ネガティブフィードバックに必要な「WILL」の引き出し方
WILLを把握しないまま、MUSTやCANのギャップを伝えても、本人の心には響きません。部下のWILLを引き出すために難波さんがすすめているのは、まず上司自身が「なぜ自分はこの会社で働いているのか?」「自分は仕事を通じてどういう瞬間に嬉しいと感じるのか?」といったWILLを掘り下げてみることです。自分のWILLを内省することで、部下との面談のときに、自分のWILLを参考として伝えながら部下のWILLを引き出すことができます。
「WILLの引き出しに失敗するケースは、『あなたはいったい何をやりたいの?』『仕事のやりがいは何ですか?』『人生どうなりたい?』など、部下のWILLを一方的に、強制的に引き出そうとするコミュニケーションです」
WILLは徐々に小さくなることがある
WILLに関して注意しておきたいのは、本人のWILLが小さくなっていたり、見失っていたりすることがあるという点です。小さくなるとは、仕事を通じてのやりがい、情熱やモチベーションなどが薄れてしまっている状態です。期待していた仕事をやらせてもらえない、思うように成果が出せないといった、理想と現実の間にギャップがあるとき、それらが少しずつ積み重なることでWILLが小さくなっていくことが考えられます。
また、当初は熱意があっても、同じ仕事をくり返していると仕事に対して「飽き」が生まれやすいうえ、できて当たり前の仕事となってしまうことで、周囲から注目されたり承認されたりすることがなくなり、熱意がなくなってしまうケースがあります。
「他にも、上司や同僚とうまくいっていない、体の調子が悪い、新しい技術や知識を習得するのが億劫、若い頃のように動けなくなった、プライベートなことでトラブルを抱えているなども、WILLが小さくなる原因と考えられます」
上司の対応が部下のWILLを小さくすることも
特に、上司の対応が部下のWILLを小さくする危険性は高いと難波さんは言います。それは、コミュニケーション不足からくる会社や上司への不信感によるもの。やりたいことを理解しようとしない、仕事への賞賛や承認が与えられない、提案や相談に耳を傾けようとしない、といった関係が続けば、仕事に対する意欲は低下します。
上司の中には過去に、WILLを把握されず、結果だけで判断されるマネジメントを受け続けていた人もいると思いますが、ネガティブフィードバックをするためには、そのマネジメントスタイルは変える必要があります。
「自分が上司という立場になって、いきなり部下にWILLを聞くスタイルに変換するのは難しいかもしれませんが、上司自身のスタイルをアップデートすることも、フィードバックには重要です」
◆教えてくれたのは:人事コンサルタント・難波猛さん
なんば・たけし。マンパワーグループ株式会社シニアコンサルタント。早稲田大学卒業。コンサルタントとして3000人以上のキャリア開発施策、2000人以上の管理者トレーニング、100社以上の人員施策プロジェクトにおけるコンサルティング・研修等を担当。セミナー講師、大学講師、官公庁事業におけるプロジェクト責任者も歴任。著書に『ネガティブフィードバック 「言いにくいこと」を相手にきちんと伝える技術』(アスコム)など。
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