」
消化器外科医の石黒成治さんも同じく1位に回答。
「最近の研究では、納豆菌は腸内の有毒な細菌の増殖を防ぐことがわかってきた。血栓の主成分であるフィブリンを分解するナットウキナーゼを生成し、腸の血流改善効果も期待されます」
同じ大豆食品では大豆やみそもランクイン。金丸さんが言う。
「納豆に含まれる菌は生きたまま腸に届いて善玉菌を増やします。大豆やみそにも納豆同様のオリゴ糖や食物繊維が含まれるので、毎日の食卓に並べながらこまめに続けて摂ることが大切です」
ごっそり出る!腸内洗浄 最強食品ランキング
1位 納豆 67点
「食物繊維が豊富で菌も同時に摂れる。たんぱく質も豊富で、ナットウキナーゼは血液をサラサラにする効果も」(石原さん)
「水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方を含み、毎日の食卓に取り入れやすい」(佐野さん)
「善玉菌のエサとなり、善玉菌の増殖を促したり便のカサを増やし腸を刺激して排便を促す効果が期待できる」(望月さん)
2位 ヨーグルト 55点
「善玉菌を直接摂取できるので便通がよくなる」(川本さん)
「さまざまな乳酸菌が豊富で便秘改善だけでなく、便秘による肌荒れにも効果大。便秘症なら朝食に食べるのがおすすめ」(清水さん)
「プロバイオティクス(生きた微生物)として知られる乳酸菌を含み腸内細菌の構成を変化させる。ビフィズス菌や乳酸菌が作る酢酸や乳酸が蠕動運動を活発にする」(真野さん)
3位 りんご、ごぼう、きのこ類 34点
「りんごに含まれる水溶性のペクチンが整腸作用をもたらし、ポリフェノールやプロシニアジンも豊富で赤ワインの20倍の抗酸化作用がある。むくみを抑えるカリウムもたっぷり」(石原さん)
「ごぼうに含まれる水溶性食物繊維のひとつ、イヌリンは善玉菌のエサになり短鎖脂肪酸という有機酸を分泌して免疫細胞の機能を高める」(金丸さん)
「きのこには不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方がたっぷりと含まれ、腸内の炎症をコントロールするためのビタミンDも豊富」(石黒さん)
6位 キムチ 30点
「アブラナ科の野菜である白菜には強力なピロリ菌と闘う化合物であるスルフォラファンが含まれる。プロバイオティクスが豊富で健康上の利点が多い」(石黒さん)
「乳酸菌は腸内環境を整え、キムチに含まれる植物性乳酸菌は腸に届きやすい。唐辛子のカプサイシンは腸の蠕動運動を促進」(清水さん)
7位 キウイ 24点
「キウイは蠕動運動を促し便をやわらかくする食物繊維や、水分を集めるマグネシウムが含まれる。悪玉菌の働きを抑え、善玉菌を増やして腸内環境を整える効果も」(望月さん)
8位 バナナ 21点
「コンビニでも購入できて手に入りやすく、包丁などを使わずに簡単に食べられる。善玉菌のエサとなるオリゴ糖が豊富で善玉菌を増やす」(佐野さん)
「腸内で水分を集め、便をやわらかくするマグネシウムを含み、食物繊維やオリゴ糖も豊富。朝食でも手軽に食べられる」(中沢さん)
9位 もずく 20点
「アルギン酸やフコイダンといった水溶性食物繊維を多く含み、腸へ届くとゼリー状に変化して腸内の余分な栄養素や有害物質を取り込んで排出してくれる」(金丸さん)
「水溶性食物繊維が豊富で、調理をせずに食べられて食卓に取り入れやすい」(佐野さん)
10位 海藻類 19点
「水溶性食物繊維が豊富でビタミン、ミネラルも豊富。納豆同様、ネバネバ成分は胃粘膜を保護して消化吸収を助ける」(石原さん)
「水溶性食物繊維が便をやわらかくし、宿便などをスムーズに排泄する効果が期待できる。善玉菌のエサとなり整腸作用も」(望月さん)
11位 キャベツ 18点
「キャベツは野菜の中でも食物繊維が豊富。手に取りやすい価格で、さまざまな料理に使いやすい」(佐野さん)
12位 玄米 14点
「食物繊維が豊富で、腸内にある悪玉菌など有害物質の排出を促進。善玉菌を増やして腸内環境を改善し免疫力を最大限引き出す」(清水さん)
「玄米に多く含まれる不溶性食物繊維は便の量を増やして腸管を刺激し、便通を整える働きがあるほか有害物質を排出する働きも」(真野さん)
13位 アボカド 13点
「アボカド1個(約140g)に含まれる食物繊維は7.8gとかなり多い。脂肪分も小腸で吸収されにくいオレイン酸が主体で腸を刺激し、滞った便をスルリと出す効果が期待できる」(金丸さん)
「食物繊維が腸内の有害物質やコレステロールを吸着して体外に排出する」(真野さん)
14 ブロッコリー、プルーン 12点
「ブロッコリーは食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富。特に新芽であるブロッコリースプラウトに含まれるスルフォラファンには便秘の原因となる酸化ストレスを防ぐ作用を高める働きがある」(真野さん)
「プルーンには食物繊維、鉄分、カリウムが多く含まれ便秘解消や、美容効果が期待できる」(中沢さん)
16位 オリーブオイル 11点
「便の滑りがよくなるので、便秘がちな子供に小さじ1杯を飲ませることも。ビタミンなど美容効果も期待できる成分も含まれる」(石原さん)
「オレイン酸が含まれ、小腸まで届いて腸を刺激してくれる。腸内の潤滑油として働き、たまった便の滑りをよくする効果にも期待」(清水さん)
17位 わさび 10点
「わさびやマスタードにはアリルイソチオシアネートという辛み成分が含まれ、セロトニンの分泌を促進し、腸の蠕動運動を促す。アリルイソチオシアネートは大根の辛みや玉ねぎにも多く含まれる」(川本さん)
18位 玉ねぎ、牛乳、ペパーミント 9点
「ネギ属の野菜である玉ねぎにはケルセチンやイヌリンなど腸内細菌の整腸を促進する物質が豊富に含まれる」(石黒さん)
「牛乳の乳糖が腸内細菌によって分解され、蠕動運動を高めて便秘を防ぎ便をやわらかくして排便効果を促す」(望月さん)
「ハーブ野菜の中でも特にペパーミントに含まれるメントールが蠕動運動を促進する」(川本さん)
21位 しそ、いかすみ 8点
「しその総食物繊維はごぼう以上。特に不溶性食物繊維はごぼうの倍以上を含み、マグネシウムも豊富なため便に水分を与えやわらかくしてくれる。抗酸化作用も高く、大腸がん抑制にも効果」(岩崎さん)
「いかすみには粘液の主成分であるムチンの一種、ムコ多糖類が多く含まれ、整腸作用がある。パスタやリゾットとして取り入れる場合、少しまぶす程度ではなくたっぷりと絡ませて使って」(川本さん)
23位 にんにく、オクラ 7点
「にんにくには善玉菌のエサとなる食物繊維とオリゴ糖が豊富に含まれ、腸内環境を整える。主成分のアリシンは強い殺菌作用があり腸内の病原菌を殺菌する効果も」(石黒さん)
「オクラの粘り成分であるペクチンが腸の壁を保護してスムーズな便通をサポート」(岩崎さん)
25位 モロヘイヤ、ぬか漬け、オートミール 6点
「モロヘイヤはやわらかい便を作り、便をスムーズに移動させる水溶性食物繊維と、腸を刺激する不溶性食物繊維をバランスよく含み便意を促す働きが期待できる」(岩崎さん)
「ぬか漬けには乳酸菌、酪酸菌、酵母菌など菌の種類が豊富に存在し、漬ける野菜に含まれる食物繊維との相乗効果で整腸に働きかける」(望月さん)
「オートミールは水溶性、不溶性の食物繊維が豊富。たんぱく質や鉄分、カルシウム、ミネラルなどもしっかり含まれる」(石原さん)
28位 しょうが、みそ 5点
「しょうがに含まれる主成分で辛みを構成するジンゲロールには胃の機能改善効果、腸を動かす作用がある」(石黒さん)
「みそは麹で発酵しており、抗酸化作用の強いメラノイジンも多く含む。みそ汁など加熱して菌が死んでも、死骸が善玉菌のエサになって腸内環境を整える」(石原さん)
30位 にんじん、山いも、ココア 4点
「にんじんは食物繊維が豊富で、クロロゲン酸を含み便通が期待できる。オレンジの色素成分はカロテノイドというβカロテンで、不足すると脂肪の吸収が弱まり下痢になる場合がある」(岩崎さん)
「粘り気のある山いもはムチンの一種であるペクチンを含み、善玉菌を増やし腸粘膜を刺激して便通をよくする」(川本さん)
「ココアは食物繊維が多く、マグネシウムも豊富。リラックス効果もあり、腸を動かす副交感神経を優位にする。同じくマグネシウムが豊富な豆乳と合わせて飲むと便秘改善効果が高まる」(中沢さん)
33位 よもぎ、豆乳、ゆで大豆、酢 3点
「よもぎは不溶性食物繊維やビタミンA、鉄分などの栄養成分を豊富に含み、免疫力の向上、粘膜や皮膚の維持などに役立つ。マグネシウムも含み便通を整える」(岩崎さん)
「豆乳に含まれる大豆オリゴ糖は大腸まで届き、乳酸菌やビフィズス菌のエサとなって腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整える」(清水さん)
「腸の動きの低下は女性ホルモンの変化も影響するため、女性ホルモン作用のあるイソフラボンを含む大豆は便秘改善に役立つ」(金丸さん)
「酢は酢酸菌で発酵されている発酵食品。色がにごっているにごり酢や黒酢がおすすめ。内臓脂肪を減らす効果も」(石原さん)
腸内洗浄最強食品ランキング1位は納豆
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りんごは皮ごと食べて。腸内の善玉菌のエサとなるペクチン
2位のヨーグルトや3位のきのこ類、6位のキムチなど腸活食品の代表格が上位を占める中、目立つのが3位のりんご。養腸家でセラピストの真野わかさんは「皮ごと食べる」ことを推奨する。
「りんごの皮に含まれる食物繊維のペクチンは、腸内の善玉菌のエサとなって短鎖脂肪酸を作ったり、悪玉菌の増殖を抑えたりして、腸の動きを活性化してくれます」
管理栄養士の中沢るみさんもおすすめ食材にりんごを挙げた。
「即効性はありませんが、食物繊維が含まれ、老若男女、赤ちゃんでも食べられる天然のやさしい整腸剤です」(中沢さん・以下同)
りんごとは対照的に、即効性を求める場合に中沢さんがイチオシするのが14位のプルーン。
「夜の食事量を少なめ、もしくは早めに食べてしまい、翌朝起きてすぐ、胃が空になっているところに冷たいプルーンジュースを飲むと下剤くらいの効果が得られます」
腸にやさしい便秘薬 酸化マグネシウム。便が硬くなるのを防ぐ
腸活に欠かせない食物繊維が豊富に含まれるとして重宝される海藻類だが、とりわけ“ご指名”が多かったのが9位のもずくだ。
「水溶性食物繊維が豊富で、マグネシウムも含まれます。酢と合わせることで、食物繊維と酢酸がダブルで善玉菌を増やしてくれる」
実は、腸内洗浄に欠かせないのが、もずくにも含まれるマグネシウム。1位の納豆や7位のキウイ、8位のバナナ、30位のココアなどにも含有量が多く、「腸内で水分を集め、便が硬くなるのを防ぎ、出しやすくする効果がある」という。昨今、“腸にやさしい便秘薬”として手に取られる酸化マグネシウムは、まさにこの作用を利用したもの。普段の食品でも取り入れない手はない。
油は腸の蠕動運動を促す。ネバネバ食べ物で腸へ刺激を
便をやわらかくするのが水溶性食物繊維やマグネシウムなら、16位のオリーブオイルは便の滑りをよくする働きを持つ。管理栄養士の望月理恵子さんは、良質なオイルを摂取する重要性をこう説く。
「油は腸の蠕動運動を促す働きがあり、便をスムーズに動かします。オリーブオイルのほかオメガ3系オイルも不飽和脂肪酸で血液中のコレステロールや中性脂肪を減少させる効果がある。亜麻仁油やえごま油のほか、青魚などにも豊富に含まれるので適量を摂るようにしましょう」
腸の蠕動運動とは、腸管が収縮と弛緩を繰り返し、内容物を押し出すことで、つまり便を肛門から押し出す動きのこと。2位のヨーグルトや18位の牛乳、3位のきのこ類など効果が期待できる食品は多く、カプサイシンやメントール、カフェインも活発にさせることがわかっている。同様に、ネバネバした食べ物が腸への刺激を与えるというのは川本さんだ。
「山いもやめかぶ、納豆など粘り気の主成分は、いわゆるムチンという植物由来の高分子糖たんぱく質で、腸粘膜を刺激するほか、胃腸の粘膜を保護し消化吸収を助ける役割もあります」
管理栄養士で医学博士の岩崎真宏さんはモロヘイヤを推す。
「大腸液のムチンは便のスムーズな移動と排便に欠かすことができない粘液。モロヘイヤ独自の粘り成分はムチンであり、便秘解消や腸内環境を整えることが期待されます」
食べ合わせの工夫を。炊きたてより冷たいご飯
主食として取り入れたいのは、12位の玄米や25位のオートミールなど、不溶性食物繊維が豊富で便のカサを増やすものが理想。ただし、苦手な場合には白米をちょっと工夫して食べるといい。
「冷たいご飯は炊きたての米より難消化性デンプン(レジスタントスターチ)の含有量が高い。腸内のバクテリアがそれを発酵させ、胃や小腸で分解・吸収されずに大腸まで到達して微生物のエサになるプレバイオティクスとして機能します。プレバイオティクスは腸内フローラに働きかけ、整腸効果はもちろん、食後の血糖値の上昇抑制や肥満対策にも効果的です」(石黒さん)
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今回、専門医と食のプロが挙げた腸内洗浄のための最強食品は全部で36種類。石原さんが言う。
「いくら整腸作用に効果があるといっても、同じものを毎日食べ続けては意味がない。いくつもの食品を組み合わせることで、相乗効果が生まれます。最強の食品を偏りなく摂ることを心がけましょう」
不腸から美腸へ、体内環境リセットのために今日から食習慣改善を始めよう。
※女性セブン2024年4月11日号