山崎賢人さん（29歳）が主演を務めた映画『陰陽師0』が4月19日より公開中です。夢枕獏さんの小説を原作とした本作は、実在した最強の呪術師・安倍晴明の学生時代を描いたもの。安倍晴明はなぜ、時代を超えて語り継がれるのか。その理由の一端に触れられる、そんな作品に仕上がっています。本作の見どころや山崎さんの演技について、映画や演劇に詳しいライターの折田侑駿さんが解説します。
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夢枕獏の小説を原作としたオリジナル作品！
本作は、夢枕獏さんによるベストセラー小説『陰陽師』シリーズを原作に、主人公・安倍晴明が陰陽師になる前の物語をオリジナルストーリーとして映画化したもの。
監督・脚本を務めたのは、ドラマに映画にと大人気シリーズとなった『アンフェア』の佐藤嗣麻子さんで、原作者である夢枕さんの全面協力のもと、晴明の学生時代の物語を紡ぎ出しています。
陰陽師とは国をも支配する呪術使いのことで、晴明とは平安時代に実在した陰陽師。放送中の大河ドラマ『光る君へ』（NHK総合）ではユースケ・サンタマリアさんが演じているこの人物を本作では山崎さんが演じ、彼らしい安倍晴明像を生み出しています。
日本のエンターテインメント界にまた新たな、陰陽師が誕生しているのです。
若き晴明が凶悪な陰謀に立ち向かう
呪いや祟りなどから都を守る陰陽師の学校にして省庁でもある陰陽寮。ここに若き安倍晴明（山崎）は在籍しています。
呪術の天才ながらも陰陽師に興味を示さない彼は、他者と交わることをせず、周囲からも距離を置かれる存在です。
そんな晴明はある日、皇族の徽子女王を襲う怪奇現象の解決を、貴族の源博雅から依頼されます。
晴明と博雅は何かと衝突するものの、相性は良し。ふたりは真相を追います。やがてある学生の変死をきっかけに、平安京をも巻き込む凶悪な陰謀と呪いが動き出すことになるのです。
まだ学生である若き晴明は、平安の闇を祓えるのでしょうか――。
壮大なスケールに張り合う俳優陣
令和の時代に再び誕生した陰陽師の世界。主人公・晴明を囲むキャラクターたちには、個性豊かな俳優陣が配されています。
主要人物のひとりにして、やがて晴明と特別な関係を築く源博雅を演じているのは、染谷将太さんです。この博雅とは、クールな晴明とは対照的な人物。染谷さんの演技が作品に明るさをもたらし、本作を親しみやすいものにしています。
そしてもうひとりの主要人物であり、本作のヒロインのポジションにあたる徽子女王を演じているのが奈緒さん。この物語は、徽子女王が怪奇現象に襲われることからはじまります。『陰陽師』の世界観ならではのヒロイン像を作り上げ、本作の盛り上がりに貢献しています。
そのほか、安藤政信さん、村上虹郎さん、板垣李光人さん、國村隼さん、北村一輝さん、小林薫さんといった若手からベテランまでの錚々たる面々が晴明を囲むキャラクターに。この作品の持つ壮大なスケールにも堂々と張り合うことのできるメンツだといえるでしょう。
このような作品を率いているのが、山崎賢人さんなのです。
今年の山崎賢人の期待作のひとつ
この2024年の山崎さんといえば、主演を務める作品の公開が続きます。
主人公・杉元佐一を演じた『ゴールデンカムイ』の封切りとともに一年がはじまり、春には今作『陰陽師0』が公開。夏には大人気シリーズ『キングダム』の最新作である『キングダム 大将軍の帰還』の公開を控えています。そして秋には『ゴールデンカムイ』の続編となる『ゴールデンカムイ -北海道刺青囚人争奪編-』がWOWOWにて放送予定。土屋太鳳さんとダブル主演を務めている『今際の国のアリス』（Netflix）のシーズン3の配信スタートも待ち遠しいところです。
いずれもが、“超大作”に分類されるもの。この作品の並びから、現在の山崎さんの俳優としての立ち位置が見えてきます。それは、大衆（＝私たち観客）からの支持だけでなく、製作陣からも「間違いない存在」だと目されているということ。人気があるだけでも、演技者としての実力があるだけでも、勢いがあるだけでも、人間的に優れているだけでも、大作の看板を背負うことはできません。これらが総合的に突出している者にのみ、立つことが許されているポジションなのではないでしょうか。
近年の山崎さんの出演作は、主演ドラマ『アトムの童』（2022年／TBS系）をのぞくと、“アクションもの”が続いています。2020年公開の『劇場』での演技が素晴らしかっただけに、もう少し現実的な作品での姿も見たいものですが、列挙した作品たちの主演を務められる俳優が彼以外にいないことの証でもあるのではないでしょうか。
そんな中でも、『陰陽師0』は異質な作品だと思います。壮大なスケールで描かれる世界観の中で華麗な身のこなしも披露してはいますが、晴明の戦いの術は呪術です。つまり、“目に見えないもの”なのです。