日差しの穏やかな日が続いたかと思うと、急な寒さや雨に体が冷える―三寒四温の春は自律神経が揺らぎ、体調を崩しやすく、季節外れのインフルエンザにかかる人も。病原菌から体を守り、健康を維持するため、腸から調子を整える「ヨーグルトの本当に正しい食べ方」。
監修・取材
・伊藤大介さん(内科医、ひまわり医院院長)
・谷本哲也さん(ナビタスクリニック川崎院長)
・中沢るみさん(管理栄養士)
・浜本千恵さん(管理栄養士)
・向井智香さん(ヨーグルトマニア)
・望月理恵子さん(管理栄養士)
「専門医」と「食のプロ」におすすめの順位と習慣を挙げてもらい、1位を10点、2位を9点、3位を8点、4位を7点、5位を6点、6位を5点、7位を4点、8位を3点、9位を2点、10位を1点として集計。
厳選!「おすすめの菌」ランキング
順位/食品/点数/コメント
1位 ビフィズス菌 42位
「大腸の善玉菌の99.9%はビフィズス菌。乳酸菌にも作れない酢酸を生成し、より強力に悪玉菌を抑制する。BB536など生きて腸まで届くものがよりベター」(向井さん)
「病原菌の感染や腐敗物を生成する菌の増殖を抑制する効果が期待できる。BB536菌は便秘や下痢を改善する働きもある」(望月さん)
2位 シロタ株 30位
「乳酸菌の一種で、生きた菌が腸まで届きやすい。善玉菌を増やし整腸効果が期待できる」(中沢さん)
「有害菌を減らし、ビフィズス菌などいい働きをする有用菌を増加させる力を持っている」(伊藤さん)
「睡眠の質向上やうつ病の改善にも働く」(浜本さん)
3位 プラズマ乳酸菌 23位
「免疫の司令塔に働きかけることで、すべての種類の免疫細胞を活性化させる」(向井さん)
「インフルエンザなどに負けない免疫力をつけることが期待され、生菌でも死菌でも同様の効果があるとされる」(望月さん)
4位 ガセリ菌 22位
「PA-3株は尿酸値を抑えてくれる効果が、SP株は内臓脂肪を減らす働きがそれぞれ期待される」(中沢さん)
「生きたまま小腸にとどまり免疫細胞に刺激を与えて、免疫力を高める」(望月さん)
5位 ブルガリア菌 20位
「腸内にすみつくことはできませんが、ビフィズス菌など善玉菌のエサとなり腸内環境を整える」(伊藤さん)
「腸の蠕動運動を活発にする。腸壁から水分を吸収し便通をよくするので、美肌効果や免疫力を高める効果も期待できる」(望月さん)
6位 LG21乳酸菌19位
「ガセリ菌の一種で胃酸にも強く、胃の負担をやわらげピロリ菌の抑制機序があるといわれる」(伊藤さん)
「胃の調子を整えるというオリジナルな働きを持ち、胃酸に負けず胃の表層粘液層に付着して増殖することができる」(向井さん)
7位 サーモフィルス菌 18位
「乳酸菌の一種で、腸内バリア機能が高く免疫力アップ効果や美肌効果が高い」(浜本さん)
「乳糖の分解を助け乳糖不耐症の緩和や、腸内での栄養素の吸収を促進する」(谷本さん)
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数百種ある「菌」のうち”本当に効く”のは?
健康志向が高まる中で、腸活食品、健康食品において不動の地位を確立するヨーグルト。その効果について、内科医でひまわり医院院長の伊藤大介さんが解説する。
「乳酸菌などを含むヨーグルトは腸内で善玉菌として働き、整腸作用や有害物質の排出、便通改善を促します。また、乳酸菌自体がピロリ菌やサルモネラ菌など有害な菌に対して抗菌作用をもたらす『抗菌ペプチド』を産生。いわゆる抗生剤を体内で作っているような状況なので、免疫力を高めることにつながります。
また、疫学研究によるとヨーグルトを摂取することでBMI低下や体重、腹囲の減少、体脂肪低下との関連がわかっていてダイエット効果もあるといえる。2022年に発表された論文では、アレルギー性鼻炎の症状を抑えると報告されました」
腸内フローラのバランスを整える ビフィズス菌やガセリ菌など
管理栄養士の望月理恵子さんがとりわけ注目するのは免疫力を高める効果だ。
「ビフィズス菌やガセリ菌などさまざまな菌が腸内フローラのバランスを整え、免疫機能に影響を与えることがわかっています。多くのウイルスや細菌は口から腸管を通って体内に入るので、腸には免疫機能が集中している。腸内環境を整えることで、病原菌から体を守り病気にかかりにくくしてくれるなど、自然治癒力を高めることが期待できるのです」
最新研究では、さらなる効果も明らかになった。昨年12月、明治ホールディングスは、パスツール研究所免疫学部門教授のジェラール・エベール博士による研究成果として同社保有の「乳酸菌OLL1073R–1株」が、がんに対する免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を高めると発表。
報告によると、「乳酸菌OLL1073R–1株」が産生する菌体外多糖(EPS)と免疫チェックポイント阻害薬を併用することで、治療薬が効きやすく、がんの腫瘍が完全に消える率が3.5倍増加し、治療薬が効きにくいがんの場合も3割の個体で腫瘍の増殖を抑えたという。
OLL1073R-1株を自身の2位に挙げた望月さんが話す。
「自然免疫のNK細胞などに働きかけ免疫力を高めるほか、インフルエンザ感染抑制作用などさまざまな免疫作用が示されています」
枚挙にいとまがないほどの効果を持つヨーグルトは市場も活況で、「種類が多すぎてどれを選べばいいかわからない」という人は少なくない。そこで本誌では専門医と食のプロに「おすすめの菌」やそれぞれの働きについて大調査。
腸内を多様化するビフィズス菌
1位に輝いたのは「ビフィズス菌」だ。腸内に存在する代表的な善玉菌であり、有害物を生成する菌の増殖を抑える効果がある。
「ヨーグルトの原料となる乳酸菌との違いは、発酵すると乳酸だけではなく酢酸も発生させる点にあります。腸内の炎症を抑えるだけでなく、酢酸が酢酸菌由来の細菌を増やして腸内フローラの多様性を促し、長寿につながることが期待されています」(伊藤さん)
サーモフィルス菌とは
7位に挙がった「サーモフィルス菌」とは耳慣れないが、乳酸菌の一種であり、「ヨーグルトには定番です」と言うのは、これまでに約2900種のヨーグルトを食べたヨーグルトマニアの向井智香さんだ。
「基本的にヨーグルトの発酵にはブルガリア菌とサーモフィラス菌という2種類の乳酸菌が使われています。乳酸菌では、歯周病菌や虫歯菌などを抑制してくれるロイテリ菌や、花粉による目や鼻の不快感を緩和する乳酸菌ヘルベなどもおすすめです」(向井さん)
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健康効果アップ!「ちょい足し」食品ランキング
順位/食品/点数/コメント
1位 バナナ 58位
「オリゴ糖やカリウムも含み、エネルギー補給にもなる」(伊藤さん)
「精神を安定させるセロトニンのもとであるトリプトファンのほか、食物繊維やオリゴ糖、マグネシウムも豊富」(中沢さん)
2位 はちみつ 39位
「抗菌作用があり、甘みや風味がヨーグルトにマッチ」(谷本さん)
「オリゴ糖を豊富に含み、ヨーグルトとの相性も抜群」(浜本さん)
「疲労回復や免疫力アップ効果も期待できる」(望月さん)
3位 ベリー類 20位
「アントシアニンを中心としたポリフェノールやビタミンCなどが豊富に含まれ、抗酸化作用が非常に強い」(伊藤さん)
「抗酸化作用やビタミンCが豊富で免疫力を高める」(中沢さん)
4位 キウイ 18位
「ヨーグルトにないビタミンCやEが含まれ、水溶性食物繊維、オリゴ糖など整腸作用のある栄養素が豊富」(中沢さん)
「キウイを入れることで、偏りなく栄養分が摂れる」(望月さん)
5位 いちご、ナッツ類 17位
「いちごに多いビタミンCは細胞の酸化を防ぎ、免疫細胞の働きをサポートする効果が期待できる」(望月さん)
「アーモンドなどナッツ類はビタミンEや不飽和脂肪酸など栄養素が凝縮されている」(伊藤さん)
7位 りんご、オートミール 15位
「りんごは食物繊維のペクチンが豊富で、善玉菌の働きを促す」(谷本さん)
「オートミールは水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がバランスよく含まれ腸内環境改善に役立ち、ヨーグルトにはあまり含まれていない鉄分も摂取できる」(向井さん)
9位 ドライフルーツ、オリゴ糖、玉ねぎ、オリーブオイル
「ドライフルーツのレーズンやプルーンはミネラルが豊富で自然な甘みがつく」(谷本さん)
「例えばドライフルーツのプルーンならヨーグルトに少ない鉄分や食物繊維が豊富。マンゴーならβ-カロテンやビタミンCが含まれます」(中沢さん)
「オリゴ糖は乳酸菌のエサになり善玉菌の栄養源となる」(望月さん)
「玉ねぎはビフィズス菌のエサとなる水溶性食物繊維のイヌリンが含まれる。水切りヨーグルトと合わせるなど食事として楽しむと◎。オリーブオイルの脂質はお通じを潤滑にし、オレイン酸が蠕動運動を促す」(向井さん)
「おすすめの菌」ランキング1位はビフィズス菌
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「ちょい足し」でさらに効果をあげる食品は?
人気の菌はあれど“人には人の乳酸菌”というキャッチフレーズがあるように、体に合う菌は人ぞれぞれ。
「謳われている健康効果の大半は2週間程度食べた試験に基づいて商品化されているので、最低でも2週間は継続して効果を判断してみてください」(望月さん)、多様な菌を含み、たんぱく質やカルシウムなどの栄養素も豊富で「準完全食といわれるほど栄養価が高い」(向井さん)。
ヨーグルトは、ほかの食品と組み合わせることでさらなる健康効果が期待できる。1位の「バナナ」や4位の「キウイ」などは、ヨーグルトに含まれない食物繊維を補うとして人気を集めた。管理栄養士の中沢るみさんが言う。
「バナナやキウイは食物繊維だけでなく、乳酸菌のエサとなるオリゴ糖も豊富です。ほかにも、鉄分やマグネシウム、抗酸化作用など、ヨーグルトの“弱点”を補完してくれる食品を組み合わせることで、相乗効果を得ることができ、毎日飽きずに食べられます」
ヨーグルトはドレッシングやソースなどとして料理にも使用できるため、9位の「玉ねぎ」や「オリーブオイル」など、合わせる食品の幅が広いことも魅力。
管理栄養士の浜本千恵さんは「にんじん」を推す。
「免疫ビタミンといわれ、健康維持に欠かせないLPS(リポポリサッカライド)と一緒に摂ることでさらなる免疫力アップが望めます。にんじんはLPSを多く含み、サラダやジュースなどヨーグルトとも好相性です」
1位はバナナ「ちょい足し」食品ランキング
むしろ体に”害を与える”食べてはいけないヨーグルトは?
積極的に摂るべき菌や、組み合わせることで一層の健康効果が望める食品などがある一方、“食べてはいけない”ヨーグルトもある。
「甘みを出すため人工甘味料が使われている商品がありますが、人工甘味料は腸内環境を悪化させるといった研究論文があり、WHOも発がんリスクを警鐘しています。ヨーグルトの効果を台無しにし、むしろ害悪ともなってしまう恐れがあるため人工甘味料入りのものは避けましょう。
無糖のシンプルなものを選んでオリゴ糖やはちみつで甘さを加えるといいですね」(中沢さん)
伊藤さんも続ける。
「ヨーグルトは加工食品であり、人工甘味料以外にも添加物がいくつも使用されているものが少なくありません。成分表示を見て、添加物の少ない商品を選んでください」
望月さんは、「ドリンクタイプより、固形タイプを手にとってほしい」とアドバイスする。
「ドリンクタイプは糖質過多のものが多く、飲みやすいのでつい摂取量が増える傾向にあります。食べるタイプの方が健康面でのメリットは大きい。食べるタイプでも砂糖が多く使われていると血糖値上昇などデメリットが上回るので無糖やプレーンを選びましょう」
漫然と食べているだけでは健康も長寿も近づいてはこない。「自分だけの最強ヨーグルト」を探すことから始めよう。
※女性セブン2024年4月18日号